環境自然科学プログラム - 基礎科学の立場から自然環境と人間活動にかかわる教育・研究を行っています。

過去の環境自然科学セミナー

<Last update : 2024.2.29>

過去のセミナー

第268回 「環境自然科学セミナー」

題目 大型生物を対象とした環境RNAの利用可能性を高めるために取り組んできたこと
講演者 徐寿明(龍谷大学先端理工学部・日本学術振興会特別研究員)
日時 2023年12月21日(木) 10:40-12:10
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 B104教室(鶴甲第2キャンパス)
要旨  近年,環境RNA (水や土壌など環境媒体に含まれる生体外RNA) を用いた生物調査への関心が高まりつつある.個体内の全ての体細胞で同一の配列が共有されているDNAに対して,個体の生理条件や環境ストレスなどによってRNAの発現パターンは大きく変化することから,環境RNAは生物の在不在やアバンダンス以外のより詳細な生体情報 (成長段階,ストレス,性別,生死) を提供することが期待されている.一方,RNAは一般にDNAよりも不安定で分解されやすいことから,環境RNAの効率的な回収・利用に関する技術検討が強く求められているものの,そうした研究はほとんど知られていない.本発表では、特に環境RNAの保存・抽出 (ゲノムDNA除去を含む)・逆転写のステップに着目し,これまで発表者が進めてきた環境RNA技術のプロトコル整理と再検討の結果について紹介する.また,本検討結果を基にした,発表者自身の現在の環境RNA研究ならびに今後の展望についても簡単にお話したい.
連絡先: 源利文

第267回 「環境自然科学セミナー」

題目 Insights into predictive breeding for wine quality(ゲノム情報で上質ワインを育成する)
講演者 Prof. Stefan Wanke(ドレスデン工科大学・ドイツ)
日時 2023年11月16日(木) 15:40-16:40
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 F151教室(鶴甲第2キャンパス)
要旨  ワイン生産のために病原菌に強いブドウ品種は,殺菌剤の使用を大幅に減らす可能性がある.EUがグリーン・ディール構想の中で要求している農業における農薬の50%削減目標に貢献する.病原菌に耐性のあるブドウ品種の選抜には,生産されたワインの品質評価も必要となる.この必要性は品種改良の進捗を著しく遅らせてしまう.このボトルネックを回避するためには,ワインの品質形質に関する予測モデルの開発が,有効性を大幅に向上させ,育種プロセスを加速させるために不可欠である.その研究について紹介する.
The evaluation of new grapevine cultivars regarding their quality potential is the time limiting factor during grapevine breeding. Small-scale vinification for the quality assessment of individual vines is possible at the earliest after 3 to 4 years when the plant yields sufficient grape material. Quality assessment of the aroma and taste of wines is based on sensory evaluation conducted by qualified judges. This process requires repetitions over 10 to 15 years due to the strong impact of varying annual weather conditions on wine flavor. The project »SelWineQ« that I will present aims at developing robust prediction models for the complex trait “wine quality” in order to significantly improve the breeding process. To achieve this goal, we investigate different aspects: (1) the genetic quality potential (GQP; irrespective of the environment), (2) the metabolic quality potential (MQP; genotype environment interaction) of the primary product (grape juice), and (3) the quality of the final wine (analytical and sensory properties). The prediction of the genetic quality potential is examined on a training set of a segregating white wine F1 population with standardized micro-vinification. So far, key aroma components with a positive influence on wine quality have been identified. These form together with the results of non-targeted metabolome analysis, a solid base for MQP modelling. A composite quality score was developed from sensory evaluation consisting of a hedonic assessment and the evaluation of different odor and taste attributes. As a result, meaningful correlations between aroma compounds and overall quality could be elucidated. These, together with the approx. 8000 features per sample from a non-targeted metabolomic analysis, form a solid base for a first modelling of the MQP with further need for consolidation and validation by incorporating additional vintages. A highly efficient genotyping by sequencing (GBS) strategy was developed and is currently in the process to be patented. The existing genetic simple sequence repeat based map was recalculated and further improved by GBS data to achieve a previously unreached marker density for QTL identification e.g. for acidity and sugar content. These first modeled quality traits will be validated in the context of GQP and MQP. By including further vintages and extending the genotypes studied, these promising results will be validated and the modelling will be further improved and optimized.
連絡先: 近江戸伸子

第266回 「環境自然科学セミナー」

題目 天体衝突を切り口とする宇宙環境学: 火星圏の事例
講演者 黒澤耕介(神戸大学 人間発達環境学研究科)
日時 2023年11月8日(水) 15:10-16:40
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 B208教室(鶴甲第2キャンパス)
要旨  地球はなぜ生命あふれる惑星になったのだろうか? 考える時間スケールは人間の一生に比べて途方もなく長いが, 自然科学におけるこの問いは人間発達環境学の範疇にも入る (と黒澤は考える). 生命が産まれ, その活動を維持するには反応活性が高い化学種の流れが不可欠である. 天体衝突は瞬間加熱, 化学反応凍結によって非平衡化学種を生じるとともに, 地表面物質の爆発的な放出によって物質の鉛直, 水平混合を促すという点で生命の起源, 維持に役立ってきたのではないかと考えられる. 惑星システムという視点で考えると天体衝突は太陽周りの軌道運動エネルギーを衝撃波の発生によって熱に変え, 惑星表層の物質流束, 自由エネルギーをパルス的に増加させる過程である, と位置づけられる. 表層環境評価という観点では, 例えば海洋の富栄養化に伴う赤潮の発生といった事象と類似しているかもしれない. 本セミナ前半では天体衝突でどんなことが起きるのか初等物理・化学の知識をもとに解説する.
 近年の惑星探査は近傍から天体を観るだけの時代から, その天体の試料を持ち帰る試料採集の時代へ移り変わっている. 認識せずに地球上の生命を他天体に持ち込むことは避けなければならない. また他天体から試料を持ち帰る際には意図せず繁殖可能な微生物を持ち帰らないように国際宇宙空間研究委員会によって基準が定められている. セミナー後半ではここで人類が直面した新たな環境問題である「惑星保護・検疫問題」について紹介するとともに日本が計画している火星衛星フォボスからの試料採集計画Martian Moons eXploration (MMX)の事例について紹介する. 講演者は衝突物理学と地球微生物の極限環境耐性に関する最新の知見をもとにMMXの惑星検疫の科学検討を主導し, MMXが微生物を持ち帰る確率がCOSPARの基準を下回ることを示した. また火星に微生物がいたとする前提に立つならば, 火星衛星には微生物の死骸が溜まっていることになり, MMXが持ち帰る試料に含まれる死骸個数の期待値は1個を超える. 仮にこの環境DNAの解読が可能であれば, 宇宙生物学は新たな局面を迎えるかもしれない.
連絡先: 谷篤史

第265回 「環境自然科学セミナー」

題目 Exchange program between Dresden and Kobe University 2023 "TUD Dresden research and Science education" (ドレスデン工科大学での自然科学研究ならびに教育システム)
講演者 Nicola Schmidt氏,Woorin Kim氏(ドレスデン工科大学理学研究科・ドイツ)
日時 2023年10月23日(月) 10:40-12:10
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 F151教室(鶴甲第2キャンパス)
要旨 ドレスデン工科大学(TUD)はエクセレンス・イニシアティブ指定校(ドイツ政府の認定した世界のトップクラスの水準を備えた指定大学)である.Schmidt氏からはドイツの大学院の高等教育システムを学ぶ.Kim氏は大韓民国からTUDの大学院に留学しているので,東アジアからドイツ国への大学院留学についてご自身の経験を話していただく.
連絡先: 近江戸伸子

第264回 「環境自然科学セミナー」

題目 フィールドワークから読み解く甲虫オサムシの自然史
講演者 奥崎穣(大阪公立大学・准教授)
日時 2023年6月7日(水) 15:10-16:40
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 B104教室(鶴甲第2キャンパス)
要旨  自然環境の多様性は生物の多様化にどこまで貢献しているのだろうか?
 西日本に広く分布するヒメオサムシは,大型の近縁種オオオサムシが分布せず,幼虫期の餌であるミミズが大きい九州の周辺島において気温から予測されるよりも大型化する.この大型化したオスは大きい生殖腺を持つにも関わらず,交尾1回あたりの精包サイズを変化させずに交尾時間を短縮する.大型化によって精包生産力が増加したオスは,交尾頻度を増やすことで多くの父性を獲得する繁殖戦略を取っていると考えられる.環境適応による体サイズ進化は精子競争の強さを変化させ,交尾器のような性的形質を多様化させるのかもしれない.
 対して,北海道の幅広い植生環境に生息するオオルリオサムシは,体色に著しい地理的変異を示す.北海道の森林において,オサムシの捕食者は夜行性で色覚の退化した食肉目(タヌキ)であり,体色に暗色を含む多型を示す集団が多数確認された.一方,高山帯のように森林が発達せず,草本の花資源が豊富な環境では,オサムシはしばしば双翅目ヤドリバエ科の幼虫に寄生されており,その体色は明色単型であった.これはヤドリバエ科成虫が花粉や花蜜を餌とするためと考えられる.植生の変化は寄生性昆虫からの淘汰圧を変化させ,同時に集団サイズの変化に伴う中立進化を可能にするのかもしれない.
 このように自然環境の多様性はそれ自身が生態的形質に対する多様化淘汰となるだけでなく,異なる間接的プロセスを経て非生態的形質の進化を駆動する可能性を秘めている.
連絡先: 高見泰興

第263回 「環境自然科学セミナー」

題目 The evolution of the Angiosperm genome from the cytogenetic point of view
講演者 Natalia Borowska-Zuchowska, PhD (Assistant Professor at the University of Silesia in Katowice, Poland)
日時 2023年6月6日(火) 13:20-15:10
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 F151教室(鶴甲第2キャンパス)
要旨 Molecular cytogenetics constitutes a branch of genetics that is focused on the cellular components, especially chromosomes and interphase nuclei, in relation to the genome structure, function and evolution. The use of modern cytogenetic approaches, such as fluorescence in situ hybridisation (FISH), enables the simultaneous two- or three-dimensional, multicolour visualisation of both single-copy and highly-repetitive sequences. The data that is gathered using the cytogenetic methods in the phylogenetic background enable the closer look at the plant genome evolution that involves changes in: (i) chromosome numbers and morphology; (ii) genome sizes and the repetitive sequences content and (iii) ploidy level. The lecture outlines the use of molecular cytogenetics approaches in studies of the evolution of diploid and polyploid species.
連絡先: 近江戸伸子

第262回 「環境自然科学セミナー」

題目 ニホンウナギ産卵場調査の新展開
講演者 竹内 綾 (東京大学大学院農学生命科学研究科 水産資源学研究室 日本学術振興会特別研究員PD)
日時 2022年11月17日(木) 10:40-11:40
場所 Zoomによる遠隔開催(接続情報はまでお問い合わせください)
要旨  2009年にニホンウナギの受精卵が発見され,本種は西マリアナ海嶺南端部の水深150〜200mで産卵することが分かった.しかし,オスとメスは広い海でどのように出会うのか?産卵に参加する親魚数やその性比は?などの生物学的興味は尽きない.これら問題に答えるには,ニホンウナギの産卵地点を発見し,その産卵行動を観察する必要がある.産卵地点を探索するため,私は環境DNA法に着目した.本法は水中を漂うDNAを検出することにより,生物の分布状況を推定できる.野外で検出される環境DNAを解釈するため,ニホンウナギの環境DNAの放出と分解について室内実験を行った.その結果,尾数が増える,発育段階が進む,産卵行動が起こることにより,環境DNA検出量が急増することを明らかにした.さらに,環境DNAは1日で急激に分解され,高水温でその分解が早いことが分かった.室内実験の結果から,外洋で親ウナギが産卵した場合,一時的に高濃度の環境DNAが検出できると予測した.また,2015年と2017年に研究航海に参加して,西マリアナ海嶺南端部で環境DNA調査を実施した.2015年には,外洋でニホンウナギDNAを初めて検出した.2017年には,高濃度の環境DNAが検出され,産卵行動が起きたと思われる地点の特定に成功した.以上,本セミナーでは,ニホンウナギ産卵場調査の歴史と,環境DNA法を用いた最新の成果を紹介する.さらに,研究船と有人潜水調査船「しんかい6500」への乗船体験から,フィールドワークの魅力を感じてほしい.
連絡先: 源利文

第261回 「環境自然科学セミナー」

題目 Dynamical Maximum Entropy Theory of Ecology (DynaMETE)の紹介とその展望
講演者 梅村 界渡(神戸大・人間発達環境学・部局研究員)
日時 2022年2月2日(水) 14:00-15:00
場所 B212(ハイブリッドで実施,遠隔参加を希望される方はzoomの案内をお送りしますので,までご連絡下さい)
要旨  生態系とは生物の集合と周りの環境が相互作用する複雑なシステムであり,具体的な観測の対象やスケールによって多様な特性が見られる.その一方で,比較的単純な変数の統計的性質に着目すると,植物,動物,微生物など一見全く異なるシステムに共通のパターンが見られることもある.例えばよく知られているパターンとしては,同じ生息範囲で同じ資源を利用する別の生物種を比べたときに一個体のサイズが小さな種は大きな種に比べて個体数が多い傾向があること,体サイズの指標である代謝率とバイオマスやその他の変数の間にべき乗則の関係があること,種の個体数の統計分布はどこでも似た関数形に従っていること,などが挙げられる.そのようなパターンの振る舞いを予測したりお互いを理論的に関係づけることは興味深い研究テーマであり,生物多様性や生態系機能の保全・管理における社会的決定にも貢献し得る.しかし出生・成長・死亡や生活史などの生物学的素過程をボトムアップ的に辿ることは相互作用が複雑になるほど難しくなり,また必要なメカニズムの知見が常に十分得られているとも限らない.したがって,不確定要素が多いことを前提として,いかに既知の情報から合理的な予測を行うべきかというのが基本的な問題意識となる.本発表ではそのためのアプローチの1つとして,情報理論における平均情報量の最適化(平衡統計力学におけるギブスエントロピーの束縛条件付き最大化)を用いて,少数のマクロな変数からより詳細な統計分布をトップダウン的に推定する方法論を紹介する.具体的には,種の個体数および個体のサイズの分布に着目する.特に,従来理論の予測が外れがちな,自然災害や人為的環境改変の影響を受けて時間変化している生態系に適用するための理論の拡張について,いくつかの観測データと比較しながら議論する.
連絡先: 谷篤史
題目 プロペラ型樟脳粒子の自己駆動運動にみられる分岐構造
講演者 小谷野由紀(神戸大・人間発達環境学・助教)
日時 2022年2月2日(水) 15:00-16:00
場所 B212(ハイブリッドで実施,遠隔参加を希望される方はzoomの案内をお送りしますので,までご連絡下さい)
要旨  自発運動は単細胞生物から哺乳類などの動物に至るまで,種やスケールを問わずみられる運動である.自発的に動く素子は自己駆動粒子と呼ばれ,エネルギーを散逸しながら継続して動く粒子を指す.近年,自己駆動粒子1粒子の運動特性や,多数の自己駆動粒子が相互作用しながら時間発展する系の統計的な振る舞いなど,様々な観点から自己駆動粒子の研究が進められている.自己駆動運動を調べる上で,より制御された実験が可能な人工の自己駆動系が用いられることがあり.特に樟脳を用いた自己駆動系はシンプルで扱いやすい.樟脳は室温で固体の化学物質で,水面に浮かべると樟脳分子を拡散することで表面張力を変える.樟脳粒子の周囲に表面張力の勾配ができると,水面を滑るように自発運動することが知られている.本研究では,樟脳を用いて粒子形状と自己駆動運動の相関関係を調べた.  自己駆動系において,系の対称性は粒子の運動方向を決める重要な要素である.系が非対称なときは,自己駆動粒子は予め与えられた非対称性に従って運動するが,一方,対称な場合には自発的に対称性を破って運動することが知られている.そこで,系の非対称性の「度合い」を変更することで,非対称な自己駆動粒子の運動特性から対称な自己駆動粒子の運動特性への「遷移」を実験的に調べた.具体的には,カイラリティの異なるプロペラ型の樟脳粒子を作製し,その回転運動を観察した.その結果,カイラリティの大きさに応じ,時計回り・反時計回りの回転運動における角速度に差が生じることが明らかとなった.また,数理モデルを数値的に解くことにより,プロペラ型樟脳粒子の回転運動の背景にある分岐構造について議論した.
連絡先: 谷篤史

第260回 「環境自然科学セミナー」

題目 多方向ミュオグラフィの開発
講演者 長原 翔伍(神戸大・人間発達環境・学術研究員)
日時 2021年10月13日(水) 15:10-16:40
場所 B208(ハイブリッドで実施,遠隔参加を希望される方はzoomの案内をお送りしますので,までご連絡下さい)
要旨  火山の内部構造,特に火道の大きさと形状は,噴火現象を理解するために重要な情報の一つである.しかし,火道の形状は一般的に単純な軸対称ではないため,3次元でのイメージングが必要である.ミュオグラフィは山体内部の密度分布を2次元上に投影することができる.近年では,3方向からミュオグラフィ観測を実施することで,3次元密度構造を推定した例もある(Rosas-Carbajal et al., 2017).しかし,この先行研究では火道の形状を捉えるまでには至っていない.その理由として,観測点数が少なかったことが挙げられる.本研究はこれを改善するため,電力不要で設置が容易な原子核乾板を用いたミュオグラフィを応用して,観測点数を8点に増やした多方向ミュオグラフィを開発し,火道の形状を推定した.実証観測のターゲットは,静岡県伊東市の大室山である.観測は2019年3月~6月にかけて8か所で行い,Nishiyama et al. (2014)による線形インバージョン手法を発展させ,3次元密度構造解析を行った.その結果,山頂火口から山体西側にかけて,山体西側に向けて非対称な高密度領域が存在することがわかった.これはちょうど山体西側の溶岩流との対応が示唆される.本発表では,以上の研究の詳細について紹介する.
連絡先: 谷篤史

第259回 「環境自然科学セミナー」

題目 分光連星の星周を公転する巨大ガス惑星の探査
講演者 加藤 則行(神戸大学人間発達環境学研究科 ROOTプログラム 学術研究員,理学博士)
日時 2021年4月21日(水)15:30-17:00
場所 zoom(ID・パスワードは谷篤史までお問い合わせください)
要旨  これまでの観測により,星形成とともに惑星形成が起きること,恒星の多くが誕生直後は連星であること,4000個以上もの太陽系外惑星の発見例があることが示された.これらのことを踏まえると,連星という環境は,惑星形成を考えるうえで避けられない因子である.しかしながら,観測バイアスにより,既知の太陽系外惑星はほとんどのものが単独星を公転する.連星に付随する太陽系外惑星のうち,一つの恒星を公転する星周タイプのものは,主星と伴星の平均距離(連星間距離)が100天文単位(AU:太陽-地球間の平均距離)以上と長い実視連星で約140個確認されている.連星間距離が短い連星では,以前は数十AUのもので20個程度の発見例であったが,最近は数から十数AUと短い分光連星でもガス惑星の発見がいくつか報告された.
 分光連星では,主星と伴星それぞれが保持していた星周の原始惑星円盤は,サイズがコンパクトに制限されると考えられる.したがって,ガス円盤の質量も小さく固体物質の量も少ないので,コア集積モデルによる巨大ガス惑星の形成は困難であると想像できる.一方,近年の数値計算によると,恒星は形成のごく初期段階では質量が1木星質量と非常に軽い可能性が示唆された.この場合,星周のガス円盤は重力的に不安定なので分裂し,複数個のガス塊が生まれる.これらの中で生き残ったものは,惑星質量や恒星質量の天体に進化すると考えられる.もし,この形成シナリオが現実的ならば,分光連星でも星周のガス惑星の存在を説明できるかもしれない.
 本研究では連星に付随する太陽系外惑星の探査を目的として,岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡と高分散分光器HIDES,ヨードセルを使用し,分光連星33天体の視線速度を9年間モニター観測した.視線速度の測定精度は10m/sである.精密に測定した視線速度を用いることで,これら連星の公転軌道要素を精度良く決定した.軌道要素から連星の公転運動に起因する視線速度を正確に導出することで,観測した視線速度から連星に起因する成分を除去し,残差成分を得た.視線速度の残差成分について,その起源を調べるため,周期解析した.結果,残差の変動が強い周期性を示す7天体を同定した.これらの残差成分は,恒星の表面活動に起因する可能性が排除できないと結論した.
連絡先: 谷篤史

第258回 「自然環境論セミナー」

題目 Protostellar and Protoplanetary Disks
講演者 James Noboru Imamura(オレゴン大学教授)
日時 2019年12月12日(木)15:10-16:40
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 G302教室(鶴甲第二キャンパス) 詳しくはこちら
要旨 A fundamental question in astronomy first posed in ancient times, is that of the origin of the Solar System. Today it is accepted that the collapse of dense cores in giant molecular clouds leads to the formation of stars (e.g., see Armitage 2011). In most proposed scenarios, the cores do not collapse directly to stars, they first pass through an intermediate phase where a nascent star forms surrounded by a circumstellar disk because of the large specific angular momentum of the cloud; the formation of stars and planetary systems results after mass and angular momentum are redistributed within these massive disks. This scenario had its origins in the 18th century when Swedenborg (1734), Kant (1755) and Laplace (1796) put forth, without observational support, the Nebular theory for the formation of the Solar System wherein planets formed in a massive disk orbiting about the young Sun (e.g., Woolfson 1993). Today, although aspects of the process remain elusive, the original vision has been firmly established. The mechanism, however, by which Jupiter-like planets are produced is not settled. Currently, it is thought that Jupiter-like planets form either through: (i) the core-accretion scenario where planet growth starts from the coalescence of dust particles in the disk and concludes with the gravitational capture of gas from the disk; and/or (ii) direct gravitational collapse driven by disk instabilities. No singular piece of evidence establishes which theory is the most plausible mechanism for the formation of Jovian planets. In my talk, I review observations of planets and planet forming regions, and the current state of modeling of planet formation mechanisms.
連絡先:伊藤真之(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第257回 「自然環境論セミナー」

題目 熱帯の自然生態系から大気へ放出される大気汚染物質、オゾン層破壊物質
講演者 斉藤 拓也 氏(国立環境研究所・環境計測研究センター 主任研究委員)
日時 2019年2月14日(木)15:10-16:40
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 B201教室(鶴甲第二キャンパス) 詳しくはこちら
要旨 熱帯雨林に代表される熱帯域の自然生態系は、様々な揮発性有機化合物(VOC)を大気へと放出することで、大気の質や成層圏オゾン層の消長などに影響を与えている。本セミナーでは、東南アジア熱帯林で実施したVOCの観測結果について紹介し、どのような熱帯植物がVOCを放出しているのか、またプランテーション化などによる森林の減少は単純にVOCの放出量の減少に繋がると考えてよいのか等について考察する。
連絡先:伊藤真之(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第256回 「自然環境論セミナー」

題目 琵琶湖湖底の低酸素化にともなうマンガン・ヒ素の動態変化
講演者 板井 啓明 先生(東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 准教授)
日時 2018年9月19日(水)14:00-15:00
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 G112教室 詳しくはこちら
要旨 主として琵琶湖堆積物および間隙水中のマンガンとヒ素の鉛直濃度分布の多数のデータに基づく地球化学的検討についてご紹介いただいた.これらの元素が堆積物最上部に濃縮しているが分かり,湖水深部における低酸素化と関係していることや,1970年代のデータと最近のデータを比較すると最近この濃縮が顕著になってきているという興味深い発見が示された.また,琵琶湖湖水の低酸素化や酸化還元反応に基づく湖内輸送の地球化学モデルについてご紹介いただいた.
連絡先:寺門靖高(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第255回 「自然環境論セミナー」

題目 ヒッグス粒子発見と素粒子物理学の新展開 — 約10年の海外での研究生活を振り返りながら
講演者 馬渡健太郎 博士(大阪大学 理学研究科物理学専攻 特任助教)
日時 2017年10月11日(水)15:10-16:40
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 B104教室 詳しくはこちら
要旨  2012年,ジュネーブにある大型陽子衝突加速器LHC実験で素粒子標準理論において唯一未発見であったヒッグス粒子が発見された.その当時のヨーロッパでの研究生活を振り返りながら,ヒッグス粒子発見後の素粒子物理学の現状,そして今後の展開を皆さんと議論したい.
連絡先:青木茂樹(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第254回 「自然環境論セミナー」

題目 熱帯の気象と年降水量2万ミリの雨
講演者 村田文絵 博士(高知大学教育研究部自然科学系理学部門 講師)
日時 2017年9月20日(水)15:10-16:40
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 B104教室 詳しくはこちら
要旨  熱帯は地球の中で占める面積が大きく地球全体への影響が大きいといわれるが,日本やアメリカ,ヨーロッパ等が位置する中緯度偏西風帯と比べて大気の運動や降水がどのようなときに降るかといったことがあまりわかっていない.このことは,将来地球温暖化によって雨の降り方がどのように変わるかに関して,不確実性がいまだ大きいことにも繋がっている.本発表では,発表者がフィールドとしているインド北東部に位置する世界的豪雨地点チェラプンジにおける雨の降り方についての研究を中心に,熱帯での雨の降り方について紹介する.
連絡先:青木茂樹(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第253回 「自然環境論セミナー」

