環境自然科学プログラム - 基礎科学の立場から自然環境と人間活動にかかわる教育・研究を行っています。

環境自然科学セミナー

<Last update : 2022.1.18>

第261回 「環境自然科学セミナー」

題目 Dynamical Maximum Entropy Theory of Ecology (DynaMETE)の紹介とその展望
講演者 梅村 界渡(神戸大・人間発達環境学・部局研究員)
日時 2022年2月2日(水) 14:00-15:00
場所 B212(ハイブリッドで実施,遠隔参加を希望される方はzoomの案内をお送りしますので,までご連絡下さい)
要旨  生態系とは生物の集合と周りの環境が相互作用する複雑なシステムであり,具体的な観測の対象やスケールによって多様な特性が見られる.その一方で,比較的単純な変数の統計的性質に着目すると,植物,動物,微生物など一見全く異なるシステムに共通のパターンが見られることもある.例えばよく知られているパターンとしては,同じ生息範囲で同じ資源を利用する別の生物種を比べたときに一個体のサイズが小さな種は大きな種に比べて個体数が多い傾向があること,体サイズの指標である代謝率とバイオマスやその他の変数の間にべき乗則の関係があること,種の個体数の統計分布はどこでも似た関数形に従っていること,などが挙げられる.そのようなパターンの振る舞いを予測したりお互いを理論的に関係づけることは興味深い研究テーマであり,生物多様性や生態系機能の保全・管理における社会的決定にも貢献し得る.しかし出生・成長・死亡や生活史などの生物学的素過程をボトムアップ的に辿ることは相互作用が複雑になるほど難しくなり,また必要なメカニズムの知見が常に十分得られているとも限らない.したがって,不確定要素が多いことを前提として,いかに既知の情報から合理的な予測を行うべきかというのが基本的な問題意識となる.本発表ではそのためのアプローチの1つとして,情報理論における平均情報量の最適化(平衡統計力学におけるギブスエントロピーの束縛条件付き最大化)を用いて,少数のマクロな変数からより詳細な統計分布をトップダウン的に推定する方法論を紹介する.具体的には,種の個体数および個体のサイズの分布に着目する.特に,従来理論の予測が外れがちな,自然災害や人為的環境改変の影響を受けて時間変化している生態系に適用するための理論の拡張について,いくつかの観測データと比較しながら議論する.
連絡先: 谷篤史
題目 プロペラ型樟脳粒子の自己駆動運動にみられる分岐構造
講演者 小谷野由紀(神戸大・人間発達環境学・助教)
日時 2022年2月2日(水) 15:00-16:00
場所 B212(ハイブリッドで実施,遠隔参加を希望される方はzoomの案内をお送りしますので,までご連絡下さい)
要旨  自発運動は単細胞生物から哺乳類などの動物に至るまで,種やスケールを問わずみられる運動である.自発的に動く素子は自己駆動粒子と呼ばれ,エネルギーを散逸しながら継続して動く粒子を指す.近年,自己駆動粒子1粒子の運動特性や,多数の自己駆動粒子が相互作用しながら時間発展する系の統計的な振る舞いなど,様々な観点から自己駆動粒子の研究が進められている.自己駆動運動を調べる上で,より制御された実験が可能な人工の自己駆動系が用いられることがあり.特に樟脳を用いた自己駆動系はシンプルで扱いやすい.樟脳は室温で固体の化学物質で,水面に浮かべると樟脳分子を拡散することで表面張力を変える.樟脳粒子の周囲に表面張力の勾配ができると,水面を滑るように自発運動することが知られている.本研究では,樟脳を用いて粒子形状と自己駆動運動の相関関係を調べた.  自己駆動系において,系の対称性は粒子の運動方向を決める重要な要素である.系が非対称なときは,自己駆動粒子は予め与えられた非対称性に従って運動するが,一方,対称な場合には自発的に対称性を破って運動することが知られている.そこで,系の非対称性の「度合い」を変更することで,非対称な自己駆動粒子の運動特性から対称な自己駆動粒子の運動特性への「遷移」を実験的に調べた.具体的には,カイラリティの異なるプロペラ型の樟脳粒子を作製し,その回転運動を観察した.その結果,カイラリティの大きさに応じ,時計回り・反時計回りの回転運動における角速度に差が生じることが明らかとなった.また,数理モデルを数値的に解くことにより,プロペラ型樟脳粒子の回転運動の背景にある分岐構造について議論した.
連絡先: 谷篤史

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