題目 大気中の酸素および二酸化炭素濃度の観測に基づく研究
講演者 遠嶋康徳 氏(国立環境研究所 環境計測研究センター(動態化学研究室)/室長)
日時 2017年9月12日(火)15:10-16:40
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 G112教室 詳しくはこちら
要旨 酸素(O2)は燃焼や生物の光合成・呼吸といった過程で二酸化炭素(CO2)と交換する。また、O2/CO2交換比はこれらのプロセスに関与する物質の元素組成で第一義的に規定される。例えば石炭および天然ガス(主成分がメタン)の燃焼の場合、前者の交換比は約1(C+O2->CO2)、後者の交換比は約2(CH4+2O2->CO2+2H2O)となる。一方、大気-海洋間のガス交換を見ると、CO2は海水に溶けると炭酸水素イオンや炭酸イオンに解離するため、海水に対する溶解度はCO2の方がO2よりもはるかに大きくなるが、ガス交換速度はO2の方が早いという特徴がある。こうしたO2とCO2の特徴を利用することで、大気中のCO2濃度およびO2濃度(実際にはO2/N2比として計測される)の時空間分布の変動から、グローバルな炭素収支や、大気-海洋間のガス交換、CO2変動の起源の推定を行うことができる。発表では、これまでの大気中O2濃度分析の歴史やこれまでの研究成果、さらに、現在取り組んでいる研究について紹介する。
連絡先:伊藤真之(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第252回 「自然環境論セミナー」

題目 福島第一原発周辺の土壌粘土鉱物に保持された放射性セシウムの溶出挙動
講演者 福士圭介 博士(金沢大学 環日本海域環境研究センター 准教授)
日時 2017年9月7日(木)15:10-16:10
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 G112教室(G棟1階)詳しくはこちら
要旨  2011年3月の東日本大震災以降,福島第一原子力発電所(福島第一原発)周辺では,放射性Cs(セシウム)が土壌表層の細粒物質に濃集していることが確認されており,これは,土壌に普遍的に含まれている層状の粘土鉱物がセシウムの取り込み媒体になったためと指摘されています.セシウムイオンはこれら粘土鉱物への親和性が特に高く,層状粘土鉱物の層間に強固に保持されていると予想されています.しかし,溶液中の陽イオン濃度が高い場合,強固に保持されたセシウムイオンであっても溶脱しセシウムが再び土中に溶け出して流出する可能性があります.本講演では,福島第一原発周辺に分布する土壌粘土や標準粘土物質を用いて行ったセシウムの溶出挙動の検討についてお話しします.
連絡先:寺門靖高(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第251回 「自然環境論セミナー」

題目 大気中に浮遊する微粒子(エアロゾル)の形や組成が地球気候に与える影響
講演者 足立光司 博士(気象研究所主任研究官,神戸大学発達科学部人間環境学科自然環境論コース出身)
日時 2017年8月21日(月)15:10-16:00(セミナー後,懇親会へ)
場所 神戸大学人間発達環境学研究科 G112教室(G棟1階)詳しくはこちら
要旨  大気中の微粒子(エアロゾル)は,人間活動や自然現象で発生し,地球気候・気象・人の健康などに影響を与える.PM2.5の値で代表されるエアロゾルの質量濃度に加え.それらの形や組成はエアロゾルの特性を左右する重要な要素である.本発表では,電子顕微鏡を用いて大気中のエアロゾルの組成や形態を分析し,その気候影響を考察した研究成果を紹介する.特に,人為起源から発生するナノ酸化鉄粒子がもたらす気候影響など,最新のトピックを中心に発表を行う.
連絡先:大串健一(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第250回 「自然環境論セミナー」

題目 骨格筋内の性ステロイドホルモン増大による新規糖尿病治療法の開発に向けて
講演者 佐藤 幸治 氏 (神戸大学大学院人間発達環境学研究科)
日時 2017年6月2日(金)17:00-18:30(セミナー後,懇親会へ)
場所 発達科学部 G302教室(G棟3階)詳しくはこちら
要旨  糖尿病や肥満の患者において,血中および骨格筋内の性ステロイドホルモン濃度が低下していることが報告されており,我々は,性ステロイドホルモンの骨格筋における新たな役割を明らかにしてきた.現在までに動物実験で基礎研究を行い,それらの基礎データを基に,今後,運動や栄養成分摂取による性ステロイドホルモン増大が新規糖尿病治療・予防法開発に向け,ヒトに応用していく.
 始めに,筋培養細胞で,精巣や卵巣だけでなく,骨格筋においても性ステロイドホルモンが代謝・合成されることを世界で初めて報告し,その性ステロイドホルモンが骨格筋の糖代謝を亢進することを明らかにした.動物実験においても,急性,慢性の運動で骨格筋の性ステロイドホルモンが増加し,その増加した性ステロイドホルモンがインスリン抵抗性の改善に関与していることを明らかにした.
また,2型糖尿病モデルラットを用いて運動,運動+性ステロイドホルモン合成阻害剤を慢性的に投与した結果,阻害剤を投与した2型糖尿病ラットは運動による骨格筋糖代謝経路,血糖値の改善が抑制されることを明らかにしてきた.
 ヒトにおいて,高齢者では,性ステロイドホルモンが低下しているが,筋力トレーニングにより骨格筋内の性ステロイドホルモン濃度が増大することを報告した.本セミナーでは性ステロイドホルモンの役割,高齢者,糖尿病患者に対する性ステロイドホルモン増大の意義について紹介する予定である.
連絡先:丑丸敦史(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第249回 「自然環境論セミナー」

題目 化学修飾RNAを用いた細胞内環境制御 -癌・希少難治性疾患の治療を目指して-
講演者 松井 雅之 氏 (元 UT Southwestern Medical Center 研究員)
日時 2016年9月20日(火)13:30-15:00
場所 発達科学部 G302教室(G棟3階)詳しくはこちら
要旨  近年,新しいタイプのバイオ医薬品として抗体医薬や核酸医薬に注目が集まっている.低分子有機化合物の合成とスクリーニングを基礎とする従来の創薬手法と比べて,これらのバイオ医薬品の開発は生物が有する免疫機構や遺伝子配列を利用して進められるために,高い特異性と安全性を有する薬剤をよりスピーディに開発できる特徴があり,これまで創薬が困難であった癌や希少難治性疾患に対しても創薬の可能性が開けてきた.本講演では,まずイントロダクションとして,各創薬手法の特徴と臨床開発の現状について簡単に述べた後,特に癌や神経変性疾患として知られるハンチントン病やフリードライヒ運動失調症の治療を目指した核酸医薬開発についての最近の試みについて紹介し,今後の可能性について議論する.
参考文献
1) Non-coding RNAs as drug targets
2) Activating frataxin expression by repeat-targeted nucleic acids
3) Argonaute 2-dependent Regulation of Gene Expression by Single-stranded miRNA Mimics
連絡先:江原靖人(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第248回 「自然環境論セミナー」

題目 励起子の計算物理化学 —分子集合体の光物性と励起ダイナミクス—
講演者 藤田 貴敏 氏 (京都大学大学院理学研究科 博士研究員)
日時 2016年3月3日(木)15:30-17:00
場所 発達科学部 G302教室(G棟3階)詳しくはこちら
要旨  近年,持続可能な再生エネルギーとして太陽エネルギーが注目を集めており,太陽電池や人工光合成系について様々な立場から研究が進められています.光エネルギーを効率よく利用するためには,電子励起エネルギー移動や電荷分離過程を適切に制御する必要があり,分子系の光物性についての詳細な知見が必須です.私は分子集合体の光・電子物性や励起ダイナミクスについて理論・計算の立場から研究を行ってきました.
 本講演では、分子が集積した系の励起状態について簡単に説明した後に,(1) 光合成アンテナ系クロロソームの励起エネルギー移動,(2) 有機半導体の励起ダイナミクス,(3) J会合体のストークスシフト,についての研究を紹介します.
連絡先:田中成典(自然環境論コース)

第247回 「自然環境論セミナー」

題目 最大エントロピー理論と確率分布動態モデルを用いた生態系の群集理論
講演者 梅村 界渡 氏 (人間発達環境学研究科 部局研究員)
日時 2016年2月22日(月)10:00-11:30
場所 発達科学部 B208教室(B棟2階)詳しくはこちら
要旨  群集生態学においては,ある生態系内の生物の種数や個体数などのマクロなパターンの特徴と生成要因を理解して,その予測をすることが基本的課題である.最大エントロピー理論とは,束縛条件に基づき,任意の調整パラメーターなしで目的変数の確率分布関数を求める情報理論の一分野であり,生態学への応用によって主に定常系の群集パターンの再現・予測に成功してきた.しかし個体の流出入や種分化によって比較的速く変化する系では,これまでのところ予測が現実のデータと十分に一致していないため,系の動態を扱うための理論的拡張が必要である.本発表では,確率分布動態モデルと条件付き確率を用いる手法を紹介する.特に種・個体数分布(species-abundance distribution)やそれと等価なランク図のパターンに着目して,中米の熱帯雨林や島嶼の節足動物群集などの実例と比較しながら,議論を行う予定である.
連絡先:蛯名邦禎(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第246回 「自然環境論セミナー」

題目 ニホンウナギの産卵回遊生態の解明に向けて
講演者 渡邊 俊 氏(日本大学 生物資源科学部)
日時 2015年2月12日(木)11:00-12:15
場所 発達科学部 G112室
要旨  ニホンウナギ(Anguilla japonica)の親魚と卵が,グアム島沖の西マリアナ海嶺域で採集されたことから,本種の産卵場に関する研究には終止符が打たれたとの見方がある.しかし,本種の雌雄が広い海の中で何を目印にどのように集合し,なぜその場所にのみ産卵場を形成するかという生物学的問題は未解決のままである.今回は,本種の産卵回遊生態の解明に向けての3つの新しい試み,i) ポップアップタグによるニホンウナギの産卵回遊行動,ii) 漂流系水中カメラシステム(UNA-CAM)による本種の産卵行動の観察,iii) 内部潮汐と産卵地点の対応関係について紹介する.ニホンウナギの産卵地点の特性と産卵タイミングを正確に予測できるようになれば,産卵集団形成メカニズムを解明することができるだろう.さらにこの成果は,ニホンウナギの大回遊のみならず,生物の回遊・移動・渡りの生物学的知識を飛躍的に増大させると考える.
連絡先:源利文(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第245回 「自然環境論セミナー」

題目 メダカの気候適応の研究から熱帯の生物多様性の謎を解き明かす
講演者 山平 寿智 氏(琉球大学・熱帯生物圏研究センター)
日時 2015年1月14日(水)16:00-17:30
場所 発達科学部 B212室
要旨  地球規模で見ると,多くの分類群においてその種多様性は赤道付近で高く,北と南へ緯度が増すにつれて低下するというパターンが見られる.熱帯の生物はなぜかくも多様なのだろうか?種多様性の緯度勾配の説明は,古くから生態学や進化生物学の中心課題の一つであると共に,多様性の保全・管理という視点からもその重要性が再認識されつつある.メダカ属魚類(Oryzias)もその多くが東南アジアから南アジアの熱帯域に分布しており,温帯には日本のメダカを含め数種しか分布していない.講演では,日本のメダカが熱帯から温帯へと分布を拡大した適応の実体を解説すると共に,そうした適応が頻繁には進化できない遺伝的根拠(=遺伝的制約)について演者の考えを紹介する.また,熱帯に多くのメダカ属魚類が分布しているのは,温帯より熱帯の方が種分化が速いことを反映しているかもしれない.講演では,各地域の気候環境への適応が,種分化速度の緯度勾配をもたらす可能性についても言及する.
連絡先:高見泰興(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第244回 「自然環境論セミナー」

題目 原子力防災を考える
講演者 占部逸正 先生(福山大学工学部情報工学科 教授
       福島原発事故当時,日本原子力学会 放射線影響分科会主査を務められました)
日時 2014年9月19日(金)15:10-16:40
場所 発達科学部 G112室
要旨  原子力発電の新規制基準への適合性が認められ運転再開が目前に迫っています.しかし,一方には,万が一の時の災害対応の体制が不十分であるとして,再開を控えるべきであるとの主張がなされています.
 原子力発電の新規制基準と原子力防災はどのような関係にあるのか,規制庁は原子力防災をどのように実施しようとしているのか,その体制は万が一の場合に有効に機能するのか,原子力の安全をどうとらえるのかなどについて考えてみたいと思います.
連絡先:中川和道(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第243回 「自然環境論セミナー」

題目 福島原発事故における”減思力”の教訓
講演者 後藤 忍 先生(福島大学理工学群共生システム理工学類
        環境システムマネジメント専攻 準教授(環境計画論))
日時 2014年8月29日(金)15:10-16:40
場所 発達科学部 G112室(大きな部屋に変更の可能性あり)
要旨  福島第一原発事故で崩壊した,いわゆる「原発の安全神話」は,なぜ流布したのでしょうか.それは,原子力に関する教育や広報の影響が大きかったからだと考えられます.
 福島第一原発の事故で教訓とすべき点の一つは,偏重した教育や広報により国民の公正な判断力を低下させるような,いわば“減思力(げんしりょく)”を防ぐことです.
 本講では,福島第一原発事故後の原子力・放射線教育のあり方について,特に「公平性」の観点から論じたいと思います.
連絡先:中川和道(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第242回 「自然環境論セミナー」

題目 放射光を用いた炭素系燃料電池触媒材料の研究
講演者 下山 巖 氏(日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究センター 副主任研究員)
日時 2014年6月4日(水)13:20-14:50
場所 発達科学部 G312セミナー室(変更の可能性あり)
要旨  新規な触媒の表面で起きている反応の詳細をリアルタイムで調べるうえで,軟X線を用いた放射光分析が大きな力を発揮します.今回は,その手法を駆使して炭素系燃料電池触媒材料の研究を行った事例を報告していただきます.院生の募集も行っているそうですので,興味ある方はぜひ聞いてみて下さい.
連絡先:中川和道(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第241回 「自然環境論セミナー」

題目 地球温暖化問題の現在 〜IPCC最新報告書が意味するもの〜
講演者 江守 正多 氏(国立環境研究所 地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室長)
日時 2014年1月22日(水)13:20-14:50
場所 発達科学部 A325教室
要旨  昨年9月に発表になったIPCC第一作業部会の第5次評価報告書によれば、世界平均気温の上昇量は、人為的な二酸化炭素の累積排出量にほぼ比例する。これに基づけば、世界平均気温上昇量の上限を決めれば、人類が排出してよい二酸化炭素の総量が決まってしまう。条約交渉では、産業化前を基準に世界平均気温の上昇を2℃以内に抑えるための排出削減が必要と認識されている。科学的な不確実性はあるが、仮に50%の可能性でこの「2℃以内」の目標を実現しようとすると、人類が今から排出してよい二酸化炭素の総量は 300 GtC 程度である。近年の年間排出量である約10 GtC/年で割ると、30年程度でこの量に達してしまう。この状況を我々はどのように受け止めたらよいかを論じたい。
連絡先:蛯名邦禎(人間環境学専攻 環境基礎論講座), 078-803-7754

第240回 「自然環境論セミナー」

題目 有機アミン類の大気中での化学反応
講演者 今村 隆史 氏(国立環境研究所 地球観測センター)
日時 2013年9月20日(金)13:30-14:30
場所 発達科学部 G112教室
要旨  CO2の排出量削減技術の1つとして、CO2の回収貯留技術(CCS)が提案されている。この技術は排出されるガスからのCO2の分離回収と、回収したCO2を貯蔵する技術から構成される。CO2の回収技術としては、いくつかの方法が提案されているが、その内の1つとして、化学的にCO2を回収する方法(化学吸収法)がある。化学吸収法では、CO2と反応するアルカリ性の物質が用いられることが多く、その吸収液の候補として有機系のアミン類が挙げられている。有機アミン類が大気に放出された場合、大気中での化学反応によって、健康被害をもたらす可能性のある物質(例えば発がん性が懸念されているニトロソアミン類)も生成される事が予想される。  そこで、今回の講演では、大気中に排出された有機アミン類はどの様なプロセスで大気から除去されるのか、大気中での化学反応によってどの程度の割合でニトロソアミン類などの生成物が生成されるのか、を見積もるための化学反応に関しての研究結果を紹介する。
連絡先:中川和道(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第239回 「自然環境論セミナー」

題目 持続可能な社会のための地球環境研究 — 新しい国際プログラムFuture Earthと地球研プロジェクト
講演者 谷口 真人 氏(総合地球環境学研究所 教授)
日時 2013年9月24日(火)14:30-16:00
場所 発達科学部 B104教室
要旨  Future Earth (以下FE) 国際研究プログラムは,地球環境変化研究GEC (Global Environmental Change) の統合と持続可能な社会のための目標SDGs (Sustainable Development Goals) をもとに準備が進められている「統合的地球環境研究プログラム」である.またFEは,学際・超学際的な研究と研究者コミュニティ以外のステークホルダーとの協働(トランスディシプリナリティ)・共創 (Co-design/co-production) を通して,地域から地球全体の環境保全と持続可能性を追求するところにその特色があり,これからの世界の学術研究の大きな流れを作るものと理解されている.
 講演では,FEプログラムの学際研究計画としての革新性や意義,またインターディシプリンからトランスディシプリンへの転換の意義や今後の見通しなどにふれつつ,FEと親和性の高い総合地球環境学研究所の基幹プロジェクト「アジア環太平洋地域における人間環境安全保障:水・エネルギー・食料連環」の研究計画と内容を紹介する.
連絡先:蛯名邦禎(人間環境学専攻 環境基礎論講座)

第238回 「自然環境論セミナー」

題目 Spiral Arms and Gaps in Protoplanetary and Protostellar Disks
講演者 Prof. James N. Imamura (Institute of Theoretical Science, University of Oregon)
日時 2013年9月5日(木)15:00-16:30
場所 発達科学部 G112室
要旨 We modeled disk systems with properties representative of protostellar and protoplanetary disks to study the formation of spiral arms and gap structures in disks. We considered processes driven by gravitational instabilities (GIs). We modeled the development of spiral arms induced by nonaxisymmetric disk instabilities. Such instabilities are capable of producing low-m tightly wound spiral modes, where m is the azimuthal mode number for nonaxisymmetric modes with harmonic aziumthal dependence.Tightly wound low-m modes may appear to show multiple dips. Further, for adiabatic disks with nearly constant specific angular momentum velocity distributions, the Toomre parameter, Q > 10 everywhere in the disks. High-resolution observations of protostellar and protoplanetary disks have recently revealed structure in the form of spiral arms and gaps in circumstellar disks. For example, observations of the Herbig-Haro object AB Aur have revealed two elliptical rings with major axes ≫ 92 A.U.and 210 A.U., separated by an elliptical gap with major axis 170 A.U. (Fukugawa et al. 2004, Hashimoto et al. 2011). The ring/gap structure is seen in optically thick IR emission (Fukugawa et al. 2004) and optically thin sub-millimeter emission (Henning et al. 1998) suggesting that the features extend to the midplane of the disk and are more than corrugations in the surface density. Polarimetric high-resolution images obtained by the Subaru telescope have also revealed the presence of several dips in the intensity of the rings interpreted as spiral structures (Hashimoto et al. 2011). Hashimoto et al. noted that the appearance of the multi-armed spiral structure was consistent with expectations of GI. However, it was argued that GIs were not likely to be the explanation for the structure because of the large Q parameter estimated for the disk, Q ≫ 10 (Pietu, Guilloteau, & Dutrey 2005) and other explanations such as gaps cleared by massive planetary cores (e.g., Papaloizou & Terquem 2006) and spiral patterns excited by low-mass planetary cores (e.g., Tanaka, Takeuchi, & Ward 2002) were proposed. We compare our numerical results with AB Aur and other protoplanetary systems to assess the viability of GIs as an explanation for the structure observed in protoplanetary and protostellar dust and gas/dust disks. We, however, do not calculate detailed spectra expected for dusty disks. The observational properties of disks must be determined from solution of the radiative transfer equation for the reflection of the stellar emission off the dust particles in the disk and through emission from dust particles in the disks, dust particles heated by hydrodynamic processes in the disk and by energy deposition in the disk. We are currently in the process of modeling radiation from our disks using Monte Carlo techniques. The disk dust distribution is inferred from the mass distribution and velocity field of the gas in the disk.
連絡先:伊藤真之(人間発達環境学研究科 自然環境論コース)

第237回 「自然環境論セミナー」

題目 環境DNA解析を利用した水中生物調査の現状と課題
講演者 源 利文 氏(神戸大学大学院 人間発達環境学研究科)
日時 2013年7月19日(金)13:20-14:50
場所 神戸大学発達科学部 B208教室
要旨 近年環境中のDNA断片を用いた水中の大型生物モニタリング手法が開発され、様々な応用可能性が示されつつある。これまでに演者らは魚類ミトコンドリアDNAの相同領域をターゲットとした魚類共通プライマーを用いた定性的モニタリング法や、種特異的プライマーとTaqmanプローブを用いた定量的モニタリング法を開発してきた。本セミナーではこれらの手法を紹介するとともに、その応用可能性、現時点における限界と課題についても議論したい。
連絡先:高見泰興(人間発達環境学研究科 自然環境論コース)

第236回 「自然環境論セミナー」

題目 生分解性高分子における弱い相互作用の役割
講演者 佐藤 春実 氏(神戸大学大学院 人間発達環境学研究科)
日時 2013年6月21日(金)13:20-14:50
場所 神戸大学発達科学部 A325教室
要旨 微生物からつくられるポリヒドロキシブタン酸(PHB)は、生分解性でかつ熱可塑性のポリマーであるため、次世代のポリマーとして期待される。このPHBの結晶構造中に存在する弱い水素結合に注目し、振動分光法とX線回折法を用いて、その役割を明らかにすることを試みた。本セミナーでは、温度変化による結晶構造の変化から、高分子鎖における相互作用を調べた研究を紹介する。
連絡先:高見泰興(人間発達環境学研究科 自然環境論コース)

第235回 「自然環境論セミナー」

題目 東京電力福島第一原子力発電所から放出された放射性物質のマッピングについて
講演者 長岡 鋭 氏 (高輝度光科学研究センター 安全管理室長,工学博士)
日時 2012年11月14日(水)15:00-17:00
場所 神戸大学発達科学部 大会議室
要旨 学術講演会(人間発達環境学研究科・神戸大学核燃料物質管理委員会専門委員会・自然環境論セミナー・環境物理学コロキウム共催)
講演会の目的
 突如大きな環境問題となった放射性物質の種類と量と空間分布を明らかにした膨大なマッピング作業のとりまとめにあたった講演者の体験を学び,それを通して環境計測の実際を考えます.あわせて,教育研究の場における核燃料物質,放射性物質の取扱いについて専門家の立場から助言をいただきます.
対象者:神戸大学の教員,職員,学生,院生
連絡先:中川和道

第234回 「自然環境論セミナー」

題目 原発事故で明らかになった計測学の課題
講演者 占部 逸正 氏(福山大学教授)
日時 2012年9月13日(木)17:00-18:00+α
場所 神戸大学発達科学部G112室
要旨  環境計測学Bの集中講義9/13-14,18に来て下さる占部逸正氏(福山大学教授)に授業の一部をセミナーとして公開していただくことになりました.受講登録者だけでなく,誰でも参加できますので,ご自由にご参加下さい.
 放射線計測はよく確立した分野で,あらゆる放射線は検出できるので,環境計測の基本として位置づけられます.ところが環境放射線の実態は多岐にわたるので,実際問題をどう突破して計測を行うかが問われます.今回の原発事故にあたり,環境計測学は何に取り組み何を成し遂げ得るのかを考えていきます.
連絡先:中川和道

第233回 「自然環境論セミナー」

題目 気候システムにおける南極海の役割
講演者 草原 和弥 氏(東京大学大気海洋研究所)
日時 2012年9月7日(金)16:00-17:00
場所 神戸大学発達科学部B208室
要旨

第232回 「自然環境論セミナー」

題目 有孔虫化石の化学分析から読み解く西部北太平洋の海洋環境変遷
講演者 佐川 拓也 氏(愛媛大学上級研究員センター)
日時 2012年9月7日(金)13:00-14:00
場所 神戸大学発達科学部B208室
要旨

第231回 「自然環境論セミナー」

題目 環境DNA分析を利用した水中生物のモニタリング
講演者 源 利文 氏(総合地球環境学研究所)
日時 2012年9月7日(金)9:00-10:00
場所 神戸大学発達科学部B208室
要旨

第230回 「自然環境論セミナー」

題目 福島県内の河川における放射性セシウムの挙動
講演者 長尾 誠也 教授(金沢大学環日本海域環境研究センター低レベル放射能実験施設)
日時 2012年8月31日(金) 16:00-17:30
場所 神戸大学発達科学部G112室
要旨 福島原発事故により放出された放射性セシウムの河川水の測定結果についてお話します.
連絡先:大串健一(人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: ohkushi@penguin.kobe-u.ac.jp

第229回 「自然環境論セミナー」

題目 Climate-Ecosystem Feedback
講演者 Dr. John Harte (UC Berkeley)
日時 2012年3月29日(木) 10:00-11:30
場所 神戸大学発達科学部B210室
要旨 This talk will focus on how ecosystem responses to climate change are likely to generate feedback effects that will make the problem of global warming even worse than generally believed. Hosted by Unit of Natural Environmental Science, Graduate School of Human Development and Environment, Kobe University Supported by Japan Society for the Promotion of Science (JSPS)
連絡先:蛯名邦禎 (人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第228回 「自然環境論セミナー」

題目 生分解性ポリマーの構造解析と環境科学への展開
講演者 佐藤 春実 さん(関西学院大学理工学部 環境調和型高分子研究センター)
日時 2012年3月16日(金) 13:00-14:00
場所 神戸大学発達科学部A棟2階大会議室
要旨 環境問題への意識の高まりとともに自然環境中で微生物により分解され自然に還る生分解ポリマーが注目を集め、その研究が国内外で盛んに行われるようになってきた。微生物由来の生分解性ポリマーであるポリヒドロキシブタン酸(PHB)の結晶構造中には、C-H・・・O=C水素結合が存在し、結晶構造の安定化に寄与している。本セミナーでは、生分解性などの物性コントロールの鍵を握っているこの弱い水素結合を中心とした生分解性ポリマーの構造解析と、合成高分子材料の代替材料として期待される生分解性プラスチックの現状について紹介する。
連絡先:江原靖人(人間発達環境学研究科 自然環境論コース)

第227回 「自然環境論セミナー」

題目 鉱物・生体有機分子相互作用-スメクタイトの溶解速度に及ぼす微生物の影響-
講演者 河野 元治 先生(鹿児島大院・理工)
日時 2012年2月21日(火) 13:20-14:20
場所 神戸大学発達科学部B208教室
要旨 鉱物と生体有機分子相互作用の定量的評価や反応機構の解明は、地球表層環境のシステムとしての成り立ちや鉱物の安定性および物質循環の速度等を 見積もるうえできわめて重要です。例えば、地球表層環境に存在する種々の生体有機分子は鉱物表面と反応して鉱物の溶解速度や構造安定性に大きな影 響を及ぼしています。また、溶液中の種々のイオンと反応して、イオンの移行速度やある種の鉱物の生成に強く関与していることも良く知られていま す。そこで、今回のセミナーでは高レベル放射性廃棄物地層処分における緩衝材の長期安定性に及ぼす生体有機分子の影響を定量的に評価することを目 的として、緩衝材を構成する粘土鉱物の溶解速度に及ぼす微生物および微生物起源有機分子の影響について検討した結果の一部を発表します。
連絡先:寺門靖高(人間発達環境学研究科 自然環境論コース)

第226回 「自然環境論セミナー」

題目 オゾン層破壊と地表紫外線に関する最近の話題
講演者 今村 隆史 先生(国立環境研究所 環境計測研究センター研究センター長)
日時 2011年9月1日(木) 13:30-14:30
場所 神戸大学発達科学部G302教室
要旨 オゾン層破壊物質(フロンやハロンなど。ODS)の規制の効果は、成層圏におけるODS濃度の減少として現れ、また、オゾン全量についても、もはや減少傾向からは脱却したと言って良い。今後のオゾン層の回復ならびに 地表紫外線量(UV量)の変化は単にODS濃度の変化のみに依存するものではなく、温室効果気体(GHG)濃度の変化や気候変動の影響を受ける。また逆に、オゾン層の回復やUV量の変化は対流圏の気候や大気質にも影響を及ぼすと考えられる。今回は、オゾン層の変動ならびにUV量の変化とその影響に関する最近の話題をいくつか紹介する。
連絡先:中川和道(人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: nakagawa@kobe-u.ac.jp

第225回 「自然環境論セミナー」

題目 多細胞動物ミトコンドリアに見られる遺伝暗号の多様化
講演者 横堀 伸一 先生(東京薬科大学生命科学部 分子生命科学科・講師)
日時 2011年8月25日(木) 16:00-17:00
場所 神戸大学発達科学部G112教室
要旨 遺伝暗号表はバクテリアからヒトまで同一である(普遍暗号)といわれるが、実際には様々な生物でそこから逸脱した遺伝暗号表が知られている。後生動物ミトコンドリアの遺伝情報系では、そのような変則的な遺伝暗号表が使われているだけでなく、動物の進化にしたがって遺伝暗号表も進化している。多細胞動物ミトコンドリアでみられる遺伝暗号表の進化と、その要因について議論したい。
連絡先:中川和道(人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: nakagawa@kobe-u.ac.jp

第224回 「自然環境論セミナー」

題目 福島原発事故により放出された放射性セシウムの環境動態
講演者 長尾 誠也 さん(金沢大学環日本海域環境研究センター低レベル放射 能実験施設・教授)
日時 2011年8月31日(水) 16:00-17:30
場所 神戸大学発達科学部G112教室
要旨 福島原発事故により放出された放射性セシウムの河川水や海水の測定結果についてお話します.
連絡先:大串健一(人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: ohkushi@penguin.kobe-u.ac.jp

第223回 「自然環境論セミナー」

題目 Corrugation Instabilities in Strong, Slow magnetodhydrodynamic Shock Waves
講演者 James N. Imamura 氏 (University of Oregon)
日時 2011年6月30日(木) 13:20-14:50
場所 神戸大学発達科学部G112教室
要旨 Strong shock waves arise in many astrophysical situations and have been the focus of research for over fifty years beginning with the work on blast waves. These investigations provide a large body of understanding as to the nature, characteristics, and evolutionary behavior of shock waves over a wide range of conditions. However, largely absent are investigations into the properties of shock waves in the presence of strong magnetic fields. In such cases these magnetic fields can significantly alter the stability properties and behavior of the shock wave through the production and progation of magnetohydrodynamic waves. With strong magnetic fields found in a number of shock systems, such as compact x-ray binary systems, protostellar systems, and our Solar System, a better understanding of magnetic shock waves is needed. A new magnetohydrodynamics (MHD) simulation code, IMOGEN, was developed to carry out investigations of instabilities into strong, slow MHD shocks by modeling their long-term nonlinear evolution. IMOGEN implements a relaxed, second-order, total variation diminishing, monotonic upwind scheme for conservation laws and incorporates a staggered-grid constrained transport scheme for magnetic advection. Through simulations of the evolution of magnetic shock waves over a wide range of initial conditions, we showed that magnetic shock waves are subject to corrugation instabilities for a wide range of magnetic field strengths. As corrugation instabilities grow, they can manifest themselves through propagation of strong magnetic waves into the upstream and downstream flows and through the formation of density columns ("fingers") which grow into the downstream flow. The columns are maintained by current loops formed at the shock wave flowing along their surfaces of through the development of short-wavelength disturbances. We are currently extending these works to include radiation effects for shocks in compact x-ray binary systems and effects appropriate for shocks in protostellar and protoplanetary systems.
連絡先:伊藤真之 (人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: mitoh@kobe-u.ac.jp

第222回 「自然環境論セミナー」

題目 気候変動の中で高山生態系に生じるレジームシフトのモデル解析
―大雪山五色ヶ原の植生(笹と高山植物)を事例とした平均場モデルによる解析 ―
講演者 矢吹 哲夫 氏(酪農学園大学 環境システム学部 生命環境学科)
日時 2011年2月28日(月) 10:30-12:00
場所 神戸大学発達科学部G302教室
要旨 近年,環境科学の様々な分野(例えば生態系)で“レジームシフト”と呼ばれる現象について関心が高まっています.ある系(システム)に以下の3つの条件を満たす変化が生じたとき,その変化は“レジームシフト”と呼ばれます.
1)系の変化が突然で急激である.
2)系の変化の原因となる環境条件の変化は突然ではなくゆっくりである.
3)系の変化が生じるときの環境条件の閾値と系が元に戻るときの閾値が異なる“ヒステリシス”がある.
特に3)のヒステリシスの条件は,ある系(例えば生態系)が劣化するときの閾値と復元するときの閾値が異なることを意味し,僅かな環境条件の変化で系が劣化しても系を復元するためにはその何倍もの努力が必要となるという意味で,“非可逆的”に近いダメージを示唆します.
今回の発表では,近年の気温上昇の中で高山生態系に生じつつある変化が“レジームシフト”である可能性があることを,大雪山五色ヶ原の植生(笹と高山植物)を事例として,雪解けの時期の早さに着目して構成した平均場モデルによる数値解析の結果から提示します.
連絡先:蛯名邦禎 (人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第221回 「自然環境論セミナー」

題目 "Origins of life: Concepts and recent results"(生命の起源:その考え方から最近の成果まで)
講演者 Marie-Christine Maurel 教授
University Pierre et Marie Curie (UPMC) Paris 6. Laboratory of Biochemical Evolution (Acides nucleiques et biophotonique)
(パリ第6大学 生化学進化研究所 核酸バイオ光学研究部門)
日時 2011年1月12日(水) 13:30-15:00
場所 神戸大学発達科学部G302教室
要旨 Marie-Christine Maurel教授は極限環境下で働くリボザイムの創成とその機能解析における世界的リーダーです。RNAワールド仮説を中心とする生命の起源の研究を精力的に進めておられます。今回は、少し幅広く,生命の起源研究を俯瞰した話題を提供していただきます。 学生の方もどうぞ.
なお,15時から中川グループとMaurel教授とのワークショップをG312で行います.ご興味のある方はこちらにもおいで下さい.
連絡先: 中川和道
e-mail: nakagawa@kobe-u.ac.jp

第220回 「自然環境論セミナー」

題目 科学実在論論争の現在
講演者 戸田山 和久 氏(名古屋大学大学院情報科学研究科社会システム情報学専攻)
日時 2010年11月6日(土)17:00~18:30
場所 神戸大学発達科学部A325教室
要旨 科学哲学に,科学実在論という立場があります.それは次のどれか,あるいはすべてを主張する立場です.
(1) よく確かめられ受け入れられた科学理論はおおむね真であると考えてよい(そう考えることは合理的である)
(2) よく確かめられ受け入れられた科学理論が想定している存在者,たとえば電子とか電磁場とかは,現に存在すると考えてよい(そう考えることは合理的である)
(3) 科学の目的は真理に到達することである.
一方,これらを否定する立場を反実在論と言います.科学者はみんな実在論者かと言うと,そうでもありません.エルンスト・マッハはかなり頑固な反実在論者でした.「サイエンス・ウォーズ」騒ぎで活躍した,アラン・ソーカルは自分の実在論的信念を吐露していました.さて,この実在論を議論を通して擁護したいというのが私の願望ですが,それは意外に難しいものです.今回は,科学実在論論争をめぐる議論の現状をご紹介し,みなさんと一緒に考えてみたいと思います.
連絡先:蛯名邦禎 (人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第219回 「自然環境論セミナー」

題目 オホーツク海表層水における溶存有機物の蛍光特性と移行動態
講演者 長尾 誠也 氏(金沢大学環日本海域環境研究センター低レベル放射能実験施設)
日時 2010年9月3日(木)16:00~17:30
場所 神戸大学発達科学部G112教室
要旨 本研究では、海洋表層の生物生産に必要な鉄を運ぶキャリアとして重要な溶存有機物の腐植物質に着目し、腐植物質の蛍光特性を用いてアムール川からオホーツク海へ供給された腐植物質の移行動態を検討した結果を報告する。
連絡先:大串健一(人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: ohkushi@penguin.kobe-u.ac.jp

第218回 「自然環境論セミナー」

題目 地質分野におけるGIS-地質情報の利用と発信-
講演者 米澤 剛 氏(総合地球環境学研究所 研究推進戦略センター)
日時 2010年9月18日(木)16:30~18:00
場所 神戸大学発達科学部G302教室
要旨 GIS (Geographic Information System) は空間情報科学の基本的なツールとして飛躍的な進歩を遂げています.世界レベル,国レベルでの基盤情報の整備や地方自治体での導入により,一般的なものとなりました.情報処理機器の高速化・大容量化,ネットワークの普及にともない,GISを支えるハードウェア環境は十分整備されてきました.また,GISのソフトウェアも高価なものから無償のものまで,多種多様なものが開発されています.
地質情報は地面の下を支える空間情報の重要な要素の1つです.とくに,環境・防災・地下利用などの地質に密接に関連した問題の対策には,地質情報が重要です.地質情報をこれらの問題解決に十分反映するためは,GIS上で地質情報を正しく表現し,積極的に情報を提供する必要があります.
ここでは,GISを概説し,GISによる地質図作成手法である3次元地質モデリングとその応用分野での活用について紹介します.
連絡先:蛯名邦禎 (人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第217回 「自然環境論セミナー」

題目 ガンマ線バースト用監視カメラ
講演者 小谷 太郎 氏 (青山学院大学)
日時 2010年6月21日(月)15:10~16:40
場所 神戸大学発達科学部G302教室
要旨 天体が突然爆発して大量のガンマ線を放射する、ガンマ線バーストという現象がある。太陽質量の何十倍もの巨星が超新星爆発をする際、物質をほぼ光速でジェット状に噴射し、これがガンマ線バーストとして観測されるという解釈が主流である。ただし中性子星連星系が衝突する際にはガンマ線を爆発的に放射するという予想もある。正体を知るためには、いつどこで起きるかわからないガンマ線バーストを発生と同時にとらえ、位置を測定する必要がある。
青山学院大学では、X線 CCD と符合化マスクを用いるX線天体監視装置の開発を行なっている。この原理による広視野 CCD カメラを衛星軌道におき、ガンマ線バーストの即時発見・通報をねらう。
連絡先:伊藤真之(人間発達環境学研究科)

第216回 「自然環境論セミナー」

題目 巻貝の殻にすむ小さなシクリッドの進化
講演者 高橋 鉄美 氏 (京都大学大学院理学研究科・生物多様性進化gCOE)
日時 2010年2月12日(木)13:20〜15:00
場所 神戸大学発達科学部B208号室(発達科学部B棟2階)
要旨 アフリカのタンガニイカ湖には、シクリッドと呼ばれる魚が 200種類以上もすんでいます。そしてその9割以上は、 この湖だけに生息する固有種です。 このタンガニイカ湖シクリッドは、 種類ごとにさまざまな形態や生態をしています。 そして、この種類ごとにみられる違いは、 それぞれ異なる資源(餌や生息場所など)に対して 適応した結果だと考えられています。 今回の発表 では、最近明らかになった適応の例として、 巻貝の空殻を隠れ場所や産卵場所として利用する、 珍しい生態を持つ小さなシクリッドについて紹介します。 また、現地での調査や生活についても紹介したいと思います。
連絡先:高見泰興(人間発達環境学研究科)
e-mail: takami@people.kobe-u.ac.jp

第215回 「自然環境論セミナー」

題目 全地球観測の現状と将来
講演者 山中 大学 氏
海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球環境変動領域 上席研究員
(神戸大学理学研究科地球惑星科学専攻 連携講座客員教授)
日時 2009年9月15日(火)13:20−14:50
場所 発達科学部B208号室(発達科学部B棟2階)
要旨 この夏の異常気象の原因でもあるエルニーニョ等の短期気候変動の解明と 予測を研究テーマとした国際協力によるプロジェクト研究 (具体的には、インドネシア気象レーダー網の構築、およびブイ網を用いた 国際大気海洋研究所の構築などを中心とするプロジェクト) を立ち上げる経験を通じて、下記の事がらについて論ずる。

アジアの発展と日本の科学技術外交
ODAによる地球規模課題研究、途上国での先端的研究者層育成
産官学共同の海外研究拠点によるポスドク問題の打開
以上の具体的課題としての全地球観測とインドネシア域
「海陸混在惑星」としての地球の気候の特殊性と複雑さ

第214回 「自然環境論セミナー」

題目 前生物的ペプチド合成
講演者 三田 肇 氏(福岡工業大学工学部生命環境科学科)
日時 2009年9月8日(火)16:20−17:20
場所 発達科学部G112号室
要旨 炭素質隕石、月の石や彗星塵などからアミノ酸が検出されており、 アミノ酸は宇宙において普遍的な物質であると考えられる。 生命の誕生には、アミノ酸が縮重合したペプチド、 たんぱく質が生成して、機能性分子が生成しなければならない。 このセミナーでは、生物の誕生前に、ペプチドが どのように生成しえたのかについて研究成果の一部を紹介する。
連絡先:中川 和道 (人間発達環境学研究科)
e-mail: nakagawa@kobe-u.ac.jp

第213回 「自然環境論セミナー」

題目 河川により輸送される懸濁態有機物の特徴と移行挙動
講演者 長尾 誠也 氏 (金沢大学環日本海域環境研究センター低レベル放射能実験施設)
日時 2009年9月2日(水)13:20−14:50
場所 G112号室 (発達科学部G棟1階)
要旨
連絡先:寺門靖高(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: terakado@kobe-u.ac.jp

第212回 「自然環境論セミナー」

題目 酵素反応データベースの開発:酵素蛋白質の配列解析
講演者 長野 希美 氏(産業技術総合研究所 生命情報工学研究センター)
日時 2009年9月1日(火)15:10−16:40
場所 発達科学部G302号室
要旨 本研究では、酵素触媒機構を決定する要因を考慮し、 酵素とリガンドの反応部位に特に注目し、 PDB中に登録されている酵素立体構造データのリガンドのアノテーションから 酵素触媒機構の系統的な分類まで行う酵素触媒機構データベース、 EzCatDB (URL:http://mbs.cbrc.jp/EzCatDB/) を開発している[1,2]。 このデータベースでは、(1)基本反応、(2)リガンドの反応部位の構造、 (3)触媒機構の種類、(4)酵素側の触媒残基、補酵素の種類、 というように階層的に酵素触媒反応を分類している。 更に、この酵素反応データベースに登録されている酵素蛋白質の配列をシードにして、 UniProtと呼ばれる蛋白質の配列データベースを解析した。 その結果、生物種を超えて普遍的に存在する酵素もあれば、 生物種に特異的な酵素も観られることが判明した。 本セミナーでは、こうした酵素蛋白質の解析結果についても紹介する。

参考文献
(1) Nozomi N. (2005) Nucleic Acids Research, 33 Database Issue, D407-D412.
(2) Nozomi Nagano, Tamotsu Noguchi, Yutaka Akiyama (2006) PROTEINS: Structure, Function, and Bioinformatics. 66, 147-159.
連絡先:田中 成典 (発達科学部 自然環境論コース)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第211回 「自然環境論セミナー」

題目 エントロピーによる太陽光下での光合成の最大効率の解析
講演者 矢吹 哲夫 氏(酪農学園大学環境システム学部 生命環境学科)
日時 2009年7月22日 (水)13:20〜14:50
場所 発達科学部B208号室
要旨 1. 量子収量データに基づいた光合成の実際のエネルギー効率の定式化と計算
2. 太陽光のエントロピー計算に基づいた光合成の最大エネルギー効率の定式化と計算

特に2について、表面温度5780Kの太陽から15000万km離れた地球に届いたときの 太陽光のもつエントロピーを定量的に評価することで、 その太陽光で行なわれる光合成の最大効率を評価する理論式を提起し その理論式に基づいた計算結果を紹介する。計算の結果、 1で求めた光合成の実際のエネルギー効率が20%前後であるのに対して 2で求めた最大エネルギー効率は約76%となり、 両者の間には大きな差があることが分かった。
連絡先:蛯名 邦禎 (人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第210回 「自然環境論セミナー」

題目 アミロイド線維形成蛋白質の線維化機構とリン脂質膜との相互作用
講演者 濱田 大三 氏
(神戸大学大学院 医学研究科 生化学・分子生物学講座 構造生物学分野G-COE)
日時 2009年7月22日(水)13:20−14:50
場所 発達科学部B302号室
要旨 生合成される蛋白質は、その機能的状態である天然構造に折れたたまれる性質 を元来持っている。しかしながら、生合成過程においても、蛋白質の折れたたみ が失敗し、ミスフォールド状態が形成されることが、往々にしてある。更に、こ のようなミスフォールド状態が蓄積し、更に高次の会合体を形成することで細胞 毒性を獲得し、アルツハイマー病などのミスフォールディング病を引き起こす。 アミロイド線維、あるいは毒性オリゴマーはこのような高次の会合の一つであ る。また、このような病気との関連性が未だに明らかにされていない蛋白質につ いても、アミロイド線維様構造が形成されることから、このような凝集体形成能 は、ポリペプチド鎖固有の性質であることが示唆される。

本セミナーでは、単一アミロイド線維観察から得られた線維伸長機構の解析、 天然構造の揺らぎとアミロイド線維形成の関係、毒性オリゴマーと細胞膜との相 互作用及びその際に起きる蛋白質/脂質の物性変化に関して、最近、得られた知 見について紹介する。
連絡先:田中 成典 (発達科学部 自然環境論コース)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第209回 「自然環境論セミナー」

題目 光合成の環境応答
講演者 園池 公毅 氏(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻)
日時 2009年7月11日(土)15:30−17:00
場所 発達科学部B208号室
要旨 植物は,移動能力が欠如しているため,周囲の環境の変動を避けることができ ない.低温,高温,乾燥,強光といったさまざまなストレスによって植物の生育 は制限されるが,この中で,光とそれ以外のストレスは極めて強い相乗効果を示 す.例えば,低温感受性植物を低温にさらした場合,完全暗所ではほとんど生育 に影響が見られない温度処理条件でも,直射日光の1/20程度であっても弱い光が あたっている場合は生育が不可逆的に阻害される.このことは,植物の環境スト レス応答を考えるにあたって,葉緑体と光の相互作用が極めて大きな意味を持っ ていることを示している.植物は生存を光のエネルギーに全面的に依存しており, 葉緑体における光合成反応にとって光が不可欠である以上,植物の環境応答を議 論する上で,葉緑体における光合成の阻害のメカニズム,およびそのような阻害 を避けるために葉緑体が発達させた防御システムを理解することを避けて通るこ とができない.

本セミナーにおいては,環境変動による光合成の阻害のメカニズムを中心に光 合成の環境応答を紹介したい.
連絡先:蛯名 邦禎 (人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第208回 「自然環境論セミナー」

題目 水とH_2O: 世界水問題への文化史的アプローチ
講演者 阿部 健一 氏(総合地球環境学研究所)
日時 2009年7月4日(土)16:30−17:30
場所 発達科学部G302号室
要旨 普遍的な物質としてのH_2O.世界のどこにいってもH_2OはH_2O である.一方,世界にはさまざまな「水」がある.地域の歴史の なかで構築された文化的な存在としての水である.この二つを 対比させながら,世界水問題の根底にあるものを議論してみたい.
連絡先:蛯名 邦禎 (人間発達環境学研究科 自然環境論コース)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第207回 「自然環境論セミナー」

題目 外界の条件に応答する分子及びその集合体の応用力学
講演者 花崎 逸雄 氏(神戸大学大学院工学研究科 機械工学専攻)
日時 2009年6月1日(月)17:00−18:30
場所 発達科学部B201号室 (発達科学部B棟2階)
要旨 生体分子及びその集合体の非平衡条件下における挙動や カーボンナノチューブ内における水分子の集団挙動に関する 分子動力学法を用いた力学的視点の研究を紹介し、 マクロな系の力学との対照と類似について考えます。
連絡先:田中 成典 (発達科学部 自然環境論コース)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第206回 「自然環境論セミナー」

題目 原子間相互作用を用いた分子構造揺らぎ解析
講演者 小山 洋平 氏(理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター)
日時 2009年6月16日(火)13:00−14:30
場所 発達科学部 G302号室 (発達科学部G棟3階)
要旨 現在、水分子などの全ての原子を取り入れた全原子生体分子シミュレーションの 標準的な時間スケールはナノ秒オーダーであるが、 並列計算機や分子動力学専用計算機の高度化に伴い、 今後10年ほどでタンパク質やRNAのフォールディング、アロステリック制御、 触媒反応、リガンド結合などが起こる マイクロからミリ秒オーダーのシミュレーションが可能になると考えられている。 一方で、これらのシミュレーションから得られる原子座標の時系列データから 分子機能やその制御メカニズムを理解するためには体系的なデータ解析が必須である。 フォールディングは二次構造や三次構造形成など、 特異的な原子間相互作用の生成消滅過程と考えることができる。 アロステリック制御、触媒反応、リガンド結合のような分子認識も 特異的な原子間相互作用の生成消滅過程とそれに伴う構造変化と考えることができる。 また、分子構造の生じやすさを決定する構造のポテンシャルエネルギーは 個々の原子間相互作用のポテンシャルエネルギーの総和であらわされる。 以上から、原子間相互作用(のポテンシャルエネルギー)を用いたデータ解析により 分子機能やその制御メカニズムが理解できないかと考えている。 発表では原子間相互作用を用いた分子構造揺らぎ解析と その根拠となる統計理論について紹介する。
連絡先:田中 成典 (発達科学部 自然環境論コース)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第205回 「自然環境論セミナー」

題目 環境問題の本質から考える科学コミュニケーション
講演者 池辺 靖 氏(日本科学未来館 科学コミュニケーション推進室)
日時 2009年2月27日(金)17:00−18:30
場所 発達科学部 A325号室 (発達科学部A棟3階)
要旨 環境問題は社会の最大の関心事ですが、一般市民は、 マスコミによってもたらされるさまざまな情報の洪水におぼれてしまい、 様々なレベルで皆、悩んでいると思われます。 そのような中、人間が直面する環境問題の科学的本質を明確にうちだし、 その理解というものを、"科学の道具"として社会の中で市民が共通に持ち、 未来社会のあり方を議論するときの共通に基盤にすべきと考えます。 そのような意味での環境問題の本質とはどこにあるのかを議論したいと思います。
連絡先:伊藤 真之 (人間発達環境学研究科)
e-mail: mitoh@kobe-u.ac.jp

第204回 「自然環境論セミナー」

題目 いま話題の“緑のクラゲ”について
講演者 安達 卓 氏 (神戸大学理学研究科)
日時 2009年1月14日(水)16:00−17:00
場所 A325号室 (発達科学部A棟3階)
要旨

第203回 「自然環境論セミナー」

題目 対称性の破れ —南部、益川、小林氏の2008年度ノーベル賞受賞にあたって—
坂田学派の『模型』と丹生のX粒子 —小林・益川理論のゆりかご—
講演者 森井 俊行 氏 (神戸大学人間発達環境学研究科 名誉教授)
青木 茂樹 氏 (神戸大学人間発達環境学研究科)
日時 2008年12月17日(水)15:10−16:40
場所 A325号室 (発達科学部A棟3階)
要旨

第202回 「自然環境論セミナー」

題目 コヒーシン切断によるAurora kinaseの動原体局在喪失
講演者 丑丸 敬史 氏(静岡大学理学部生物科学科)
日時 2008年12月11日(木)11:00−12:00
場所 発達科学部 B203号室 (発達科学部B棟2階)
要旨 S期で複製された染色体をM期で均等に分配することは細胞分裂における重要な ステップであり、染色体が均等に分配されないと細胞の死滅や癌化を引き起こ す。分裂中期において中心体から伸長してきた微小管が染色体動原体と接着し、 染色体が中心体の方向へ引っ張られることで染色体の分配が行われる。微小管と 動原体の接着はランダムに起きるため、動原体と微小管の正しい結合を確立する ためには、誤った接着を修正しなければならない。この修正に関与しているのが プロテインキナーゼAurora Bである。姉妹染色体が両極の中心体から引かれた場 合に発生する姉妹動原体間の張力が、正しい接着のシグナルになっていると考え られている。つまり、コヒーシンによる姉妹染色体間の接着が染色体の均等分配 を保証している。一方で、Aurora Bは分裂後期になると動原体から微小管中央領 域(ミッドゾーン)へ移動し、その後の細胞質分離を制御していることが示唆さ れているが、この局在移動の分子機構の詳細は不明である。

当研究室では、分裂中期において人工的に(強制的に)コヒーシンを除去し姉 妹動原体間に張力が発生しなくさせた細胞が分裂後期に進行することを発見し た。その際、Aurora Bの動原体局在がコヒーシン除去により喪失した。この機構 は、通常起こる分裂後期におけるAurora Bの動原体から微小管中央領域(ミッド ゾーン)への移動に貢献していると考えられる。本セミナーでは、この機構につ いてのその後の解析も含めて紹介する。
連絡先:安達 卓 (理学研究科/発達科学部)
e-mail: yamadach@kobe-u.ac.jp

第201回 「自然環境論セミナー」

題目 化学の冒険:生命の起源への挑戦
講演者 川村 邦男 氏(大阪府立大学大学院工学研究科応用化学)
日時 2008年12月10日(水)15:00−17:00
場所 発達科学部 A325号室 (発達科学部A棟3階)
要旨 20世紀は地理的な冒険・探検が最終章に達した時代であった. 1911年にアムンセン隊が南極点に到達し, 1953年にヒラリーとテンジンはエベレストに初登頂した. 1969年には人類は月面着陸に成功し, 近い将来に火星に人を送り込もうとしている. サイエンスと冒険・探検とは様々な面で深いつながりがある. サイエンスは,誰も足を踏み入れていない未知の自然を探る冒険である. 時代とともにサイエンスは組織化・巨大化し, 個人の冒険精神や創造性を発揮することが難しくなった. しかし,生命起源の問題には独りで取り組めるサイエンスの最前線がある. 冒険という視点でサイエンスを眺めつつ,生命起源の研究について考える.
連絡先:中川 和道 (人間発達環境学研究科)
e-mail: nakagawa@kobe-u.ac.jp

第200回 「自然環境論セミナー」

題目 オサムシの進化生態学:形態,行動からゲノムへ
講演者 高見 泰興 氏(神戸大学 人間発達環境学研究科)
日時 2008年12月5日(金)13:20−15:00
場所 発達科学部 G302号室(仮) (発達科学部G棟3階)
要旨 オオオサムシ類は日本列島に固有で,多くの種に分化している飛べない甲虫である. 特に交尾器のかたちが著しく多様化しており,これが種の多様性をもたらしている. 交尾器形態の多様化は,繁殖をめぐる個体間の競争(性淘汰)の中で,個体がとり 得るさまざまな戦略と関連していることを解説する.加えて,交尾器形態の多様化 にかかわる遺伝的基盤の解明について,研究計画と進行状況を紹介する
連絡先:丑丸 敦史 (人間発達環境学研究科)
e-mail: ushimaru@kobe-u.ac.jp

第199回 「自然環境論セミナー」

題目 Molecular dynamic simulations of Nuclear Receptors: Pushing the boarders of a molecular dynamics simulation
講演者 Sofia Burendahl 氏 (Karolinska Institutet)
日時 2008年11月14日(金)13:20−14:50
場所 発達科学部 A325号室 (発達科学部A棟3階)
要旨 Molecular Dynamic (MD) simulations have been successfully used to study molecular events like structural stability and molecular interaction but many of the molecular mechanism which takes place in the cell are acting on a timescale beyond the capacity of a MD simulation. Such an event is the ligand unbinding from the Nuclear Receptors (NR). The NRs functions as a transcription regulator and can be activated upon ligand binding. Consequently ligand binding and unbinding constitutes a fundamental process in the regulation of genes. Even though both biochemical and structural data of NR are available, the actual mechanism of the ligand binding/unbinding remains elusive. We have performed ligand unbinding studies on NRs with modified the MD methods (1) Random Acceleration MD (RAMD) (2) and Steered MD (SMD) (3) which speed up the timescale. The results show that agonist ligand unbinding can take place from the receptor without causing major conformational changes in the receptor, while antagonist unbinding cannot. Further on ligand selectivity and method sampling were discussed. Allosteric properties have previously been studied with covariance correlation analysis and normal mode analysis. However, these methods requires long MD simulation trajectory to detect the signal. Recently publication presented the Anisotropic Thermal Diffusion method (4) which increases the signal-noise ratio within the protein and thus makes it possible to detect an allosteric signal. The method was used to study allosteric properties in the NR Liver X Receptor (LXR) and succeeded to map out a pathway from the AF-2 region and the ligand. The signaling pathway detected is both intra- and intermolecular and is transmitted through amino acids side chains and the backbone. Although promising results were achieved, the method contains some drawbacks which will also be discussed. 1. Carlsson, P., S. Burendahl and L. Nilsson. (2006) Unbinding of retinoic acid from the retinoic acid receptor by random expulsion molecular dynamics. Biophys J 91, 3151-61. 2. Ludemann, S. K., V. Lounnas and R. C. Wade. (2000) How do substrates enter and products exit the buried active site of cytochrome P450cam? 1. Random expulsion molecular dynamics investigation of ligand access channels and mechanisms. Journal of Molecular Biology 303, 797-811. 3. Isralewitz, B., M. Gao and K. Schulten. (2001) Steered molecular dynamics and mechanical functions of proteins. Curr Opin Struct Biol 11, 224-30. 4. Ota, N. and D. A. Agard. (2005) Intramolecular signaling pathways revealed by modeling anisotropic thermal diffusion. J Mol Biol 351, 345-54.
連絡先:田中 茂典 (人間発達環境学研究科)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第198回 「自然環境論セミナー」

題目 生体内D-アミノ酸の存在と生理的意義
講演者 藤井 紀子 氏(京都大学原子炉実験所 教授)
日時 2008年11月12日(水)15:00−17:00
場所 発達科学部 A325号室 (発達科学部A棟3階)
要旨 「生体内のアミノ酸はすべて、L-体から構成される」と考えられてきました。 しかし、近年、種々のほ乳類の組織でD-アミノ酸が発見され、 生体内で様々な生理機能を担っていることが明らかになってきました。 すなわち、遊離型のD-アミノ酸は神経回路網の活動調節、ホルモンの合成、 分泌の調節などを行うこと、タンパク質中のD-アミノ酸は白内障や アルツハイマー病などの加齢疾患と関連することが続々と報告されています。 本講義ではここ十数年でめざましい進歩を遂げたD-アミノ酸研究の 最先端の成果について紹介します。
連絡先:中川 和道 (人間発達環境学研究科)
e-mail: nakagawa@kobe-u.ac.jp

第197回 「自然環境論セミナー」

題目 The bacterial translation initiation factor IF2
- a target candidate for species specific drug design
講演者 Professor Hans Uffe Sperling-Petersen
(Aarhus University, Denmark デンマーク、オーフス大学)
日時 2008年11月11日(火)15:10−16:10
場所 発達科学部 A325号室 (発達科学部A棟3階)
要旨 For more than 50 years we have known antibiotics which target macromolecules in the elongation step of the translation machinery, in particular aminoglycosides. The initiation step however seems much more reluctant in providing us with efficient and specific inhibition targets for bacterial infections of humans.
It was recently discovered that two of the bacterial translation initiation factors, IF1 and IF2, are universal proteins found in homologous forms in all living organisms.
The presentation will concentrate on the bacterial IF2 (eIF5B in eukaryotes) and demonstrate characteristic "constant" and variable" regions in this protein. We have studied this factor in several bacteria and alignments of these in combination with databank sequence data of bIF2 from archae and eukaryotes reveals the C-terminal part to be conserved between different species while the N-terminal part is characteristic by its variability in both length and composition.
It is suggested that the species-specific N-terminal of IF2 may be useful as a target for species-specific selective drugs acting on the protein or the nucleic acid level.
In addition aspects of raising antibodies against the translation initiation factors, IF1 and IF2 will be discussed and results from immunochemical studies of these proteins will be presented.


なお本セミナーは、学術Weeks2008の一環として行われます。 学術Weeks2008については、 http://www.h.kobe-u.ac.jp/2144 をご参照ください。
連絡先:梅村 界渡(人間発達環境学研究科 蛯名研究室院生)
e-mail: 051d842d@stu.kobe-u.ac.jp

第196回 「自然環境論セミナー」

題目 ショウジョウバエの持つタイマーの分子機構
— 蛹になるタイミングをどのようにして決めるのか —
講演者 上田 均 氏(岡山大学大学院自然科学研究科)
日時 2008年11月20日(火)14:00−15:00
場所 発達科学部 F253号室 (中会議室D)
要旨 昆虫の中でも高等なグループは、幼虫から成虫へ成長する途上で、 摂食や移動などの活動を停止した「蛹」という段階を設けて体の再編成を行い、 この現象を完全変態と呼んでいます。 完全変態の進行は、ステロイドホルモンの支配を受けて、 タイマーで制御されたような正確なタイミングを見せます。 上田さんはショウジョウバエを用いて、このタイミング決定の 分子メカニズムを研究され、重要な発見をされています(詳細はポスター参照)。 多数の方々のご来聴をお待ちしております。

第195回 「自然環境論セミナー」

題目 河川と海流を介した内陸と外洋の生態系の結びつき−中層水鉄仮説
講演者 中塚 武 氏(北海道大学低温科学研究所)
日時 2008年9月11日(木)15:10−16:10
場所 発達科学部 G112号室 (G棟1階)
要旨 環境に対する意識の高まりの中で、「魚付林」と言う概念が、 一般的に用いられるようになってきています。渓流や湖沼に住む魚の成育には、 隣接する森の存在が重要であると言うのが、魚付林の本来の考え方ですが、近年、 「森林から流出する鉄などの栄養物質が沿岸域の生物生産を高めるのに役立っている」 と言うように、魚付林の概念が拡張され、そうした考え方に基づく、森・里・海 の連携研究が日本中で進められています。本セミナーでは、その魚付林のスケールを 一気に拡大して、「日本の水産業にとって最も重要な“親潮域”の生物生産が、 アムール川流域の広大な湿地から流出する大量の溶存鉄によって支えられている」、 と言う最新のプロジェクト(アムールオホーツクプロジェクト)の研究成果について、 ご紹介します。アムール川から流出した鉄は、海氷生産によって駆動される オホーツク海の中層循環に取り込まれ、北太平洋の広域に運び出されています。 その水文学的、海洋学的メカニズムを、詳しくご説明すると共に、 地球温暖化などの環境変化に晒されている、この内陸と外洋の生態系の結びつきの 「過去・現在・未来」について、展望したいと思います。

第194回 「自然環境論セミナー」

題目 GADV仮説—生命起源を問い直す
講演者 池原 健二 氏 (奈良佐保短期大学)
日時 2008年9月9日(火)15:10−16:40
場所 G302号室(発達科学部)
要旨

第193回 「自然環境論セミナー」

題目 Gas Hydrateの科学と貯蔵材料としての期待
講演者 大垣 一成 氏
(大阪大学大学院 基礎工学研究科)
日時 2008年8月23日(土)15:30−17:00
場所 発達科学部 A325号室 (A棟3階)
要旨 現在までGas Hydrateを利用した地球温暖化対策やエネルギー資源開発 に関連する技術開発を手掛けてきた。Gas Hydrateの性質や機能を明らか にするとともに、最近の話題(天然ガス輸送、水素貯蔵・輸送、ラジカル 種貯蔵)にHydrate Cageを利用する試みについて紹介する。
連絡先:蛯名 邦禎 (人間発達環境学研究科)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第192回 「自然環境論セミナー」

題目 構造情報を用いたタンパク質相互作用解析
〜タンパク質間ネットワーク予測と機能推定をめざして〜
講演者 塚本 弘毅 氏
(産業技術総合研究所 生命情報工学研究センター)
日時 2008年8月29日(金)15:10−16:40
場所 発達科学部 G302号室 (G棟3階)
要旨 タンパク質は細胞内で"馬車馬"と例えられるほどに幅広い仕事をこなしている。 タンパク質は、酵素反応を行ったり、物質を輸送したり、 ウイルス粒子の外殻を構成したり、膜を横切り各種チャネルを形成したり、 DNAからRNAへの情報を伝達するなど、本当に様々な役割を担っている。 タンパク質の担う役割の重要性が認められているからこそ、 これまで多くの人々が多大な努力をタンパク質の機能の解明に費やしてきたのだと思う。

タンパク質機能を解明するための主な戦略は、結合する相手を識別することである。 これは、細胞の中で行われる膨大な数の生命維持反応のほとんどを タンパク質相互作用が担っているためである。 今後、タンパク質相互作用の複雑なネットワークが明らかになることで、 細胞間のコミュニケーションや相互作用ネットワーク間の結合性、 および、タンパク質相互作用の背後にあるダイナミックな法則を 互いに関連づけることが可能になると期待されている。これらの予測は、 反応経路についての知見や、そのトポロジー、経路長やその動態、 薬剤の副作用の予測に有用な情報をもたらすかも知れず、 分子・細胞生物学にとっても、創薬にとっても重要な試みである。

タンパク質の結合する相手を識別するためには、 二つのタンパク質間の相互作用を定量的に評価する タンパク質相互作用親和性の問題を解けばよい。 この問題に対するアプローチは様々だが、 我々は構造既知のタンパク質同士の相互作用を解析し、 その親和性を予測するシステムThe Affinity Evaluation and Prediction system (AEP) を開発した。AEPは、いくつかの統計処理を組み合わせたフィルタを用いて 相互作用評価を実行し、多数の演算コアを持つ大規模計算機上で動作し、 タンパク質間相互作用を高速かつ大量に評価することができる。 例えば、CBRC BlueProtein (IBM BlueGene / 8192 cores, 2TB memory)では、 一日に10000ペア以上の評価を行うことが可能である。この高速性能は、 研究グループの一人である蓬来らが開発した高速畳み込み演算ライブラリ CONV3Dによるものである。また、AEPの予測性能は、 ROC解析により有病率5%の時に感度65.0%、特異度は80.8%であり、 正診率は80.0%であった。講演では、AEPによって得られたタンパク質ペアの特性や、 AEPの予測システムとしての性能についても触れながら、AEPの独自の統計処理、 およびシステム構成からタンパク質相互作用解析の実際について述べる予定である。
連絡先:田中成典 (発達科学部 自然環境論コース)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第191回 「自然環境論セミナー」

題目 電子伝達蛋白質の立体構造・配列に基づく系統的な解析・分類
講演者 長野 希美 氏
(産業技術総合研究所 生命情報工学研究センター)
日時 2008年8月26日(火)15:10−16:40
場所 発達科学部 G302号室 (G棟3階)
要旨 酸化還元酵素は、電子伝達、ヒドリド転移反応、酸素化反応など、 様々な酸化還元反応を担う酵素である。特に、電子伝達反応を担う 酸化還元酵素の場合、フェレドキシンやシトクロム系蛋白質など、 電子伝達蛋白質を基質・産物として、相互作用し、電子伝達反応を 担っている。こうした電子伝達蛋白質には、活性中心に電子の授受 を行う補酵素やアミノ酸残基が存在している。フェレドキシンの場 合、鉄硫黄系の補酵素を結合し、所謂、シトクロム系の蛋白質は、 ヘムを結合する。フェレドキシンの場合、結合する鉄硫黄クラスタ ーの種類により、様々なスーパーファミリー、フォールドに属して いる。シトクロム系の蛋白質は、現在のように立体構造データが解 かれる以前に、結合しているヘム化合物の種類や分光学的な手法で 分類がなされており、シトクロムa、シトクロムb、シトクロムc、 シトクロムdというように、大別されていた。しかしながら、近年、 こうした蛋白質の立体構造が解かれると共に、同じシトクロム群の 蛋白質でも、様々なスーパーファミリー、フォールドに属しており、 ドメイン構成が異なることも分かってきた。ただし、国内外の酵素 関連データベースでも、酸化還元酵素の基質・産物となる電子伝達 蛋白質の種類などが詳細にアノテーションされていないケースも多々 あることが分かっている。我々は、フェレドキシンやシトクロムc などの主要な電子伝達蛋白質を立体構造や配列などを基にクラスタリング を行い、機能との関係などを解析し、分類を進めており、 本講演ではその内容を紹介する。
連絡先:田中成典 (発達科学部 自然環境論コース)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第190回 「自然環境論セミナー」

題目 同時計測の考え方を用いた動体検知カメラ:生態学への応用の試み
講演者 絹川 亨 氏 (神戸大学 大学教育推進機構)
日時 2008年08月04日(土) 13:20-14:50
場所 A325号室(発達科学部)
要旨

第189回 「自然環境論セミナー」

題目 環境トレーサビリティー診断マップ計画
講演者 中野 孝教 氏 (総合地球環境学研究所)
日時 2008年07月19日(土) 17:30-18:30
場所 A325号室(発達科学部)
要旨

第188回 「自然環境論セミナー」

題目 デンマークのサイエンスカフェ
講演者 クリスチャン・ヴィトフェルト・ニールセン 氏 (デンマーク・オーフス大学理学部科学論学科)
日時 2008年6月3日 (火) 15:10-16:30
場所 G302号室(発達科学部)
要旨

第187回 「自然環境論セミナー」

題目 渇水への制度的対応 〜カリフォルニア渇水銀行を事例に〜
講演者 遠藤 崇浩 氏 (総合地球環境学研究所)
日時 2008年6月7日 (土) 14:00〜15:00
場所 A325号室(発達科学部)
要旨

第186回 「自然環境論セミナー」

題目 細胞間情報伝達を介した腸管細胞の機能分化
講演者 中越 英樹 氏 (岡山大学大学院自然科学研究科)
日時 2008年5月13日(火)16:00−17:00
場所 G112号室(発達科学部)
要旨 多細胞動物のさまざまな組織は、色々な種類の細胞から成り立っており、それ ぞれの細胞が異なる機能を担うことによって、組織や器官が総体として複雑な機 能を果たせるようになっています。 未分化な細胞が分化してゆく初発段階で、各細胞種の運命がいかにして導かれ るのかについては、多くの研究がされてきましたが、運命決定後に機能性細胞へ 成熟する過程の制御は、あまり調べられていません。 中越さんは、ショウジョウバエの腸を材料としてこの問題に取り組まれ、複数 種のシグナルの相互作用が必要であることを明らかにされています。また腸だけ ではなく、様々な器官の研究を広く手掛けられており、豊富なご経験に基づいた 重厚なお話が聞けることと思います。多数のご参加をお待ちしています。
連絡先:安達 卓(内線:7743)

第185回 「自然環境論セミナー」

題目 野生ゴリラの社会生態研究における地理的情報システムと分子生態学的アプローチ
講演者 松原 幹 氏 (京都大学霊長類研究所)
日時 2008年4月2日(水)14:00−15:00
場所 B208号室(発達科学部)
要旨

第184回 「自然環境論セミナー」

題目 都市環境における分子生態学:モンシロチョウ類を用いたケーススタディ
講演者 高見 泰興 氏 (京都大学理学部)
日時 2008年4月2日(水)10:00−11:00
場所 B208号室(発達科学部)
要旨

第183回 「自然環境論セミナー」

題目 脳の比較生物学−ネズミの脳、サルの脳、そこから分かるヒトの脳
講演者 安本 史恵 氏 (独立行政法人国立病院機構東京医療センター)
日時 2008年4月1日(火)14:00−15:00
場所 B208号室(発達科学部)
要旨

第182回 「自然環境論セミナー」

題目 環境中における化学物質の毒性研究 ー保全生態学と発生生物学の融合を目指してー
講演者 高永 博美 氏 (理化学研究所)
日時 2008年4月1日(火)10:00−11:00
場所 B208号室(発達科学部)
要旨

第181回 「自然環境論セミナー」

題目 ヘパラン硫酸プロテオグリカンによる発生現象の制御--- モルフォゲン濃度勾配と幹細胞ニッチについて
講演者 中藤 博志 氏 (ミネソタ大学・発生生物学センター)
日時 2008年3月26日(水)15:10−16:10
場所 G302号室(発達科学部)
要旨 細胞の外からやってくる各種のホルモンやタンパク質性リガンドは、 細胞膜の表面に存在している受容体によって単純に捕捉されるのではなく、 その前に細胞外マトリックスにあるヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG) によって選別されます。つまりHSPGは細胞に必要な微小環境を準備します。 それらが器官の形態形成に必要なことが知られて来ましたが、さらに最近、 幹細胞維持においても重要なことが、演者によって明らかにされています。 中藤さんは、HSPG研究に遺伝学的手法を導入されている第一人者ですが、 アメリカの大学でテニュア(終身雇用ポスト)を取得された方でもあり、 アメリカでのサバイバルや研究室運営など!色々な興味深いお話も伺える ことと思います。多数のご参加をお待ちしています。
連絡先:安達 卓(内線:7743)

第180回 「自然環境論セミナー」

題目 ショウジョウバエ消化管の左右非対称な形態形成における Eカドヘリンの機能に関する研究
講演者 谷口 喜一郎 氏 (東京理科大学大学院基礎工学研究科)
日時 2008年2月29日(金)14:00−15:00
場所 発達科学部 G302号室
要旨 心臓が左にあって盲腸が右にあるように、多くの多細胞動物には、 左右対称性と同時に非対称性も存在し、個体ごとに必ず再現します。 しかし興味深いことに、左右性が完全に逆転した異常が稀に発見され、 その発症原因の解析は、左右非対称性形成のしくみを解き明かします。 ヒトでは、繊毛運動のひき起こす水流が臓器の左右局在へ帰結しますが、 多細胞動物に普遍的な左右性形成の原理はまだ知られません。演者の 谷口さんは、ショウジョウバエを使ってその問題に取組む若手研究者 です。多数のご参加をお待ちしています。
連絡先:安達 卓(内線:7743)

第179回 「自然環境論セミナー」

題目 大気中ラドン濃度の上昇と兵庫県南部地震との関連: 数理モデルとの対応の成立」
講演者 安岡 由美 氏 (神戸薬科大学 )
日時 2007年12月19日(金)15:00−17:00
場所 B104号室 (発達科学部)
要旨

第178回 「自然環境論セミナー」

題目 海洋環境変動 −過去・現在・未来−
講演者 川幡 穂高 氏
(東京大学海洋研究所)
日時 2007年9月28日(金)13:30−14:30
場所 発達科学部 (部屋は未定)
要旨 地球の気候が温暖化している可能性が高い.気温上昇の原因は 二酸化炭素などによる温室効果で,大気中の二酸化炭素濃度は上昇し続けていて, 2100年には約2℃上昇すると予測されている. 気候変動は自然・社会経済に 多大な影響を及ぼすだろう.例えば,陸上では,全森林面積の1/3で 何らかの変化があり,食料生産は増産地域・減産地域が生じる. このような問題を回避するため,地球温暖化を防ぐ手だてを講じる必要が あるとのことで,1997年12月に,国連気候変動枠組み条約第3回締約国会議 (COP3)京都会議で京都議定書が採 択された.これは,先進国全体で, 温室効果ガス6種類の排出量を,1990年レベルから平均5.2%削減するという 目標を決めている.さて,1kcal得るのに排出される二酸化炭素の量は, 石炭→石油→天然ガスの順に小さくなっていく.そこで,先進各国は, 化石燃料間の二酸化炭素排出特性を考慮して,天然ガスの割合を増加させている. 一方,究極埋蔵量は,この逆の順になっている.石油の可採年数は 40年位の状態が続いてきたが,現在のところ油田地帯として有望な所は ほとんど調査されてしまっている. このため,大規模な油田が将来発見される確率は減っている.これらは, 「容量の限界」と言葉で端的に表わされるが,21世紀も化石燃料に頼った 社会システムを継続する限り,「温暖化の環境問題」と「資源の問題」の 両方の問題が密接にリンクしながら進行していく時代と考えられる.
連絡先:寺門 靖高 (発達科学部 自然環境論コース)
e-mail: terakado@kobe-u.ac.jp

第177回 「自然環境論セミナー」

題目 遅延放射線生物影響と遅発性長寿命ラジカル
講演者 熊谷 純 氏
(名古屋大学 工学研究科 化学・生物工学専攻)
日時 2007年9月19日(金)16:00−17:30
場所 発達科学部B103号室(B棟1階)
要旨 近年の放射線生物学において、バイスタンダー効果や遺伝的不安定性など、 照射後長時間経過した後の放射線影響が注目されている。 これらの現象は、照射後短期間の細胞内酸化ストレスの増加との関連が 多く指摘されているものの、時系列でみると その両者を関連づけることは難しい。

最近、当研究室で照射培養細胞中で発見した遅発性長寿命ラジカルが その溝を埋める可能性がでてきた。 このラジカルの観測・生成機構・影響仮説について紹介する。
連絡先:中川 和道 (発達科学部 自然環境論コース)
e-mail: nakagawa@kobe-u.ac.jp

第176回 「自然環境論セミナー」

題目 オゾン層破壊の科学の教訓
講演者 今村 隆史 氏(国立環境研究所)
日時 2007年9月12日(水)16:00−17:30
場所 発達科学部 B201号室 (B棟2階)
要旨 ご存知の方も多いと思いますが,フロンの製造中止,使用中止をへて, フロンの大気濃度は徐々に下降しています.ところがオゾン層破壊は いっこうに止まらず,南極オゾンホールは過去2番目に大きなサイズに 成長してしまいました.

このセミナーでは,人類の英知をかけて取り組んだオゾン層破壊防止 の活動から何を学び,何を受け継いでいくべきかを考えます.
連絡先:中川 和道 (発達科学部 自然環境論コース)
e-mail: nakagawa@kobe-u.ac.jp

第175回 「自然環境論セミナー」

題目 地球環境と地下水
講演者 谷口 真人 氏(総合地球環境学研究所)
日時 2007年9月3日(月)13:00−14:30
場所 発達科学部 F252号室 (F棟2階)
要旨 これまでの“地球環境問題”は、地球温暖化や海洋汚染、生物多様性の減少など、 人の眼に見える“地表より上の問題”を主に対象としてきました。 しかし、地下水資源の減少、地下水汚染、地下水の過剰揚水による地盤沈下や 地下熱汚染などの“大地の下の地球環境問題”は、 人間活動の拡大によって普遍的な現象として世界各地で発生しています。 陸域から海域への直接地下水流出は沿岸域の生態系に大きな影響を 与えているといわれています。また温暖化・都市化による地下温度の上昇は、 土壌微生物の活動を活発化させ、地下水の水質変化に寄与するとも言われています。 これら地下水と地球環境との関係についてお話します。 また、アジアの諸都市で時間遅れを伴って普遍的に発生している“地下環境問題”を、 都市の発達段階との関係から明らかにしていく 「地球研プロジェクト:都市の地下環境に残る人間活動の影響」 についても紹介します。地球研プロジェクトでは、帳尻あわせとして疎んじられ、 有効に利用されていない地下環境の現状を、 人間と自然との相互作用“環”を解きほぐすことによって明らかにしていきます。
連絡先:蛯名 邦禎 (発達科学部 自然環境論コース)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第174回 「自然環境論セミナー」

題目 NOxの一つ一酸化窒素を変換する酵素チトクロームP450norの反応機構解析と その酵素機能の応用について
講演者 塚本 弘毅 氏 (産業技術総合研究所 生命情報工学研究センター)
日時 2007年8月31日(水)15:10-16:40
場所 発達科学部 G302号室 (G棟3階)
要旨 カビの一種Fusarium oxysporumから生成されたヘム酵素チトクロームP450nor(P450nor)は、 一般的なチトクロームP450(P450)とは異なり、一酸化窒素を亜酸化窒素へと 変換する反応を触媒する。その触媒反応のターンオーバー数は、1秒間に1200回以上と、一般的なP450が10回程度であることに比べて大変高速である。この様にユニークな反応性を持つ為、その反応機構について実験による 様々なアプローチが行われた。しかしながら、P450norの反応中間体は、ライフタイムが非常に短く、電子構造もESRなどではサイレントである為、実験アプローチによる 反応中間体の詳細な構造を明らかにするのは難しかった。そこで、本研究では量子化学計算を用いて、このユニークな反応性をもつP450norの反応機構の解析を行った。更に、上記反応機構で得た知見を生かし、 P450norが触媒する一酸化窒素が大気汚染物質NOxの一つであることに着目して、P450norと同等の機能を持ち、大気浄化を目的とした人工酵素が作れないかと 模索中である。セミナーでは、P450norの反応機構解析と共に、 人工酵素の設計の模索中に開発した“ヘムビーズ”についてもお話しする予定である。
世話人:田中成典 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第173回 「自然環境論セミナー」

題目 酵素触媒反応の分類法の開発
講演者 長野 希美 氏 (産業技術総合研究所 生命情報工学研究センター)
日時 2007年8月28日(火)15:10-16:40
場所 発達科学部 G112号室 (G棟1階)
要旨 酵素の立体構造、リガンドの化学構造、酵素とリガンドの相互作用など 様々な角度から酵素の触媒機構を詳細に理解することで、 酵素に特有な阻害剤・活性化剤などをデザインすることが可能になると考えられる。 しかしながら、酵素にまつわる情報学はまだ充分に整理されているとは言えない。 従来の酵素の分類であるEC番号は、 主に基質・産物の化学構造や触媒反応に関わる補酵素などに基づいて分類が行われており、 触媒機構において重要であるタンパク質の配列情報や立体構造に関する情報が 全く考慮されていない。 こうした問題点を踏まえ、触媒機構を決定する要因や、酵素とリガンドの反応部位に特に注目し、 酵素触媒機構の系統的な分類を行う酵素触媒機構データベース: EzCatDB((URL:http://mbs.cbrc.jp/EzCatDB/))を開発している[参考文献(1)、(2)]。 このデータベースでは、(1)基本反応、(2)リガンド反応部位、(3)触媒機構、 (4)酵素側の触媒残基、(5)補酵素の種類、 というように階層的に酵素触媒機構を分類している。
参考文献
1. Nozomi Nagano (2005) Nucleic Acids Research, 33 Database Issue, D407-D412
2. Nozomi Nagano, Tamotsu Noguchi, Yutaka Akiyama (2006) PROTEINS: Structure, Function, and Bioinformatics. 66, 147-159.
世話人:田中成典 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第172回 「自然環境論セミナー」

題目 太陽光が育む地球環境~太陽紫外線を知ろう!~
講演者 佐々木 政子 氏(東海大学 総合科学研究所 教授)
日時 2007年8月8日(水) 16:30-17:45
場所 発達科学部 F251教室
要旨 佐々木先生は太陽紫外線が生物に対して与える影響について研究して来られました.発達科学部2,3,4年生の集中講義に来ていただいたこの機会に,紫外線環境科学をめぐるさまざまな話題についてご講演いただきます.
連絡先:中川和道(発達科学部 自然環境論コース)
e-mail: nakagawa@kobe-u.ac.jp

第171回 「自然環境論セミナー」

題目 クモの造網戦略 ―どんな網をどこに張るのか?
講演者 中田 兼介 氏(東京経済大学)
日時 2007年6月26日(火)14:00-16:00
場所 発達科学部 G112号室 (G棟1階)
要旨 クモの円網は採餌のためのデバイスであり、特にその形態が効率良く餌が採れるよう デザインされていると考えられている垂直円網は、コガネグモ科の適応放散における key innovationである。円網は定期的に張り替えられるが、その際にクモは、自らが 置かれた外的内的条件に応じて、可塑的に造網行動を変える事が知られている。この ような点について、円網の上下非対称性、造網場所選択、採餌経験が網形態に及ぼす 影響、造網行動に現われる対捕食者戦略、などのトピックスを通じて紹介する。 また、円網のもう一つの機能であるところの、 体外に拡がる感覚器という側面についても論じる。
連絡先:丑丸敦史 (大学院人間発達環境学研究科 人間環境学専攻)
e-mail:ushimaru@kobe-u.ac.jp

第170回 「自然環境論セミナー」

題目 なぜ生命科学研究に大規模計算が必要か??
講演者 長嶋 雲兵 氏(産業技術総合研究所 計算科学研究部門)
日時 2007年6月21日(木)15:20-16:50
場所 発達科学部 G302号室 (G棟3階)
要旨 新規物質設計・製造の高度化・低コスト化技法,また新薬の安価・高速・安全な開発技法, および無駄な化合物の合成や動物実験などをおこなわない環境負荷の少ない開発技法開発の 強い要請を背景に,分子シミュレーションへのニーズが非常に高まっている. 特に生命科学の対象である生体分子は,ミクロな観点からは大きすぎ, マクロな観点からは小さすぎる.そこで計算機を用いた分子シミュレーションに 大きな期待が寄せられているが,計算機を用いるとはいえ,計算機の性能が十分でないため, 自ずと系をモデル化し分子シミュレーションで取り扱い可能なサイズに系のサイズの減少を しなければならない.
本講演では,タンパク質の内部温度と外部温度と薬理活性の問題をとりあげ, 系のサイズの減少がどのような効果を与えるのかを示し, 大規模計算を実現するにはどのような可能性があるのかを解説する.
世話人:田中成典 (大学院人間発達環境学研究科 人間環境学専攻)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第169回 「自然環境論セミナー」

題目 コンピュータシミュレーションで見る生体分子モーターの作動原理
講演者 高田 彰二 氏(京都大学大学院理学研究科 生物物理学教室)
日時 2007年7月10日(火)13:20-14:50
場所 発達科学部 G112号室 (G棟1階)
要旨 生体の中には、ATPを加水分解する際に放出される自由エネルギーを利用して、 力学的運動を生み出すことのできる分子集合体=生体分子モーターが、実に多種 類存在します。化学エネルギーから力学エネルギーへの変換の鍵をにぎるのは、 生体分子(蛋白質)の構造の柔らかさ、と構造変化能にあります。すなわち、 化学エネルギー→分子構造変化→力学運動という流れです。 セミナーでは、分子構造に立脚したコンピュータシミュレーションによって、 この分子モーターの作動原理を調べる研究について紹介します。
連絡先: 蛯名邦禎 (発達科学部 環境基礎論講座)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第168回 「自然環境論セミナー」

題目 生体触媒を用いた物質変換、特に光学活性体の調製法開発について
講演者 加藤 太一郎 氏(兵庫県立大学 大学院工学研究科 物質系工学専攻)
日時 2007年5月18日(金)15時10分-16時40分
場所 発達科学部 G302号室 (G棟3階)
要旨 現在世界の人々の関心はいやおうなしに「環境」に向けられており、 すべての産業はグリーンケミストリーという合言葉のもと、 環境に優しい方向に進まざるをえなくなっています。これは化学産業について考えると、 不要なものをどれだけ環境中に放出せずに製品を作り出せるかということに 直結しています。 従来の「高温高圧の反応条件を多用し、余剰試剤や副産物は別途処理する」 対症療法的技術から、「温和な条件にて反応を実施し、製造過程においても廃棄物を 極力ださない」抜本的な技術開発への移行が必要となっています。 このような要求に対して私は、生体触媒を用いた物質生産に注目しています。 特に我々の身の回りで用いられている化学物質の中には、その効能を発揮するために 光学的に純粋なかたちにて提供されなければならないものも多いため、 どのように効率よく光学活性体を調製できるかについて検討を行っています。 今回の講演では、生体触媒を用いてラセミ体から光学活性体を化学収率100% かつ原子効率100%にて生産する方法について紹介すると共に、酵素タンパク質に 本来とは違った機能を見出し、 その触媒活性を効率のよい物質生産に結びつけようという試みについて紹介します。
世話人:田中成典 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第167回 「自然環境論セミナー」

題目 マイクロ波エネルギーと化学反応
講演者 柳田 祥三 氏(大阪大学 先端科学イノベーションセンター)
日時 2007年2月13日(火)15時10分-16時40分
場所 発達科学部 G302号室 (G棟3階)
要旨 マイクロ波とは振動数300Mhz-30Ghz (波長1-1000mm)であり、ラジオ波と遠赤外線 (テラヘルツ領域)の間に位置する電磁波である。通信用に用いられるばかりでなく、 電子レンジでなじみのように食品加熱、さらに、医療、化学的プロセス等に幅広く 利用されている電磁波である。マイクロ波エネルギーは物質を構成する分子中の局在電子、 自由電子に作用して反応系内部に熱発生を引き起こし、極性液体系、液体/固体混合系、 さらには、固体物質系を急峻に温度上昇させる。瞬時の熱発生は、 マイクロ波エネルギーによって駆動する“電子熱”作用と呼べる。 この“電子熱”触媒作用は、溶液系化学反応の考え方を根本的に変革する要素をもつ。 本講演では、環境電磁波でもあるマイクロ波エネルギーを化学反応の新型熱源として捉え、 生体への影響を考える機会としたい。
世話人:田中成典 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第166回 「自然環境論セミナー」

題目 フラグメント分子軌道法による生体分子、凝集系の扱い
講演者 望月祐志 氏 (立教大学理学部化学科)
日時 2007年1月12日(金)15時10分-16時40分
場所 発達科学部 G302号室 (G棟3階)
要旨 フラグメント分子軌道法(FMO)は、タンパク質や凝集系といった巨大分子系を経験的な パラメータを導入せずに量子論的に扱うことの出来る手法の一つです。私たちは、オリ ジナルのプログラムシステムABINIT-MPの中にFMOに基づく各種の計算手法を実装し、 同時に実証的な大規模応用計算を手がけてきています。このセミナーでは、 FMOの方法論を概説した後、具体的な応用事例を紹介し、さらに今後の発展の方向性に ついても触れたいと思います。
事例1: Chem.Phys.Lett. 427 (2006) 159
相対論効果をモデル内殻ポテンシャル(MCP)によって導入し、白金を含む抗がん剤 であるシスプラチンがDNAに結合した複合体を約千個の水分子で露に水和させた系を 電子相関を含めたFMO-MP2により電子密度を含めて計算することに世界で初めて成功 しました。この結果、中心の白金原子の電子状態は相関と水和の影響を強く受ける ことが示されました。なお、実行時間は田中研究室のOpteron64CPU機上で8.2日ですので、 実用性の高さも十分です。
事例2: Chem.Phys.Lett. 433 (2007) 360
DsRedは珊瑚由来の赤色蛍光タンパク質で、中心部に色素部(クロモフォア)を持つ β樽型の構造を持っていて、実験による励起エネルギーと発光エネルギー極大は 2.22eVと2.13eVです。この系に対し、クロモフォアに相関を含めた励起状態計算を 行うMLFMO-CIS(D)法を6-31G*基底で適用して各々2.28eVと2.21eVを得ました (残基数は220)。Stokesシフトまで含めた実験値との対応はたいへん良好で、 FMO法が光応答タンパク質を定量的に記述出来ることを示しました。
※ 生体系のシミュレーションにご関心をお持ちの方はぜひ奮ってご参加ください.
なお、(フラグメント)分子軌道法のより基礎的・入門的な部分については、 3限の「現代物理化学特論2」特別講義(同じ会場)の中でも紹介されますので、 こちらも合わせてご参加されるのもよいかと思います。
世話人:田中成典 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第165回 「自然環境論セミナー」

題目 行動意思決定論-意思決定の心理科学-
講演者 竹村和久 氏(早稲田大学文学学術院・早稲田大学理工総合研究所)
日時 2006年12月27日(水)16時00分-17時00分
場所 発達科学部 大会議室 (A棟2階)
要旨 本発表では、意思決定現象の研究パラダイムと行動意思決定論(behavioral decision theory)について概説を行い、最近の我々の研究の知見を紹介する。 行動意思決定論というのは、簡単に述べると、人間の意思決定行動に関する心 理学的知見を説明するための記述的な理論の総称である。伝統的な経済学では、 人間の意思決定は自己利益追及に関して合理的で、時間と場面状況を通じ常に 一定であるという大前提の上に、さまざまな理論構築や実証研究が行われてき た。しかし、社会的状況における人間の意思決定は、必ずしも経済合理性を持 つとは限らず、また一貫していないことがこれまでの研究でわかっている。た とえば、経済学における効用理論に基づいて経済政策を行おうとしても、消費 者の意思決定の状況依存性を十分説明出来ず、対応に失敗することがある。ま た、個人の日常生活の意思決定が社会的環境に依存してなされるために、社会 的予測が間違ったり、無効になったりすることがある。
私達は、このような意思決定の特徴を、人間を含む動物に関する行動分析学 の視点と行動意思決定論の視点を統合しながら把握することを目標としている。 また、社会的状況における意思決定の微視的過程を種々の基礎心理実験と調査 を通じて解明することを続けている。そしてその状況依存性を人間行動に関す る理論的観点から説明し、予測可能な心理計量モデル、その数理心理モデルを 構成し、さらに、この数理心理モデルを実証的観点から検討しようとしている。
まず本発表では、意思決定研究にほぼ共通するとみられる意思決定現象の認 識枠組を示し、確実性下、リスク下、不確実性下の意思決定がどのように把握 できるのかということを説明する。つぎに、意思決定研究の中で行動意思決定 論がどのような位置づけにあり、どのような歴史的経緯を経て発展したかを論 じる。
次に、行動意思決定論の研究の知見であるプロスペクト理論(prospect theory)について紹介し、プロスペクト理論の問題を改善するために藤井聡氏 (東京工業大学)らと行っている状況依存焦点モデルの研究について紹介する。 また、意思決定の過程追跡技法や人間の判断や意思決定の潜在認知の問題を扱 うための画像解析を用いた描画解釈の方法なども紹介する。
世話人:蛯名邦禎 (発達科学部 人間環境学科)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第164回 「自然環境論セミナー」

題目 階級社会と村の発生を物理学で捉える
講演者 小田垣 孝 氏(九州大学大学院理学研究院)
日時 2006年12月27日(水)13時30分-15時00分
場所 発達科学部 大会議室 (A棟2階)
要旨 文明が発展すると共に人間の社会には、階級が出現した。最近注目されて いるフラットな社会においても、上下関係が自然に生じる。一見複雑と思え る社会構造の出現を単純な競争アルゴリズによりモデル化し、物理学の手法 を用いて個々人の行動様式と社会構造に密接な関係があることを示す。
各人が戦いを避ける平和主義民族では、人口密度を増していくと、まず中 間層と敗者からなる階級社会が出現し、ついで中間層の多くが勝者となる階 級社会へと移行する。平均場近似に基づいて、最初の転移は連続的であり、 第2の転移が不連続的であることを示す。このとき生じる階級格差は、ラン ダムな行動をする民族において生じるものより拡大される。
また、各人が常に強者に挑戦を挑む好戦的民族では、低い人口密度でも階 級社会が生じ、少数の勝ち組の周りに負け組と中間層が群がるような村が形 成される。さらに、どの村においてもその社会構造はほぼ同じであることが 示される。
階級社会は、戦いを頻繁に行うことから生じ、安易な再チャレンジはかえ って格差を拡大させることを示唆する。
世話人:蛯名邦禎 (発達科学部 人間環境学科)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第163回 「自然環境論セミナー」

題目 科学研究とプレゼンテーション技術
講演者 松田 卓也 氏(神戸大学名誉教授・宇宙物理学者)
日時 2006年12月13日(水)17時15分-18時30分
場所 発達科学部 大会議室 (A棟2階)
要旨 科学者にとって,プレゼンテーション技術は,その将来を大きく左右する 可能性のある重要なものです.もちろん,科学研究においては,問題設定と 問題解決は重要ですが,研究発表はそれに劣らず重要です.いくら優れた研 究を行っても,他人に認知してもらわなければ意味がないからです.
この自然環境論セミナーでは,長年,宇宙物理学の研究の傍ら,科学者に とってのプレゼンテーション技術の意義,その効果的な方法,習得の仕方, などについて実験と思索を積み重ねてこられた松田卓也教授に,その考え方 と,具体的なノウハウについて,学部1年生の学生にもわかるように,丁寧 に説明していただきます.
なお,このセミナーは,人間環境学科1年生向けの授業「自然科学総合演 習」の一環として,ゲスト・スピーカーとしてお招きした松田教授に,公開 のセミナーを兼ねてお話しいただくものです.
世話人:蛯名邦禎 (発達科学部 人間環境学科)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第162回 「自然環境論セミナー」

題目 星間の化学と物質進化
講演者 川口 建太郎 氏(岡山大学大学院・理・教授)
日時 2006年9月12日(火)15時-17時
場所 発達科学部 B208講義室 (B棟2階)
要旨 1. はじめに
星間空間で存在が確認されている分子は140種以上になる。それらの検出 には分子の回転スペクトルを観測する電波望遠鏡の果たした役割は大きい。電 波の観測は、星間空間の中でも比較的密度の高い分子雲(星の光をさえぎる意 味で雲と呼ばれる)でなされている。そこでは、最も多い水素分子が密度104- 105 個/cm3で存在し、固体微粒子(星間塵―ダスト)も光を遮るほどに存在して いる。星間の化学と物質進化について電波観測、光学観測、実験に基づいて紹 介する。
2. 低密度雲における未同定スペクトル線
暗黒星雲より密度が低く、可視光がある程度透過できる低密度の雲にも、様々 な物質が存在している。そこの密度は水素原子換算で N(H) 1- 100 /cm3程 で、水素分子と原子の密度がほぼ等しく[ H2 ] [ H ]である。可視光の観測で既 に、分子種 C2, C3, CH, CH+, CN, CO, NH が検出され、赤外観測によりH3+が 検出されている。低密度の雲ではまた 未同定スペクトル線: Diffuse interstellar bands (DIBs)が多数報告されている。その正体を明らかにすることは宇宙物理、 宇宙化学の研究者、実験室での分光に関係している者にとって長い間の懸案で ある。最近の光学望遠鏡での観測について報告する。
3. 同位体存在量比とオルソ・パラ比から探る星間化学
重水素DとHの宇宙存在量比は[D]/[H]=10-5であるが、低温での化学反応では 重い元素を含む化合物がより生成しやすい。これは分子のゼロ点エネルギーの差 で説明されていて、ND3, HD2+などが検出されている。ND3はNH3の8x10-4までも 濃縮されている。Dに比べると濃縮の割合は小さいが13Cでも濃縮も観測されている。 水素分子は星間ダスト上で生成すると考えられるが、低温の雲ではオルソ状態 とパラ状態に存在する水素分子が必ずしも統計的重率(3:1)になっていない。これは オルソ準位(J=1)のエネルギーがパラ準位(J=0)のものより約180 Kに相当する分 だけ高いので、星間ダスト上のような低温状態ではパラ準位に相対的に多く分布し ていると考えられる。我々はこの非平衡な分布が伝播することを環状C3H2の観測で 見出した。同じようにC2v対称を示すH2CO, H2CSなどでもオルソ・パラ比は天体によ って異なる値をとっている。このような片寄った分布がアミノ酸など大きな分子の生成 にいかに反映するのか興味ある問題である。
4. 星間アミノ酸の探査
アミノ酸を構成するNH2, COOH基を含む多くの化合物が星間空間で検出されて いるので、アミノ酸も存在していると考えられる。実際、星間空間の塵を起源とする 隕石の中にはアミノ酸が見つかっている。電波望遠鏡での探査は、最も簡単なアミ ノ酸グリシンに対してなされ、2003年検出したと報告されたが、2005年そ の検出を疑問視する報告が発表された。我々はD体、L体を持つものでは最も 小さなアミノ酸であるアラニンの星間空間での検出を目指し、野辺山宇宙電波観測所 45m鏡を用いて観測している。関連する実験室分光とともに報告する。
5. 実験室における解離性再結合反応
星間化学反応の最初に現れる重要な分子イオンH3+の低密度雲における存在量 が予想より多く話題になっている。イオンと電子の解離性再結合反応の速度定数を 求める実験について報告する。
世話人: 中川 和道 (発達科学部 自然環境論コース)
e-mail:nakagawa@kobe-u.ac.jp

第161回 「自然環境論セミナー」

題目 「持続可能な開発のための教育」とその地域拠点(Regional Centre of Expertise)
講演者 鈴木 克徳 氏 (国際連合大学高等研究所 上席研究員)
日時 2006年9月11日(月)15時30分-17時ごろ
場所 発達科学部 大会議室 (A棟2階)
要旨 国連は2005年からの10年間を「持続可能な開発のための教育(ESD)の 10年」と設定し、ユネスコを主導推進機関として各国でその取組が進 められつつあります。この「持続可能な開発のための教育」において 取り組むべき課題としては、環境問題をはじめとして、平和、人権、 男女間格差、文化の多様性、健康問題、企業の社会的責任や市場経済 の課題など広範な領域が含まれ、発達科学部の研究・教育とも深く関 わる課題群となっています。国連大学高等研究所でESDの推進の中心的 役割を果たされる鈴木克徳先生をお招きして、ESDとこれを推進するた めの地域活動拠点についてご講演いただきます。
世話人:伊藤真之 (発達科学部 人間環境学科)
e-mail: mitoh@kobe-u.ac.jp

第160回 「自然環境論セミナー」

題目 海の微量元素は気候変動を支配するか?
講演者 宗林 由樹 氏 氏(京都大学化学研究所 教授)
日時 2006年8月9日(水)13時30分-14時30分
場所 発達科学部 G112 (G棟1階)
要旨 大気中二酸化炭素の増加とそれによる地球温暖化は,人類にとって最大の問題 の一つであろう.海洋は大気中二酸化炭素の60倍の無機炭素を溶解しており,過 去の大気中二酸化炭素の変動を支配してきたと考えられている.しかし,氷期に 海洋が二酸化炭素を吸収したメカニズムについては,さまざまな議論がある.有 力な仮説の一つは,マーチンが発表した鉄仮説である.これは微量金属である鉄 が地球気候を支配するという不思議な仮説である.さらに,海洋に鉄を散布すれ ば,大気中二酸化炭素の増加を抑制できるという.
本講演ではどうして海洋の微量元素が気候変動と関係すると考えられるのか, その研究の最前線がどんな状況であるかを分かりやすくお話しする.
集中講義「地球環境科学特別講義」の一部の時間を利用して, 受講生以外の学部学生,大学院生,専門の異なる教官も聞けるようにご講演お願 いいたしました.
世話人:寺門靖高 (発達科学部 自然環境論コース)

第159回 「自然環境論セミナー」

題目 第一部:非天然オリゴヌクレオチドを用いた細胞内の遺伝子発現を制御する技術
第二部:幅広い生理活性を持つ緑茶カテキンをリパーゼ触媒を用いて医薬分子へ 変換する手法
第三部:日本人若手研究者の海外留学生活の実情と海外の大学での研究現場事情
講演者 開發 邦宏 氏(大阪大学産業科学研究所助手)
日時 2006年7月20日(木)13時30分-15時00分
場所 発達科学部 G302 (G棟3階)
要旨 開發邦宏氏は、神戸大学大学院教育学研究科修士課程、自然科学研究科博士課程 を修了後、米国のテキサス大学(3年間)及び英国のオックスフォード大学(1 年間)において、博士研究員として活躍され優れた業績を挙げられました。帰国 後は、大阪大学産業科学研究所・機能分子科学研究部門・分子材料研究分野の助 手として活躍中です。
開發氏は、G棟の学生さんの大先輩でもありますので、多くの学生諸君の参加を 期待しています。
世話人: 上地眞一 江原靖人 (発達科学部 自然環境論コース)

第158回 「自然環境論セミナー」

題目 "物理的でないもの"の物理学
講演者 井口 和基 氏(物理学者)
日時 2006年7月20日(木)15時30分-17時00分
場所 発達科学部 B208 (B棟2階)
要旨 ネットワークとは何だろう。これは物質と見るべきか、非物質と見るべきか。
ネットワークはいわゆる”メタフィジカル(超物理的)”な存在である。 物質のネットワークから人間関係のネットワークまで幅広く存在する。 こんな不思議な”概念上の構築物”に対して物理理論が適用できるとすれば、 それはそれは大変な驚きである。

しかし、これまで数世紀に渡って物理学がつちかって来たさまざまな アイデアがネットワークに適用できる。こんな不思議な世界を研究して 何になるのだろうか。私は現在生命と非生命の間の境はどこにあるのか、 ずっと関心を持って来た。ネットワーク理論はそのカギを提供してくれるのでは ないか、と考えて研究して来た。 今の所、この難しい問いに答えることはまだ出来ていない。 しかし、ネットワーク理論にも非常に面白い問題があり、多くの人々に 研究されてしかるべきだと考えている。

こんな観点から、最近私と友人たちとで行って来たささやかな研究を基にして ネットワーク研究の面白さ、その奥行きの広さ、将来の問題などを お話できればと思う。
連絡先:田中成典 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第157回 「自然環境論セミナー」

題目 基礎物性物理学に基づいた環境保全技術開発の取り組み
-誘電加熱による廃プラスティックの脱塩素化-
講演者 丑田 公規 氏^A ・岡本 吉史 氏^B
(A: 理化学研究所・環境ソフトマテリアル研究ユニット B: 理化学研究所・情報基盤センター)
日時 2006年7月5日(水)15時10分-17時10分
場所 発達科学部 B104 (B棟1階)
要旨 講演1:
誘電加熱を用いた混合廃プラの脱塩素処理:実験的アプローチについて
(丑田 公規)

廃プラスティックは、製鉄所の高炉で石炭の代用物としてリサイクルされて いるが、高炉設備を損傷しないために、あらかじめ脱塩素処理を行わなければ ならない。従来は輻射加熱や摩擦加熱による処理方法が用いられてきたが、含 有する塩素の量によって除去効率が一定せず、処理制御が難しい上に、長時間 の加熱は有害物質をさらに増大させる可能性がある。全体の4分の3を占める 主要プラスティックの中ではポリ塩化ビニル(PVC)のみが塩素を含むが、他の プラスティックに比べて誘電加熱効率(誘電損失係数)が高く、マイクロ波に より選択的に加熱することが出来ると考えた。この方法によると無分別のプラ スティックを短時間で処理することができる可能性がある。本研究では、マイ クロ波を使った誘電加熱による脱塩素実験、およびプラスティックの基礎物性 測定実験について詳細を述べ、この処理方法の高度化に向けた戦略を、基礎物 性物理学の原理的考察から検討し、さらに高効率な処理方法を設計する基礎と したい。

講演2:
誘電加熱炉設計のための電磁波・熱伝導連成解析手法の高度化
(岡本 吉史)

塩化ビニル樹脂が含有されている廃プラスチックを脱塩素処理する場合,従 来の輻射加熱法では,塩化ビニル樹脂以外のプラスチックも加熱されるため, ダイオキシン等の有害な化学物質の発生が危惧されている。塩化ビニル樹脂の 電磁波による誘電加熱効率を示す数値(誘電損失係数)が,他のプラスチック よりも高いことを利用すれば,塩化ビニル樹脂のみの加熱が可能となり,廃プ ラスチックの分別コストの低減,安全性の向上,低エネルギー化の各観点から, 実用化の利得が極めて高い。このような電磁波を用いた廃プラスチックの高効 率リサイクル誘電加熱炉設計のためには,被加熱体(廃プラスチック)の最適 形状,共振器の寸法,ならびに,ターンテーブルやステラファン等を用いた一 様加熱化装置の詳細な検討が必要となる。本研究では,上記のような高効率リ サイクル誘電加熱炉を実現するため,実機設計に対して十分耐えうる電磁波・ 熱伝導連成解析(シミュレーション)手法を提案する。提案手法は,離散化形 状の自由度が高い三次元有限要素法を根幹とし,温度に対して非線形に変化す る被加熱体の複素誘電率の考慮が可能で,なおかつ,ターンテーブルやステラ ファンのような,共振器内の特定領域の回転運動を厳密に考慮することができ る実用的な連成解析手法である。本セミナーでは,提案した電磁波・熱伝導連 成解析手法の詳細を工学的な視点から論じることで,提案手法の新規性,有用 性について説明する。
連絡先:蛯名邦禎 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第156回 「自然環境論セミナー」

題目 環境物理学の構想と課題
講演者 蛯名 邦禎 氏(神戸大学 発達科学部)
日時 2006年6月26日(火)13時20分-14時50分
場所 発達科学部 G112 (G棟1階)
要旨 環境問題に向かうにあたって,自然科学に課せられた重要な課題の一つに, 複雑な系における将来予測の問題において,何が確実に言えるかを明確にする ことがある.この要請に対して,自然科学から,どのような解答が可能だろうか.
この問題を物理学の立場から,すなわち,物事を最も根源から徹底的に 追究する窮理学の立場から考え,これまでのところ,将来予測に関して, 何が確実に言えるか,これから何を探究する必要があるかを考察する. 確実な「法則」としての保存則の強力さと限界について議論し,物事の 時間発展原理として
(a) 力学原理,
(b) 統計原理,
(c) 生命情報原理,
(d) 意図的行動原理
について検討し,これまで何が既知であり,何が未知であるかについて考察する. その考察に基づいて,今後の「環境物理学」としての研究課題をいくつか提案する. また,6月12日-16日に京都大学基礎物理学研究所で行われた研究会「環境物理学 ―先端境界領域の創出へ向けて」で提起された問題を紹介する.また,これらの 課題を追究することによって,物理学自身が鍛えられ,17世紀における力学の勃興, 19世紀における熱学の展開などに劣らない21世紀における新たな物理学の発展の 可能性を議論する.
ニュートン,カルノーに続き21世紀の知の開拓者になるのは君だ.
世話人:田中成典 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第155回 「自然環境論セミナー」

題目 Development of effective models for vectorial biological processes
講演者 Qiang Cui 氏 (Department of Chemistry and Theoretical Chemistry Institute, University of Wisconsin-Madison)
日時 2006年5月30日(火)13時20分-14時50分
場所 発達科学部 G112 (G棟1階)
要旨 Progress towards understanding vectorial processes in biological systems using theoretical and computational approaches will be discussed. The specific problems of interest include mechanochemical coupling in the molecular motor myosin, vectorial proton pumping in cytochrome c oxidase and the gating of mechanosensitive channels. Several related methodological developments will be discussed, which include boundary potential for QM/MM simulations, effective QM methods for treating long-range proton transfers and phosphate chemistry, and coarse-grained models for describing large-scale motions in biomolecules. Quantitative benchmark calculations of these methods have been carried out using both model and realistic biological systems. The application of these methods will be briefly discussed.
世話人:田中成典 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第154回 「自然環境論セミナー」

題目 Multi-scale simulations on protein motions
講演者 Yi-Qin Gao 氏 (Department of Chemistry, Texas A&M University)
日時 2006年5月16日(火)10時40分-12時10分
場所 発達科学部 G112 (G棟1階)
要旨 Kinesin and dynein are two microtubule-based motor proteins, which play important roles in cellular cargo transportation, cell division and signal transduction. I will present our recent results on theoretical studies of the molecular mechanism of energy usage by these two motor proteins. I will discuss how energy is used efficiently but in different ways by these two motor proteins, which share the same track but "walk" in opposite directions. I will also describe some of our recent effort in developing multi-scale simulation methods and applying these methods to study large scale protein conformational changes.
世話人:田中成典 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第153回 「自然環境論セミナー」

題目 Recognizing patterns in biomolecular simulation data
講演者 Stuart M. Rothstein 氏 (Departments of Chemistry and Physics, Brock University)
日時 2006年5月9日(火)17時00分-18時30分
場所 発達科学部 G302 (G棟3階)
要旨 To extract biologically-significant information from protein simulation data demands powerful approaches to cluster analysis coupled with statistical-based data-reduction methodologies to visualize the results. Rather than delving into mathematical details, I will take a graphical approach to describe our contributions in this area: automated histogram filtering cluster analysis and squared-loading plots. The following practical applications will be discussed:
Concerted motions in proteins related to their biological function are often referred to as “collective coordinates”. We analyzed molecular dynamics snapshots of an all-atom model of the response regulator protein Spo0F of Bacillus subtilis. Dominant collective coordinates were found to be associated with contiguous stretches of amino acid residues implicated in the biological functioning of Spo0F.
Global measures of structural diversity within a distribution of biopolymers, such as the radius of gyration and percent native contacts, have proven useful in the analysis of simulation data from protein folding. Performing replica exchange Monte Carlo simulations and weighted histogram analysis, we investigated the temperature dependence of Boltzmann-distributed conformations of an off-lattice, all-b protein model. Squared-loading plots provided a local structure-based view of protein folding, capturing structural variability of the model protein at different temperatures. Structural elements having the largest local structural diversity within the sampled distributions were clearly revealed in these plots. They are responsible for peaks and shoulders observed in the specific heat versus temperature curve.
The cyclic AMP receptor protein (CRP) acts as a transcription factor and regulates gene expression related to sugar metabolism. When cyclic AMP (cAMP) binds to CRP, conformation changes and binding to specific DNA sequences occur. Crystal structures of CRP-cAMP-DNA complexes reveal a curved DNA conformation. The structural conformation and curvature of DNA provides insight into the mechanism of transcription and the genomic regulatory process. Automated histogram filtering cluster analysis of a one ns molecular dynamics trajectory of the CRP-cAMP-DNA complex is used independently to determine interactions of CRP-cAMP with each DNA base pair.
世話人:田中成典 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第152回 「自然環境論セミナー」

題目 希ガス同位体で探る地球の物質循環
講演者 松本 拓也 氏(大阪大学理学部)
日時 2006年5月8日(月)15時30分-16時30分
場所 発達科学部 A棟2階大会議室
要旨

第151回 「自然環境論セミナー」

題目 鉱物ダストの特性とその大気環境における役割
講演者 小島 知子 氏(熊本大学理学部)
日時 2006年5月8日(月)13時-14時
場所 発達科学部 A棟2階大会議室
要旨

第150回 「自然環境論セミナー」

題目 地質記録の高精度分析に基づく人類紀の海洋環境復元
講演者 大串 健一 氏(産業技術総合研究所地質情報研究部門)
日時 2006年5月8日(月)10時-11時
場所 発達科学部 A棟2階大会議室
要旨

第149回 「自然環境論セミナー」

題目 体内時計と生命科学
講演者 上田 泰己 氏(理化学研究所 神戸研究所 発生・再生科学総合研究センター)
日時 2006年4月20日(木)15時30分-17時00分
場所 発達科学部 G302 (G棟3階)
要旨 腕時計を分解してみると正確に時を刻むのが如何に複雑な過程かが分かる。 動力源によって発生した力が、調速部品によって一定速度の動きへと変換され、 いくつもの歯車を経て最終的に秒針、分針、時針の動きとなって表示される。 体内の時計も同様に複雑で、遺伝子が形成する複雑なネットワークによって発振し、 様々な生理現象のリズムを調節している。しかし腕時計と大きく異なるのは、 体内時計には明示的な表示機能や製作のための設計図がないということである。
体内時計に明示的な機能がない為、ある人の体内時計が今何時なのかを 客観的に知るのはなかなか難しく、体内時計に合わせた薬物投与を目指す 「時間治療」には大きな障壁があった。腕時計に相当するようなものを つくれないだろうか?250年以上も前のリンネの花時計にヒントを得て、 遺伝子時計とでもいえるような分子の時刻表を作成した。セミナーでは、 この分子時刻表を用いて正確に体内時刻を測定する方法やリズム障害を 診断する方法について紹介する。この手法により医師が患者の体内時計に合わせて、 最も有効で最も副作用の少ないタイミングで薬剤を投与するといった応用が 将来可能となるかもしれない。
腕時計と違って体内時計は全体の設計図が最初から存在するわけではない為、 体内時計を構成する部品がいったい何個あるのか、各部品の役割は何なのかが、 わからない。そもそも体内時計が体内の時を刻む原理は何なのかすら不明である。 また体内時計がおかしくなったときにどのように修理すればよいかについて、 マニュアルがあるわけでもない。セミナーでは、このような状況の中で、 部品を探し出し、各部品の特徴を測り、全体を制御しながら、時には 一から組み立てることによって生命現象の理解を試みている様子を紹介する。 このような生命科学の営みは、おそらく体内時計の理解に限ったことではなく 他の様々な生命現象や疾患についても当てはまるのかもしれない。
世話人:田中成典 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第148回 「自然環境論セミナー」

題目 「生命とは何か -メタ生物学への招待-」
講演者 村瀬 雅俊 氏(京都大学基礎物理学研究所)
専門:生命意味論、メタ生物学、生命基礎論
e-mail: murase@yukawa.kyoto-u.ac.jp
日時 2006年3月20日(月)15時30分-17時00分
場所 発達科学部 G302 (G棟3階)
要旨 1980年代前半、私は生体システムの運動が‘如何に’生じるのかという疑問に答えるため、 モデルを造ってそのモデルを論理的に解析することに満足していた。 ところが、1987年にデューク大学に留学した際、生体システムの特定運動モードが ‘何故’生じるのかという疑問に直面し、論理的思考だけでは解決できないという ジレンマをしばらく経験した。幸いにも、この留学期間中に、ある種の直感によって 先の疑問を解決することができた。それは、拙著“The Dynamics of Cellular Motility” (John Wiley, 1992) として出版した。
その後、私は生命現象を模倣する単なるモデル造りではなく、現象の意味を探り、 その意味を提示していくことに重点を置いて研究をすすめてきた。その内容を、 拙著『歴史としての生命-自己・非自己循環理論の構築-』(京都大学学術出版会、 2000年)として、まとめることができた。2001年、私は全く予測不可能な事態に直面し、 何が問題なのかを明らかにする必要に迫られた。 こうした場合、私たちの得意とする論理的思考はほとんど役に立たないのである。 認識とは何かという問題を再認識する上で、得がたい経験であった。
セミナーでは、こうした四半世紀におよぶ自らの体験を踏まえた上で、具体的な 生命現象について解説を加えながら、いわゆるメタ生物学の醍醐味を肌で感じて いただけるよう工夫をこらしたい。予備知識は一切必要としない。したがって、 生命とは何かという人類にとっての永遠のテーマに興味を持つ多くの方々の参加を 心より歓迎する。
世話人:田中成典
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第147回 「自然環境論セミナー」

題目 植物の光合成に学んだ色素増感太陽電池
講演者 小田 敏宏 氏(九州工業大学大学院 生命体工学研究科)
日時 2006年2月20日(月)15時10分-16時40分
場所 発達科学部 G302 (G棟3階)
要旨 地球上に絶え間なく降り注ぐ太陽光を使った発電が,究極のクリーンエネルギーを 実現することは,きっと誰の目にも明らかなことでしょう。しかし,これだけ地球 環境がさけばれる時代であっても,世界中の屋根が太陽電池でいっぱいになる ところまでは行っていません。これは,なぜでしょうか?最大の理由はコストです。 つまり,太陽電池を使って各家庭で電力を発電するよりも,電力会社から買った 方が安いのです。このため,太陽光発電を本格的に普及させるには,安価に 製造できる太陽電池が必要です。また,地球環境を考えた場合,安価に製造 できるだけでなく,環境に悪影響を与えない材料で作られていることも重要 です。色素増感太陽電池は,この低コスト・低環境負荷という2つの条件を クリアすると期待されており,現在,非常に注目されている次世代型太陽電池 です。また,色素増感太陽電池は,低コスト・低環境負荷というだけでなく, 今までの太陽電池と全く異なる,植物の光合成に似た発電機構を持つところに 大きな特徴があります。さらに,この発電機構にナノテクノロジーを組み合わ せることによって,高性能を実現しているため,新しいデバイスとしても 非常に興味深い側面があります。本セミナーでは,太陽エネルギーについて みなさんと一緒に考えるところから始めて,現在使われている一般的な太陽 電池や,現在盛んに研究が行われている色素増感太陽電池について,初心者の 方にもわかりやすく解説して行きます。
世話人:田中成典
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第146回 「自然環境論セミナー」

題目 量子コンピュータとは何か?
-入門から研究の現状まで-
講演者 中原 幹夫 氏(近畿大学理工学部 教授)
日時 2006年2月1日(水)15時10分-16時40分
場所 発達科学部 大会議室 (A棟A220)
要旨 通常の情報処理が0と1の値をとる「ビット」を情報の単位に取るのにたい し,量子情報処理では,二つの直交するベクトル|0〉と|1〉の線型結合で 表される「量子ビット」を情報の単位とする.量子ビットを用いると,絶対安 全な暗号作成や古典コンピュータでは現実的な時間で解く事ができない大きな 数の素因数分解を短時間で解く事などが可能となる.
講演ではこれらの原理を解説した後,量子コンピュータが得意とするアルゴ リズムを2、3紹介する.さらに量子コンピュータのハードウェアとして提唱 されている物理系とその現状を紹介する.最後に我々が行っているNMR量子コン ピュータを用いた研究のいくつかを紹介する.
世話人:蛯名邦禎 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第145回 「自然環境論セミナー」

題目 Molecular modeling in rational design of enantioselectivity
講演者 Karl Halt 氏(Royal Institute of Technology, Sweden, 教授)
日時 2006年1月31日(水)10時30分-11時30分
場所 発達科学部 G302 号室 (G棟3階)
要旨 今回の自然環境論セミナーでは、Royal Institute of Technology, Sweden のKarl Halt 教授に、酵素のエナンチオ選択性(右手型と左手型分子の識別能)の発現機構を 分子モデリングに基づいて解説していただきます。
世話人:上地眞一 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: ueji@kobe-u.ac.jp

第144回 「自然環境論セミナー」

題目 Electronic structure quantum Monte Carlo methods
講演者 Lubos Mitas 氏 (North Carolina State University)
日時 2006年1月24日(火)15時10分-16時40分
場所 発達科学部 G302 (G棟3階)
要旨 I will briefly introduce quantum Monte Carlo (QMC) methods for electronic structure calculations of materials. QMC combines physical and mathematical insights about quantum many-body effects with stochastic simulation techniques and enables us to solve the stationary Schrodinger equation with high accuracy and computational efficiency. The method has been applied to variety of systems such as molecules, clusters and solids with up to a few hundreds of valence electrons and typically provides about 95% of the electron-electron correlation energy. QMC estimations of quantities such as cohesions, band gaps, energy differences between different structures, etc. agree with experiments within a few percent. I will also mention effort to reach beyond the only fundamental approximation involved, which has to do with avoiding the fermion sign problem, such as analysis of nodes of fermion wave functions and new types of trial wavefunctions based on pfaffians rather than Slater determinants and very recent progress in on-the-fly evaluation of electronic energies and forces in molecular dynamics simulations, ie, the development of a QMC/MD method.
世話人:田中成典
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第143回 「自然環境論セミナー」

題目 発達期の脳に及ぼすダイオキシンの影響について
講演者 菅野 美津子 氏 (株式会社東芝 研究開発センター 環境技術ラボラトリー)
日時 2006年1月13日(金)13時20分-14時50分
場所 発達科学部 B208 (B棟2階)
要旨 近年、環境中の化学物質、殊に内分泌撹乱物質と呼ばれるダイオキシン類やPCB類の脳に対する影響が問題になっている。これらの物質は、強い発生毒性・生殖毒性を示すと同時に、胎児期における曝露により神経毒性を示す。例えば、胎児期・周産期にTCDD(2,3,7,8-tetra chloro dibezo-p-dioxin)に曝露されたマウスの子世代は、空間認知や学習記憶の低下、多動的な行動といった神経科学的な障害が観察されている。このようなことから、発達期の脳における化学物質の影響を定量化し、作用機序に基づく対策が急務である。
そこで我々は、発達期におけるダイオキシン曝露のin vitro細胞モデルを構築し、未分化な細胞におけるダイオキシンの作用メカニズムの解析をすすめている。我々は、まず、マウス神経芽細胞腫Neuro2aにAhRを過剰発現させた細胞株N2a-Rを作製し、同細胞を発達期の神経細胞に対するダイオキシン類の曝露モデルとして、AhRを起点とした遺伝子発現からダイオキシンの影響を解析した。AhR(Aryl hidrocarbonreceptor)は、ダイオキシン類と強い結合性を示す核内受容体であり、基質との結合に依存して転写活性を示す、すなわち、XRE(xenobiotic responsive element)に結合し遺伝子発現を制御する転写因子である。XREを転写制御領域に持つ遺伝子は、 P450-Cytochrome系など薬物代謝関連遺伝子をはじめ多岐に渡っており、未分化神経細胞に発現し神経分化を調節するHes-1もその1つである。これまで、AhRの脳における機能は分かっておらず、ダイオキシン類の神経毒性の発現における関与の有無についても確証は得られていない。しかし我々は、免疫組織化学的解析により、脳におけるAhRの局在を同定しAhRの脳機能への関与を示した。また、N2a-R細胞は、AhRの活性化により、カテコールアミン作動性分化が誘導されている特徴を示した。このことから、我々は、ダイオキシン類の神経科学的障害は、神経細胞の細胞死による脱落に基づく機能低下ではなく、非制御的な神経細胞の過剰な分化に基づく可能性があると考えている。
連絡先:田中成典
tanaka2@kobe-u.ac.jp

第142回 「自然環境論セミナー」

題目 地球第四紀気候変動における海底メタンハイドレートとクラスレート・ガン仮説
講演者 中島 英彰 氏 (国立環境研究所 オゾン層研究プロジェクト 衛星観測研究チーム)
日時 2006年1月5日(木)15時10分-16時40分
場所 発達科学部 G302 (G棟3階)
要旨 氷期・間氷期サイクルに代表される第四紀の気候変動の実態とそのメカニズムの解明は、20世紀を通じて地球科学の最大の課題の一つであった。氷期・間氷期サイクルのメカニズムとして最も有力な仮説は、地球軌道要素の変動による日射量の変化に起因するとするミランコビッチ仮説であり、これは海底や氷床掘削コアの分析から得られる気候変動時系列のスペクトル分析に10万年、4万年、2万年などの、いわゆる軌道要素が有意に検出されることなどから強く支持され、ほぼ定説化した感もある。しかしながら、ミランコビッチ仮説ではいまだ気候変動のいくつかの主要な特性が説明できていない。さらに、近年グリーンランドや南極の氷床コアの高精度・高分解能分析が行われるようになると、軌道周期とは全く異なる1000年スケールの大振幅の変動が、氷期・間氷期サイクルに重畳していることが明かとなってきた。この視点から、最近に至って、海底のメタンハイドレートからの間欠的なメタンの放出が引き金となって、第四紀の複雑な気候変動が引き起こされたとする、「クラスレート・ガン仮説」が提唱されている。セミナーでは、その内容について解説する予定である。
連絡先:伊藤真之
mitoh@kobe-u.ac.jp

第141回 「自然環境論セミナー」

題目 ステロイドホルモンによるショウジョウバエの発生制御 ~エクダイソン生合成およびシグナル伝達機構の解析~
講演者 小野 肇 氏 (University of Minnesota, Department of Genetics,Cell Biology and Development)
日時 2005年12月20日(火)15時-16時
場所 発達科学部 G302 (G棟3階)
要旨 小野さんは最近までJT生命誌館において、アゲハチョウの食草選択の分子メカニズムを研究されていましたが、現在は安達が留学していたミネソタ大学のMike O'Connor Labにてステロイド代謝機構を研究されています。ステロイドホルモン・エクダイソンは、昆虫の変態や増殖分化を支配する重要な物質ですが、その分泌リズムは環境変動に応じて調節され、季節適応においても必須の役割を果たしていることが知られています。エクダイソンは頭部から前胸部にある微小器官・前胸腺(環状腺)において生合成されますが、その分子メカニズムは長らく解明されていませんでした。生化学的解明には困難が大きいこの問題に対して、小野さんはショウジョウバエを用いた遺伝学を駆使して取り組んでいらっしゃいます。今回は突然の来日でセミナー情報が遅くなってしまいましたが、多くの皆様がご来聴下さいましたら幸いです。
連絡先:安達 卓
yamadach@kobe-u.ac.jp

第140回 「自然環境論セミナー」

題目 研究発表における,効果的なプレゼンテーション技術
講演者 松田 卓也 氏 (神戸大学理学部地球惑星科学科)
日時 2005年12月14日(水)13時20分-14時50分
場所 発達科学部 B208 (B棟2階)
要旨 科学研究は,1)問題設定,2)問題解決,3)発表と三段階に分かれる.研究者,学生の多くは,1,2を重視しているが,3も同様に重要である.いかに優れた業績を上げても,他人に認知してもらわなければ意味がないからである.
成果の発表法としては,論文発表,口頭発表,ポスター発表などがある.ここでは口頭発表,ポスター発表について,その効果的な技術を述べる.
そのエッセンスは,プレゼンテーションの重要性を認識することから始まる.セミナーでは具体的な手法について解説するが,その習得は容易である.しかし,その容易なプレゼンテーション技術を習得したかどうかが,研究者の将来を大きく左右する可能性がある.
※ このセミナーは,人間環境学科「自然科学総合演習」の一環として行われます.履修者以外の方にも公開しています.
連絡先:蛯名邦禎 (発達科学部 自然環境論講座)
ebina@kobe-u.ac.jp

第139回 「自然環境論セミナー」

題目 カフェ・シアンティフィークの現状と可能性
講演者 綾部 広則 氏 (東京大学 教養学部附属教養教育開発機構)
日時 2005年10月28日(金)15時10分-16時40分
場所 発達科学部 G302 (G棟3階)
要旨 科学コミュニケーションに関して,近年,カフェ・シアンティフィーク(Cafe Scientifique)と呼ばれる新しい動きが欧州を中心に世界各地に広まりつつある.カフェ・シアンティフィークは,それまでの講演会やシンポジウムとは異なった新しい特徴があるが,しかし立ち上がってから日が浅いこともあって,それが何をめざしたものであり,またどのような点で従来の科学コミュニケーションの方法とは違った新しい意味をもつものなのかについては関係者のあいだでも大きな認識の相違がある.本講演では,カフェ・シアンティフィークの現状と科学コミュニケーションにおける位置づけを明らかにする.
連絡先:伊藤真之
mitoh@kobe-u.ac.jp

第138回 「自然環境論セミナー」

題目 Science 125 Questions セミナー
講演者 青木茂樹氏、伊藤真之氏、中川和道氏、蛯名邦禎氏、尼川大作氏、丑丸敦史氏、近江戸伸子氏、田中成典氏 (神戸大学 発達科学部)
日時 2005年10月27日(木)15時-18時
場所 発達科学部 B104 (B棟1階)
要旨 科学・技術が高度に発達した社会において、(a) 環境問題等の解決手段として、 (b)知的探求活動として、市民の科学・技術にかかわる問題に対して、関心を高めるとともに、調査・研究能力を獲得すること(エンパワーメント)が大きな意味を持つ。我々は、大学院総合人間科学研究科に設置された発達支援インスティテュート/ヒューマン・コミュニティ創成研究センターの研究プロジェクトとして「市民科学に対する大学の支援に関する実践的研究」の取り組みを始めた。本プロジェクトは、神戸を主なフィールドとして、幅広い年齢や素養をもつ市民が、大学の支援のもとに、科学リテラシーを高めるとともに、自らが調査・研究能力を獲得してゆく持続可能なシステムとそれを担う組織、人材のあり方を実践的に探り、日本の社会に適したモデルを構築することを目指す。本講演では、このプロジェクトの背景、構想、展開について紹介する。(なお、本プロジェクトの展開においては、学生、大学院生が大きな役割を担うことが期待されることから、学生のみなさんの参加を歓迎したい。)
連絡先:田中成典
tanaka2@kobe-u.ac.jp

第137回 「自然環境論セミナー」

題目 科学・技術的課題に対する市民のエンパワーメント・システムの構築
講演者 伊藤 真之 氏 (神戸大学 発達科学部)
日時 2005年10月5日(水)15時10分―16時40分
場所 発達科学部 大会議室 (A棟2階)
要旨 科学・技術が高度に発達した社会において、(a) 環境問題等の解決手段として、 (b)知的探求活動として、市民の科学・技術にかかわる問題に対して、関心を高めるとともに、調査・研究能力を獲得すること(エンパワーメント)が大きな意味を持つ。我々は、大学院総合人間科学研究科に設置された発達支援インスティテュート/ヒューマン・コミュニティ創成研究センターの研究プロジェクトとして「市民科学に対する大学の支援に関する実践的研究」の取り組みを始めた。本プロジェクトは、神戸を主なフィールドとして、幅広い年齢や素養をもつ市民が、大学の支援のもとに、科学リテラシーを高めるとともに、自らが調査・研究能力を獲得してゆく持続可能なシステムとそれを担う組織、人材のあり方を実践的に探り、日本の社会に適したモデルを構築することを目指す。本講演では、このプロジェクトの背景、構想、展開について紹介する。(なお、本プロジェクトの展開においては、学生、大学院生が大きな役割を担うことが期待されることから、学生のみなさんの参加を歓迎したい。)
連絡先:田中成典
tanaka2@kobe-u.ac.jp

第136回 「自然環境論セミナー」

題目 第一原理量子拡散モンテカルロ法を用いた精密電子状態計算
講演者 前園 涼 氏(独立行政法人 物質・材料研究機構 計算材料科学研究センター 研究員)
日時 2005年9月20日(火)15:10~16:4
場所 神戸大学発達科学部 G112号室
要旨 量子拡散モンテカルロ法は、試行凾數に含まれる励起状態の雑成分を 虚時間発展によって濾過する事で、より精密な電子相關記述を実現する 高精度な電子状態計算手法である。現実的な節固定近似の実装において は、多体波動凾數の振幅自由度を自動的に最も精密な状態に自己修復 出来る枠組みと捉える事が出來る。
最近では、世界の幾つかのグループにおいて、MPIを用いた並列・ 高速計算技術をフル活用して、汎用的なコード実装が実現され、 全電子/擬ポテンシャル、平面波基底/局在基底、孤立系/周期系と いったバリエーションを全て一つのコードパッケージで扱えるよう にまでなっている。
本講演では、拡散モンテカルロ法の計算原理を概観した後、 最近の動向に関して紹介する。
連絡先:田中成典
tanaka2@kobe-u.ac.jp

第135回 「自然環境論セミナー」

題目 Modelling of Export Routes in Haloalkane Dehalogenase DhaA
講演者 Martin Klvana 氏(Loschmidt Laboratories, Faculty of Science, Masaryk University)
日時 2005年9月6日(木)15:10~16:40
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨 Martin KlvanaさんはチェコのMasaryk大学から3ヶ月間の予定で 神戸大学大学院自然科学研究科に研究員として滞在され、バイオ レメディエーション酵素の分子設計に関する計算機シミュレーシ ョンの研究に従事されます。9月1日からの赴任にあたり、今までの ご研究のレビューと今後の展望についてお話しいただきますので、 皆様奮ってご参加下さい。
Halogenated aliphatic hydrocarbons are widespread recalcitrant compounds due to massive natural and industrial production. They are environmentally dangerous because of their toxic, genotoxic, teratogenic and irritating effects. Microbial enzymes haloalkane dehalogenases have been studying for decades for their possible use in bioremediation owing to their capability to catalyse hydrolytic dehalogenation of the xenobiotics to harmless product - an alcohol. Practical use of these enzymes requires increase of activity, specificity and thermostability through modification in their structures.
Three haloalkane dehalogenases with experimentally solved three-dimensional structure differ in rate-limiting step of the dehalogenation reaction. The slowest step for Rhodoccocal haloalkane dehalogenase DhaA is release of an alcohol from the active site cavity to bulk solvent. The release may occur through two tunnels called the main tunnel and the slot. Rational computer-assisted re-design of the tunnels could lead to DhaA with higher catalytic activity. Classical molecular dynamics is, however, not appropriate tool for modelling of egress of the product of the reaction because this process is rare event and cannot be observed during nanosecond simulations. We applied Random Accelerated Molecular Dynamics (RAMD) to speed up the egress by applying a force on the product molecule. Using RAMD, we are capable to model export pathways in the time scale from tens to hundreds picoseconds.
RAMD simulations were performed with DhaA in complex with two products of dehalogenation of 1,2,3-trichloropropane - chloride and (S)-2,3-dichloro-1-propanol (S-DCL). Complex was prepared by molecular docking and equilibrated using classical molecular dynamics. Chloride anion solvated by water molecules left the active site through main tunnel after 1735 ps of equilibration phase of molecular dynamics. Its release has never been observed in simulations without alcohol and suggested that chloride leaves the active site with the assistance of water molecules and before S-DCL. RAMD applied on S-DCL showed two pathways for S-DCL, i.e. the main tunnel and the slot, the tunnel being preferred export route.
連絡先:田中成典
tanaka2@kobe-u.ac.jp

第134回 「自然環境論セミナー」

題目 宇宙放射線環境における有人活動
講演者 内堀 幸夫 氏 (放射線医学総合研究所 放射線安全研究センター 宇宙放射線防護プロジェクト )
日時 2005年8月25日(木)15:10~16:40
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨 国際宇宙ステーションが建設されている高度300~500kmでは、 銀河宇宙線、捕捉宇宙線、太陽粒子などにより、宇宙飛行士は 一日あたり約1mSvの放射線被ばくを受ける。長期の滞在により 被ばく量は増加し、その正確な理解が必要である。 また、高高度を飛行する航空機内においても2次宇宙放射線が存在し、 頻繁に搭乗する航空機乗務員の放射線被ばくは無視できない。 これらの問題について物理的な観点から議論したい。
連絡先:伊藤真之 (発達科学部 環境基礎論講座)
mitoh@kobe-u.ac.jp

第133回 「自然環境論セミナー」

題目 Chemical Revolution -革命的な化学過程が最初の生命を導いた-
講演者 小林 憲正 氏
(横浜国立大学 大学院工学研究院 機能の創生部門 教授、生命の起源と進化学会 会長)
日時 2005年8月9日(火)15:00~17:00
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨 隕石からアミノ酸化合物が検出され、無機分子から有機分子への 化学進化が宇宙でも起きていることが明確となった。では、宇宙に おける化学進化は、生命にどこまで近づくことができるのであろうか?
生命の起源と進化に関する国際学会、アストロバイオロジー国際学会、 日本の生命の起源と進化学会などで積み上げられてきた最新の 知見や我々のグループによる研究を俯瞰し、生命の起源をめぐる科学の 最前線について語る。
連絡先:中川和道(自然科学研究科・発達科学部 自然環境基礎講座)
nakagawa@kobe-u.ac.jp

第132回 「自然環境論セミナー」

題目 海洋溶存有機物に関するパラダイム変化
講演者 田上 英一郎 氏 (名古屋大学大学院環境学研究科・教授)
日時 2005年8月4日(木)13:30~14:30
場所 神戸大学発達科学部 G114号室
要旨 海洋溶存有機物は膨大な現存量を有するものの、難分解性有機物のプールであり、 長期に渡って安定的に存在すると考えられてきた。最近の研究から、海洋溶存 有機物の少なくとも一部は従来考えられていたよりもはるかにダイナミックな 系にあると考えられるようになった。このようなパラダイム変化を概観する。
連絡先:寺門靖高(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: terakado@kobe-u.ac.jp

第131回 「自然環境論セミナー(その1)」

題目 ”Molecular Electronics: From Single Molecules to DNA”
講演者 Prof. Dr. Wolfgang Wenzel
(Forschungszentrum Karlsruhe, Institut fur Nanotechnologie, Karlsruhe,Germany)
日時 2005年8月3日(水)15:10~16:40
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨 Wolfgang Wenzel博士によるセミナーの第二回目は「分子エレクトロニクス」に 関してお話しいただきます。現在のシリコン・デバイスの集積化に限界の見え 始めた今、「分子からボトムアップする」電子デバイスの可能性に注目が集ま っています。ナノテクノロジーの最先端のトピックスの一つであるこの問題を 主に理論的な立場から紹介していただきます。
連絡先:田中成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第131回 「自然環境論セミナー(その2)」

題目 ”High throughput in-silico screening against flexible protein receptors”
講演者 Prof. Dr. Wolfgang Wenzel
(Forschungszentrum Karlsruhe, Institut fur Nanotechnologie, Karlsruhe,Germany)
日時 2005年7月29日(金)15:10~16:40
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨 第131回目の自然環境論セミナーはドイツのカールスルーエ研究センターから Wolfgang Wenzel博士を講師にお迎えして行います。Wenzel博士はライフ サイエンス、ナノサイエンスに関係する幅広い対象に対して理論および計算機 シミュレーションの立場から精力的に研究を進めておられます。このたび 共同研究のため神戸大学に1週間ほど滞在される機会に、タンパク質-リガンド ドッキングと分子エレクトロニクスという2つのトピックスに関して2回に分けて お話しいただくことになりました。今回のセミナーはその第一回目で、 コンピュータによる「インシリコ・スクリーニング」や創薬に関心のある多くの 方々のご参加をお待ちしています。
連絡先:田中成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第130回 「自然環境論セミナー」

題目 ビジョンメソッド-今、なぜビジョンか-
講演者 原口 正弘 氏 (ビジョンメソッド研究所)
日時 2005年7月21日(木)13:20~16:40
場所 神戸大学発達科学部 B208号室
要旨 3限 (13:20~14:50): 「個のビジョン ―志―」
4限 (15:10~16:40): 「日本企業におけるビジョンの必要性」
連絡先:田中成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第129回 「自然環境論セミナー」

題目 Biological Effects of Electromagnetic Fields
講演者 Martin Blank (Columbia University)
日時 2005年7月12日(火)13:30~17:00
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨 Part I: Environmental Safety Issues
Part II: Mechanisms of EM Field Interactions
連絡先:蛯名 邦禎 (発達科学部自然環境論講座)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第128回 「自然環境論セミナー」

題目 化学反応はなぜ生起するのか?:遷移状態概念再考
講演者 小松崎 民樹 & Chun Biu Li(神戸大学理学部・地球惑星科学科)
日時 2005年7月5日(火)14:30~16:30
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨
連絡先:田中 成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第127回 「自然環境論セミナー」

題目 "Space Tourism"
講演者 Dr. Robert A. Goehlich(慶應大学 システムデザイン工学科 講師)
日時 2005年6月20日(月)13:20~14:30
場所 神戸大学発達科学部 B208号室
要旨
連絡先:田中 成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第126回 「自然環境論セミナー」

題目 環境汚染物質分解酵素を利用した環境修復
講演者 中村 卓 (長浜バイオ大学 バイオサイエンス学科 分子生命科学コース)
日時 2005年6月13日(月)15:10~16:40
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨
連絡先:田中 成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第125回 「自然環境論セミナー」

題目 ウイルスタンパク質のアミノ酸はどこまで変異可能か、 変異の予測は可能か?
講演者 中島 捷久 教授 (名古屋市立大学医学部ウイルス学講座)
日時 2005年6月2日(木)13:20~14:50
場所 神戸大学発達科学部 G114号室
要旨
連絡先:田中 成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第124回 「自然環境論セミナー」

題目 ”Complexity of DNA Electron Structure: A Theoretical Study”
講演者 Dr. Jewgeni Starikow
(Institute for Theoretical Solid-State Physics, University of Karlsruhe, Germany)
日時 2005年5月16日(月)15:10~16:40
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨
連絡先:田中 成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第123回 「自然環境論セミナー」

題目 Free-Energy Simulations Using Stochastic Optimization Methods for ProteinStructure Prediction
講演者 Dr. Alexander Schug (神戸大学発達科学部・田中研究室)
日時 2005年5月12日(木)17:30~19:00
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨
連絡先:田中 成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第122回 「自然環境論セミナー」

題目 生体分子シミュレーションにおける量子化学計算の役割
講演者 田上 英一郎 氏 (名古屋大学大学院環境学研究科・教授)
日時 2005年4月22日(金)15:10~17:40
場所 神戸大学発達科学部 G112号室
要旨 「核・電子の量子効果を含めた水素結合系シミュレーション」
立川 仁典(横浜市立大学 総合理学研究科)
「重金属イオンと生体分子の相互作用に関する理論的研究」
森 聖治 (茨城大学 理学部)
「フラグメント分子軌道法の生体高分子への応用」
福澤 薫(みずほ情報総研 バイオテクノロジ室)
連絡先:田中 成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第121回 「自然環境論セミナー」

題目 薬学計算科学と情報科学
講演者 中馬 寛 氏(徳島大学大学院教授)
日時 2005年3月15日(火)15:20~16:50
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨 各種の分子科学計算とシミュレーションは、いまや実験室の枠を超え、 創薬においても不可欠なアプローチの一つとなりつつある。近年の飛躍的 な計算機能力の増強と理論・計算科学の方法の発展により,生理活性分子 の活性・機能の発現メカニズムの電子・原子レベルでの本格的解明も照準 に入りつつあり,創薬理論化学により「非経験的にデザインされた薬物」 の出現も夢ではなくなっている。しかしながら,未だなお生体現象を ブラックボックスとして取り扱わざるを得ない状況も多くあり,従来の 薬物分子の物理化学的特性値にのみに着目した定量的構造活性相関解析 (QSAR) 法によるアプローチもきわめて有用であることが知られている。 当面は分子科学計算とシミュレーションとQSARの「折衷的アプローチ」 を用いることが実際的であると考えている。この一環として両者の物理 化学的見地からの関係を明らかにする幾つかの研究例を紹介する。
また、社会からの要請が大きく、かつ今まであまりQSAR・情報化学による アプローチのメスが入っていない薬物の吸収・代謝・毒性に関する幾つか の研究例を紹介する。
連絡先:寺門靖高(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: terakado@kobe-u.ac.jp

第120回 「自然環境論セミナー」

題目 生涯学習の広がりと地域の自然・環境保全 ~博物館の取り組みから~
講演者 赤澤 宏樹 氏(兵庫県立大学 自然・環境科学研究所(兼)兵庫県立人と自然の博物館 )
日時 2005年3月11日(金)13:30~
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨

第118回 「自然環境論セミナー」

題目 労働衛生の基本的な考え方
講演者 西尾 久英 氏(神戸大学大学院 医学研究科・教授)
日時 2005年2月10日(木)15:30~17:00
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨 特定の労働環境下におかれた人間が、職業に関連した疾病を予防し、また、 健康を保持し、増進していくためにはどうすれば良いのかについて考える。 そのために、現在の労働衛生の基本的な考え方を紹介しつつ、現代よく取り 上げられる話題(過重労働、メンタルヘルス、自殺など)に触れたい。
連絡先:蛯名邦禎 (発達科学部自然環境論講座)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第117回 「自然環境論セミナー」

題目 地球温暖化問題 ― サイエンス,京都メカニズムから文明論まで
講演者 松尾 直樹 氏
((有)クライメート・エキスパーツ [地球温暖化戦略アドバイザリー サービス] 代表・シニアリサーチフェロー)
日時 2005年2月3日(木)13:30~15:00
場所 神戸大学発達科学部 大会議室(A棟2階A220)
要旨 多様な側面を持つ地球温暖化問題を,さまざまな角度から(理系と文系の両側面 から)斬ってみることで,この問題の意味するところを考える.サイエンスの側面においては,科学的知見からそれを政策に活かすにあたっての 国際的な枠組みまで対策の側面においては,とくに気候変動枠組条約・京都議定書の市場を活用した メカニズム その他,政策措置論,技術論,南北問題,政治論としての側面から文明論まで。とくに,この問題の抱えている本質的なむつかしさと,今後の対応に関してどのよ うな視点が必要か?という点を論ずる.専門分野を横断的にみることの重要性を強 調する.それによって,今後,学生の諸君が,個人として,あるいは専門家,企業人などの 形で,この問題にかかわるにあたっての「きっかけ」となることを企図している.
なお,以下のURLも参照してください. http://www.climate-experts.info/
連絡先:蛯名邦禎 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第116回 「自然環境論セミナー」

題目 無脊椎動物由来の神経ペプチド -配列と機能の保存性と多様性-
講演者 佐竹 炎 氏((財)サントリー生物有機科学研究所)
日時 2005年1月26日(水)15:20~16:50
場所 神戸大学発達科学部 G302(G棟3階)
要旨 神経ペプチドは内因性のシグナル伝達物質として、外的刺激情報の伝達や生理現象 および行動の制御に大変重要な役割を果たしています。行動様式や体構造が単純な無 脊椎動物は、個々の神経ペプチドの生物学的役割を明らかにし、医学・薬学・環境科 学的、および分子進化研究において有力なツールになることが期待されます。一方、 これまで研究対象とされてきた無脊椎動物から同定されたペプチドは多種多様であ り、高等動物のホルモンペプチドや神経ペプチドとは異なった構造を有することか ら、神経系・内分泌系ネットワークのモデル生物として不適当である可能性も示唆さ れました。そこで、現在当グループでは、脊椎動物の祖先的性質を有すると考えられ る原索動物の代表的な種であるホヤに着目し、神経ペプチドが深く関与する摂食行動 や生殖行動の研究する上で、ホヤを新たな優れたモデル生物として確立できるのでは ないかと予測しました。しかしながら、これまでにホヤの神経ペプチドは2種類が同 定されているに留まっています。これらの背景から、当グループは現在、従来の無脊 椎動物由来のペプチドの構造と機能を解明することに加え、ホヤの神経ペプチドとそ の受容体を全て同定し、個々のペプチドの生理活性とそれらの機能レベルでの関連性 を明らかにすることにより、脊椎動物における基本的な生命活動に不可欠な神経ネッ トワークの基盤を構築することを構想しました。本セミナーでは、当グループが研究 対象としてきた脳下垂体後葉ホルモンペプチドであるオキシトシン/バソプレッシン 超族ペプチドや、代表的な神経ペプチドであるタキキニンおよびタキキニン関連ペプ チドといった無脊椎動物由来の神経ペプチドとそれらの受容体を中心に、ホヤを題材 とした神経ペプチドの体系的な機能解明に向けた取り組みと、そこから得られる知見 の応用性を紹介したいと考えています。
連絡先:田中 成典 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail:tanaka2@kobe-u.ac.jp

第115回 「自然環境論セミナー」

題目 被子植物(花)と送粉者の共生 (身近な生物間の共生から環境を考える)
講演者 丑丸 敦史 氏(総合地球環境学研究所)
日時 2005年1月22日(土)13:00~14:00
場所 神戸大学発達科学部 大会議室(A棟2階A220)
要旨 私たちの生活の周りには庭木の花、花瓶に生けられた花、公園で咲く花、パティー 会場で飾られた花、贈り物の花と実に様々な花を見ることができる。この当 たり前の 状況は地球の歴史の中ではそれほど古くから見られるものではない。 被子植物(花を咲かせる植物)は白亜紀前半から地球上に誕生し、その後爆発的に 多様化した。現在では陸上植物のうち約九割の優占度をもつこの分類群 は、生産者と して陸上生態系を支えている。ヒトも被子植物に大きく依存して生活をおこなってい る動物であるといえる。この被子植物の多様化・繁栄のきっ かけを送粉者(花粉媒介 者)や種子散布者との共生関係の確立とする仮説が提唱されている。
この発表では被子植物の多様化のきっかけとなった送粉者との共生関係について花 の生態学的な視点での研究と群集生態学的な視点での研究とに分け、それ ぞれ紹介 する。
花の生態学的な研究としては花を構成する器官(雌蕊、雄蕊、花弁、がく片)の大 きさ(サイズ)の変異が送粉者への適応として進化していることを示した 研究、花の 咲く方向(方位、角度)が送粉者の行動を制御することを明らかにした研究について 説明する。
植物―送粉者群集の研究では、国の天然記念物に指定されている京都市深泥池での 保全に関する生態研究、阿武隈山地の里山で行ったマルハナバチ類の人工 景観利用に ついての研究について発表する。ここから人間活動がいかに植物―送粉者群集に影響 を与えるのか、また人間活動化で両者の存続を可能にするため にはどのような思考が 必要か議論する。
以上の研究紹介から、身近な花という存在の研究からどのように環境をみていくの かについて考えたい。
連絡先:寺門靖高(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: terakado@kobe-u.ac.jp

第114回 「自然環境論セミナー」

題目 生態系の規模を考慮した水圏生態系の管理
講演者 加藤 元海 氏(日本学術振興会特別研究員/京都大学生態学研究センター)
日時 2005年1月22日(土)10:30~11:30
場所 神戸大学発達科学部 大会議室(A棟2階A220)
要旨 世界中の水圏生態系が直面する深刻な環境問題の一つは、近年の人間活動の急激な 増加による過剰な栄養塩の供給に起因する富栄養化です。一般的によく知られている 例としては、湖沼におけるアオコの大発生があります。しかし、過剰な栄養塩が供給 されているにもかかわらず、富栄養化が緩衝される場合があります。湖沼生態系の場 合、その条件は、湖沼の規模や沿岸帯植物群落の多寡に依存することが明らかになり つつあります。沿岸帯植物群落は、根を張ることにより湖底を安定化させ栄養塩の再 循環を抑制する効果をもっています。したがって、湖沼の富栄養化で沖帯の水質の鍵 を握っているのが植物の生える沿岸帯であり、沖帯-沿岸帯相互作用が重要となりま す。しかし、この相互作用の強さは湖沼形態(大きさ、深さ)によって異なります。 今回は、実際に野外観測や実験で得られたデータを組み込んだ数理モデルを用いて、 富栄養化しやすい湖沼の特徴を明らかにした研究を紹介します。モデル解析の結果、 中程度の平均水深を持つ湖沼において不連続的富栄養化の可能性がもっとも高いこと を明らかになりました。中規模の湖沼は比較的利用価値が高くしかも我々の身近に存 在する湖であり、そのような湖沼に対してこの研究結果はさらに注意深い管理の必要 性を示唆しています。
河川においても、その生態系を管理する上で規模を考慮する必要があると考えられ ます。河川の場合、河自体の大きさに加えて、同一河川内でも本流・支流・山間渓流 といった様々な規模が存在します。規模が異なると、栄養塩希釈効果や岸辺に生える 植物群落の水質浄化の効果が変わると予測されます。栄養塩問題のほかにも、生物が 水中生活を行う上で欠かせない酸素の問題も考えられます。富栄養化や河川改修など の影響により溶存酸素は変化し、水生生物の分布を制限ことがあります。私がこれま で河川において行った、酸素条件と水生昆虫の分布に関する研究を簡単に紹介した 後、人為的な影響を受けやすい河川の特徴を特定するといった近い将来研究テーマと して関心をもっていることについても言及する予定です。
水圏生態系は、湖沼と河川が繋がっているのが特徴です。最後に、湖沼と河川の規 模を考慮した研究を基に、湖沼と河川が相互作用する「流域」を管理するための研究 の展望について話したいと思います。
連絡先:寺門靖高(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: terakado@kobe-u.ac.jp

第113回 「自然環境論セミナー」

題目 欧米における大学の市民科学支援と日本における展開
講演者 平川 秀幸 先生(京都女子大学 現代社会学部)
日時 2004年12月20日(月)15:30~16:30
場所 神戸大学発達科学部 大会議室(A棟2階)
要旨 大学(大学院)が、市民の科学的課題に対する研究・調査を支援し、 あるいは受託して行う活動として、ヨーロッパにおけるscience shop、 アメリカにおける community based researchなどがあります。 これらについて精力的にご研究されている、京都女子大学の平川秀幸先生 (科学技術社会論)をお招きして、欧米の状況、日本における同様の活動 の現状、展望などについてご紹介いただきます。また、発達科学部として の環境保全市民活動に対する今後の支援等のあり方についても意見交換が できればと考えております。
連絡先:伊藤真之(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: mitoh@kobe-u.ac.jp

第112回 「自然環境論セミナー」

題目 情報計算から生命、環境問題にどのように取り組むか?
講演者 神沼 二眞 教授(広島大学大学院理学研究科 量子生命科学プロジェクト研究センター)
日時 2004年10月27日(水)15:20~16:50
場所 神戸大学発達科学部 G302教室
要旨 1940年代にコンピュータが誕生してから、計算と情報に関連した多くの学問領 域が生まれ、伝統的な自然科学の研究スタイルが革新された。その影響は、関連する 素材開発、医学、薬学、毒性学、農学、環境科学などにまで及んでいる。私自身、2 0代の理論物理学とパターン認識から出発して60歳の定年退官にいたるまで、医 学、医療、生物学、化学物質の安全性、医薬品、食品、環境問題などに関する研究分 野で情報計算の立場から仕事をしてきた。また、その間に、情報計算化学生物学会 (の前身である計算機と化学・生物学の会)を1981年に立ち上げた。
この学会は、望みの物質をデザインすること、化学物質の生体への影響をしらべるこ と、という課題に情報計算技法を援用することに関する学術情報交換をめざしてい る。この会はComputational Chemistry, Chemical Informatics, Bioinformaticsに 関係しているだけでなく、現在話題になっているNanotechnology, Biotechnology, ITにも関係した分野を関心領域としている。
こうしたさまざまな分野である程度仕事ができた要因を考えてみると、(1)出発 点となった物理学は化学の基礎であり、化学は現代生物学の基礎になっていること と、(2)パターン認識を含む情報学が人間の思考(思惟)の方法論として、Meta Science/Technologyの性質を有していることに帰着できるように思われる。実際に情 報計算技法は、物理学だけでなく、化学(Computational and Informational Chemistry)や生物学(Computational Biology, Bioinformatics)の中に、重要な位 置をしめるようになっている。
20世紀は、2つの世界大戦の時期を経験して科学、技術が大発展した時代であっ た。21世紀においてもその発展はますます加速されるだろう。しかし、科学や技術 の進歩がそのまま人類の生活を良くし、幸せにすることにはならない。進歩がもたら す負の要素も少なくない。環境問題はその典型である。そこで浮上してきたのが「科 学、技術を効果的に活用するための科学と技術」である。情報計算技法は後者にも深 く関係している。
当然のことであるが、環境問題で大切なのは生物学の視点である。生命の存在を問題 にしなければ環境問題はありえないからである。それゆえ、情報計算技法と生物学の 知識は、あらゆる科学、技術の研究に関っている者が身に着けなければならない素養 となっている。実例として、講演者が最近関心をもっている核内受容体と生活習慣病 の研究構想を紹介する。
連絡先:田中成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第111回 「自然環境論セミナー」

題目 光合成色素タンパク質複合体の構造と 光化学初期過程の関係
講演者 熊崎 茂一 助教授(京都大学大学院 理学研究科 化学専攻 光物理化学)
日時 2004年10月13日(水)15:20~16:50
場所 神戸大学発達科学部 G302教室
要旨 光合成反応中心色素タンパク複合体の立体構造は、1980年代には紅色 光合成細菌について解明され、そしてようやく21世紀になって植物型 (酸素発生型)光合成反応中心についても原子レベルの分解能で明らかに なろうとしている。それに先行または平行して時間分解レーザー分光法に より電子伝達分子の間で起こる電子移動や競合する電子励起エネルギー移動 の素過程が次々に明らかになってきた。
本講演では、まず、既に立体構造が明らかな種類の光合成反応中心について 構造と電子移動の間の関係がどのように理解されているかを解説する。 次に立体構造と反応素過程の解明が遅れている種類の光合成反応中心に ついて研究成果と今後の問題点を解説する。
(1)反応中心や光エネルギー捕集系の構造について
現時点で、電子伝達分子の配置が議論できる程度によくわかっている光合成 反応中心は紅色光合成細菌(PB-RC)、光化学系I (PSI-RC)、光化学系II (PSII-RC)の3種である。このうち、PBRCとPSII-RCはキノンを最終電子 アクセプターに持つ型(II型)に分類され、タンパク質のアミノ酸配列、 および電子キャリアー分子の配列など相同性が高い。しかし、性質は非常に 異なり、またPSII-RCのみが酸素発生能を有する。PSI-RCは鉄硫黄クラスターを 最終電子アクセプターに持つ型(I型)で、II型とは進化の早い段階で分化 している。電子伝達分子の配列もII型のものとは定性的な違いが認められる。 エネルギー伝達系(光エネルギー捕集系)の多様な構造についても反応中心 との関連に注意しながら解説を加える。
(2)電子移動の速度定数
PB-RCでは分光学的測定が比較的容易で、電子移動速度定数が明確に求められ ている。概して、分子端間距離で(核因子が最適化された時の)最高速度が 決まっているという経験則が得られている。一方、PSI-RCとPSII-RCでは電子 伝達分子の吸収スペクトルが狭いエネルギー領域に密集している。その結果、 常温においては見かけの電子移動速度は常に電子励起エネルギーの寄与を含 んだ形で現れるので、電子移動速度定数を議論するのは必ずしも容易ではない。 しかし、そのような複雑なシステムも様々な分光測定や計算機シミュレーショ ンにより多くの知見が蓄積しつつある。
(3)構造が未知の光合成反応中心に分光学がもたらせる新知識
植物型光合成反応中心には必ずクロロフィルaが使われているというのが従来の 定説であったが、近年になり、クロロフィルdを用いて同等の光合成を行う生物 が見つかり始めた。この構造が未知で新規な光合成電子伝達系を超高速分光に より調べると、電子伝達系の分子配列およびダイナミクスにおいて他の光合成 電子伝達系と著しい違いを見出すことができた。
上記の3点を中心に講演を行う。超高速時間分解分光法のデータとそこから 導かれる素過程の描像との間の関係をわかり易く解説することを心がける 予定である。
連絡先:田中成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第110回 「自然環境論セミナー」

題目 海洋大気エアロゾル組成の変動と影響予測について
講演者 植松 光夫 先生(東京大学海洋研究所教授)
日時 2004年9月28日(火)15:00~16:00
場所 神戸大学発達科学部 G112教室
要旨 北太平洋を中心に陸、大気、海洋間を生成、循環、消滅するエアロゾルの化学的特 性と物質循環の変化を把握することを目的とした5年間のVMAPという 大型プロジェク トの紹介である。海洋・大気の化学成分を自動採取分析するシステムを搭載した無人 観測艇を開発し、三宅島の火山噴煙の化学成分分析から海洋の生態系への影響を解析 した。また、船舶や島嶼での大気観測網によって海洋エアロゾルの主要化学組成の時 空間変動を高精度に把握し、東アジア域でのエアロゾル化学成分の分布の再現とそれ をもとにした化学天気図による予測の実用化へのプロセスを述べる。 (集中講義「地球環境科学特別講義」の一部の時間を開放して,受講生以外の学部学 生,大学院生,専門の異なる教官も聞けるようにセミナーをお願いいたしました.)
連絡先:寺門靖高(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: terakado@kobe-u.ac.jp

第109回 「自然環境論セミナー」

題目 変化する瀬戸内海の生態系
講演者 藤原 建紀 先生(京都大学大学院農学研究科教授)
日時 2004年9月14日(火)13:30~14:30
場所 神戸大学発達科学部 G112教室
要旨 瀬戸内海は高い生産性をもった海である.この海の水質を改善し,維持するため1970 年代から多くの努力が払われ,陸上から流入する有機物(COD)・リン・窒素負荷量の 削減が行われてきた.これらの施策によりごく岸近くの水質は著しく改善されたが, 海域全体の水質には顕著な改善はみられず,むしろ負荷量の変動とは対応しない変動 がみられる.
また,近年の瀬戸内海では,養殖ノリの窒素不足で色落ちが起きる,アサリがとれ なくなった,熱帯の魚が入ってきた,海藻やアワビがへった,などの多くの異変が伝 えられている.これらを起こす10年スケールの大きな生態系の変化とその原因につ いて述べる.
連絡先:寺門靖高(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: terakado@kobe-u.ac.jp

第108回 「自然環境論セミナー」

題目 北東ユーラシアタイガ林の水と炭素の循環
講演者 杉本 敦子 氏(北海道大学大学院 地球環境科学研究科 地圏環境科学専攻 地球環境変遷学講座)
日時 2004年9月7日(火)13:30~14:30
場所 神戸大学発達科学部 G112教室
要旨

第107回 「自然環境論セミナー」

題目 人工衛星「みどり2」搭載センサILAS-IIによる 2003年オゾンホール観測結果
講演者 中島 英彰 氏(国立環境研究所 オゾン層研究プロジェクト 衛星観測研究チーム)
日時 2004年8月19日(木)13:30~14:30
場所 神戸大学発達科学部 G302
要旨 海近年、オゾンホールや地球温暖化等、全球規模での環境問題がクロ ーズアップされてきている。これらの問題の原因解明と将来へ向け ての対策を検討するため、各国の研究者による集約的な研究が進め られている。日本でも、1996年打ち上げの地球観測プラットフォー ム衛星「みどり:ADEOS」に引き続き、2002年12月には後継機であ る環境観測技術衛星「みどり2:ADEOS-II」がH-IIAロケット4号 機によって成功裏に打ち上げられた。みどり2には、環境省が開発 したオゾン層観測センサILAS-IIが搭載されており、2003年4月から 太陽電池が故障して衛星の運用が停止する10月末まで、約7カ月間 のデータを取得することに成功した。この年は、南極オゾンホール が史上最大規模にまで拡大しており、ILAS-IIの観測結果からオゾ ンホールの形成や発達に関するさまざまな新たな知見が得られつつ ある。今回のセミナーでは、現在までのILAS-IIのデータ解析で得 られた初期結果や、日本の将来の衛星計画等について講演する予定 である。
連絡先:伊藤 真之(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: mitoh@kobe-u.ac.jp

第106回 「自然環境論セミナー」

題目 健康増進を目指して-環境と遺伝:アレルギー疾患をモデルに-
講演者 白川 太郎 教授(京都大学大学院医学研究科(健康増進行動学))
日時 2004年8月11日(水)午後3時30分から5時
場所 神戸大学発達科学部 A棟2階大会議室
要旨 1998年の厚生省特別研究班の報告によれば国民の38%が何らかのアレルギー疾 患を罹患した経験を有すると報告されており、第二次世界大戦前後では約数%と考え られているので大幅な増加をきたしている。また全世界で統一された質問票を使用し て行うISAAC調査でも小児アレルギー疾患は先進諸国で増加していることが報告され ている。
アレルギー疾患は遺伝的な素因の上に環境要因、ライフスタイル要因が複雑に絡み あって発症すると考えられており、遺伝子変異の急激な増加はありえないとすれば問 題は環境、ライフスタイル要因の変化によるものと考えざるをえない。これらの戦後 の変化がおそらく遺伝子相互作用や発現量、機能を変化させそのために急激な罹患率 の増加を招いたと考えられる。それでは一体環境、ライフスタイル要因の何がこのよ うな急激な増加をもたらしたのであろうか?いくつかの仮説が提唱されている。 (1)感染症の減少、(2)食事の変化、(3)住環境の差、(4)抗原量そのもの の増加、(5)大気汚染、(6)ストレスの増加、などが主たる仮説である。そのど れもがかなり説得力のある証拠があるが、それに対する反論も数多い。全ての疫学調 査が指示する絶対的な仮説はまだ得られていないというのが現状であろう。むしろこ れらの因子による複合的な現象が同時に進行するためであると考えるほうが合理的な ようである。
本講演では、これらの仮説の主たるポイントを紹介するとともに、遺伝子と環境との 絡みをどのように捉えて研究を行なうべきか?どのように予防していくべきなのか、 私なりの考えを述べて皆さんの議論のたたき台となることを期待したい。
連絡先:田中 成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第105回 「自然環境論セミナー」

題目 シンクロトロン放射を用いた放射線生物照射効果の 物理化学的初期過程
講演者 横谷 明徳 氏 (日本原子力研究所・先端基礎研究センター)
日時 2004年7月27日(火)16:00〜17:30
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨 放射線による突然変異や発ガンの原因は、細胞中のゲノムDNAの 分子損傷であると言われているが、まだその詳しいメカニズムは明らか ではない。放射線のエネルギー吸収に開始されるDNAの損傷過程を解明す るため、我々はこれまでシンクロトロン放射(放射光)を光源として用 いた分光学的な研究を行ってきた。セミナーでは、播磨地区の第3世代放 射光施設(SPring-8)で行われている、DNA及び関連分子に対するX線鳩 首微細構造測定や照射により生成するDNAラジカルやイオンなどの測定 により得られた最新の成果について報告する予定である。また損傷DNA に対する修復酵素タンパク質の反応を利用した、DNA損傷の新しい検出 方法についても解説する。
連絡先:中川和道(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: nakagawa@kobe-u.ac.jp

第104回 「自然環境論セミナー」

題目 ヘッジホッグとスピンスターの情報伝達系 -普遍性と多様性の理解に向けて-
講演者 中野 芳朗 先生(兵庫医科大学)
日時 2004年6月18日(金)15:00〜17:00
場所 神戸大学発達科学部 大会議室(A棟2階)
要旨 小さなショウジョウバエの変異体からスタートした研究が、私達の身体の成り立ちを 理解する上で貢献したばかりか、病気の原因解明や治療法の開発へと関わってくる可 能性が示されてきています。今回は、形態形成に関するヘッジホッグ情報伝達系で、 ヘッジホッグの受容に関する膜蛋白PatchedとSmoothened、分泌に関する膜蛋白 Dispatchedに関する私たちの仕事と共に、ショウジョウバエの配偶行動に関する変異 体として分離されたspinsterの解析を紹介します。そしてこれらがヒトの癌や神経変 性病を理解する役割をも担ってきている現状を紹介したいと思います。
連絡先:尼川
e-mail: amakawa@kobe-u.ac.jp

第103回 「自然環境論セミナー」

題目 Dynamic docking and inter-protein electron transfer
講演者 Prof. David N. Beratan (R.J. Reynolds Professor of Chemistry, Duke University)
日時 2004年6月14日(月)15:30〜17:00
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨 Horse myoglobin (Mb) provides a convenient workbench for probing the effects of electrostatics on binding and reactivity in the dynamic [Mb, cytochrome b5] electron-transfer (ET) complex. We have combined mutagenesis and heme neutralization to prepare a suite of six Mb surface-charge variants: the Mb(S92D) and Mb(V67R) mutants introduce additional charges on the front face; and incorporation of the heme di-ester into each of these neutralizes the charge on the heme propionates which further increases the positive charge on the front face. For this set of mutants, the nominal charge of Mb changes by -1 to +3 units relative to native Mb. For each member of this set, we have measured the bimolecular quenching rate constant (k2) for the photoinitiated ET reaction as a function of ionic strength. We find: i) a dramatic decoupling of binding and reactivity, in which the bimolecular rate varies 1,000-fold within the suite of Mbs without a significant change in binding affinity; ii) the ET reaction occurs within the thermodynamic or rapid exchange limit of the dynamic- docking model, as shown by the fact that the zero-ionic-strength bi- molecular rate constant varies exponentially with the net charge on Mb; iii) Brownian Dynamics docking profiles allow us to visualize the microscopic basis of dynamic docking; iv) a new theoretical approach which mathematically couples docking with reactivity (Functional Docking) successfully describes changes of bimolecular ET rates upon protein modification and the ionic strength variations.
連絡先:蛯名邦禎(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp

第102回 「自然環境論セミナー」

題目 コンピュータによる疾病や化学物質影響の分子モデリング
講演者 田中 成典 氏(神戸大学自然科学研究科)
日時 2004年5月25日(火)17:00〜18:00
場所 神戸大学発達科学部 大会議室(A棟2階)
要旨 このたび自然科学研究科に教授として着任された田中成典先生に、 セミナーの講師をお願いしました。先生が近年特に力を入れてお られる計算構造生物学のご研究から、いくつかを取り上げて、 学生諸君も理解できる解説をしていただく予定です。 これらの ご研究は、遺伝子損傷、バイオチップ設計、環境ホルモンの検索、 生活習慣病などの疾病メカニズム等にコンピューターを駆使して 分子論的な光を当てたもので、応用面も広範囲にわたり、現在、 大変注目されているものです。
連絡先:田中 成典(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: tanaka2@kobe-u.ac.jp

第100回 「自然環境論セミナー」

題目 兵庫教育大学における酸性雨の長期観測結果(1991-2003)を 通して見た日本の大気汚染の変遷と環境への影響
講演者 尾関 徹 氏(兵庫教育大学)
日時 2004年3月2日(火)16:00〜17:30
場所 神戸大学発達科学部 G302号室
要旨 ◆酸性雨とは何か
概論
大気汚染との関係
地域公害の時代から地球環境問題の時代へ

◆酸性雨は正しくはかられているか
酸性雨の化学分析に関連する問題

◆酸性雨のデータを読む
酸性雨のための統計解析法の開発

◆兵庫教育大学で行ってきた酸性雨調査の結果の紹介
兵庫県内の酸性雨
降水汚染物質の越境汚染に関する日本海側広域調査
酸性降水が河川水に与える影響
連絡先:寺門靖高(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: terakado@kobe-u.ac.jp

第99回 「自然環境論セミナー」

     
題目 分子生物学におけるvisualization ―立体視と動画の意義―
講演者 高沖 英二 氏(META Corporation Japan 代表取締役社長)
日時 2003年2月9日(月)15:00〜17:00
場所 発達科学部 大会議室(A220)
要旨 分子生物学の発展は,環境化学物質や食物中の成分の人体への影響,病気, 生物の成長と発達などを,遺伝子の発現,制御,複製などの観点から理解する 上で大きな寄与をしてきた.しかし,細胞内のミクロの世界の出来事を想像し 理解することは,訓練を積んだ研究者でなければ困難である.コンピュター・ グラフィクスを用いて,これらの細胞内過程を立体視や動画として提示するこ とは,一般の人々にとって,また学校教育の場面で,生命現象のしくみを学ぶ 上で大きな助けとなるだろう.
 今回は,医療・教育・芸術へのコンピュータ・グラフィクスの応用技術の開 発とそれに基づいた作品制作に携わる (株)メタ・コーポレーション・ジャパン の高沖英二氏に,分子生物学における可視化の意義について,実例を用いて紹 介していただく.同社は,
国立遺伝学研究所の「マルチメディア資料館」
国立がんセンターにおける情報提示
国立循環器病センターの「よくわかる循環器病」
などの制作実績を持ち,最近では,理化学研究所と共同で「可搬型汎用3D可視 化システム」の開発を行っている.今回の講演では,同システムのデモンスト レーションも行われる予定である.
連絡先:蛯名邦禎(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp 

第98回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Relativistic Formulation of the Isgur-Wise Function for Heavy Quark Effective Theory
講演者 松木 考幸 氏(東京家政大学)
日時 2003年11月15日13:30~14:30

第97回 「自然環境論セミナー」

     
題目 人口長期予測から見た世界エネルギー需要予測手法の精度
講演者 森 憲二 氏(元神戸製鋼研究員)
日時 2003年10月21日(火)13:00~15:00
場所 発達科学部 大会議室(A棟2階)
要旨 森先生は神戸製鋼で触媒,水質浄化等の指導的研究に携わってこられまし た。退職後は電卓と紙と鉛筆で世界の人口の長期予測とエネルギー資源と の関連において以下の研究をされてきました。
世界のエネルギー需要を予測しうる手法を提示
その手法を用いて2100年にいたる世界のエネルギー需要を予測し
その予測値と化石エネルギー資源の残存量とを比較することによって, あらたに開発されるべき再生可能のエネルギー資源量を予測し
さらに人口増加率と一人あたりのエネルギー消費量との関係を楕円曲線 で表すことによって予測手法の普遍性を高めてこられました。
面白い点は,人一人が一生涯に使えるエネルギーには上限があるという 動かしがたい事実からスタートし,世界の人口増加とエネルギー問題の 関係を予測し,エネルギー問題,世界経済,生き方を独自の視点で論じ ている点です。 また,森先生は画家でもあり作品集も出しておられます。また,随筆, 俳句等の文芸でも発信されています。いらなくなったジーンズの切れ端 で帽子や鞄も自作され日常で身に付けられます。理系,文系を問わず総 合人間的にサイエンスとアートを両手に世界に警笛を鳴らしながらも飄 々と人生を歩んでおられる姿は素敵です。そんな森先生のお話を文系, 理系にこだわらず自由に聞いて頂いて,ご自分の研究,創作活動,生き 方の参考になれば嬉しいです。
連絡先:尼川 大作(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: amakawa@kobe-u.ac.jp 

第96回 「自然環境論セミナー」

     
題目 環境問題への経済学的アプローチ ごみ問題を例に
講演者 竹内 憲司 氏(神戸大学大学院経済学研究科)
日時 2003年10月14日(火)17:20〜18:50
場所 発達科学部G302教室
要旨 「環境問題の解決には,私たちひとりひとりの心がけが大事です」という物言いがある。残念ながら,心がけや道徳心で解決するほど,環境問題は生やさしい問題ではない。こうした物言いは,利他心や倫理に従って行動する個人を暗黙のうちに期待しているが,現実の世界に住む人たちは,そんなに立派な人ばかりではない。楽をしたい。損はしたくない。そういう普通の人が大部分である。地球では,そういう普通の人たちが,会社で働いて生産活動を行ない,商品を買って消費活動を行ない,ゴミを捨て,二酸化炭素を排出し,日々を暮らしている。 そうした普通の人や普通の人々が働いている企業に,環境を汚染しないよう促すにはどうしたら良いだろうか。環境問題を扱う経済学である「環境経済学」は,インセンティブ(経済的動機付け)がその鍵を握っていると考える。環境を汚染しない方が得になるような仕組みを作れば,道徳心の向上に頼ることなく,人々や企業の行動を自然に変えることができるかもしれない。 環境経済学は,人々の利己心や企業の利潤動機を非難するのではなく,それをうまく活用して,個々の経済主体が持つ目的を社会全体の目的に合致させるような仕組みを考えるのである。本セミナーでは,環境経済学について, ごみ問題を例に取り上げて紹介する。
連絡先:蛯名邦禎(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp 

第95回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Single Spin Asymmetry in Inclusive Production at RHIC
講演者 須藤 和敬 氏(神戸大学自然科学研究科地球環境専攻/理化学研究所放射線研究室)
日時 2003年10月11日

第94回 「自然環境論セミナー」

     
題目 相模湾初島沖深海冷湧水シロウリガイ群集の維持機構とその長期変動
講演者 増澤 敏行氏(名古屋大学環境学研究科大気水圏科学系教授)
日時 2003年9月19日(金)16:00~17:00
場所 神戸大学発達科学部 G114号室
要旨 相模湾初島沖のシロウリガイ群集は、1984年以後世界各地で発見されはじめた冷湧水系深海高密度生物群集の代表例のひとつである。1986年から1996年にかけて、 年1回の「しんかい2000」による潜航調査を行い、相模湾初島沖の水深1146mのシロウ リカイ群集の同一パッチで間隙水を採集し、その化学組成と同位体組成から、その化 学合成系を維持する化学反応系を明らかにし、その長期変動を観測した。その結果に ついて紹介する。

第93回 「自然環境論セミナー」

   
題目 オゾン層回復の可能性について
講演者 中島 英彰 氏(独立行政法人国立環境研究所総合研究官)
日時 2003年8月27日

第92回 「自然環境論セミナー」

     
題目 反応拡散系におけるパターン形成
講演者 桑村 雅隆 氏(神戸大学発達科学部人間環境科学科数理・情報環境論講座)
日時 2003年4月24日(木)17:20〜18:50
場所 発達科学部G302
要旨 単純な1つの細胞(卵)から複雑な構造をもった生物体が自発的に形成され ていくのはなぜだろうか?
この難しい問いに対して、約50年ほど前にチューリングは1つの比喩的な解答を与えた。この仕事を出発点として、ニコリス・プリゴジン、ハーケン らによる散逸構造の研究を経て、生物の形態形成、化学反応、熱対流における様々なパターンが普遍的なしくみによって形成されることが明らかになっ た。このしくみは、数学的には、反応拡散方程式系とよばれる微分方程式で記述される。反応拡散系におけるパターン形成の研究のすべてをカバーすることはできないが、可能な範囲で、歴史、方法論、現在の課題などについて 解説する。
連絡先:蛯名邦禎(発達科学部自然環境論講座)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp 

第91回 「自然環境論セミナー」

   
題目 インドネシア・スマトラ島で行った気象観測とその背景
講演者 村田 文絵 氏(神戸大学自然科学研究科地球環境専攻)
日時 2003年3月13日

第90回 「自然環境論セミナー」

   
題目 kerma distribution of the ultrasoft X-rays(0.9-1.6keV) in spleen cells
講演者 Jin Tao 氏(中国Xinjiang 物理学研究所)
日時 2003年2月28日

第89回 「自然環境論セミナー」

   
題目 大阪湾の海底地盤構成とその特徴
講演者 三田村 宗樹 氏 (大阪市立大学)
日時 2003年2月7日

第88回 「自然環境論セミナー」

   
題目 ニューラルネットワークの基礎  -学習と記憶のモデル-
講演者 稲沢 弘志 氏 (神戸松蔭女子学院大学教授)
日時 2003年1月23日

第87回 「自然環境論セミナー」

      
題目 海洋学とプランクトンと気候
講演者1.はじめに       中川和道(神戸大学発達科学部)   
2.海洋という場に関する概説、および海洋における 炭素循環と一次生産     
             西條佐智子 (名古屋大学 環境学研究科)   
3.植物プランクトンによる熱放出量子効率測定の可能性    
             大田佳実(神戸大学発達科学部)   
4.研究の進め方     中川和道(神戸大学発達科学部)
日時 2002年12月2日

第86回 「自然環境論セミナー」

   
題目 目には見えないものを科学の目でみることで明かす自然の神秘ー2002年ノーベル賞(生理学医学/物理学/化学)受賞研究を解説するー
講演者 安達 卓 氏、青木 茂樹 氏、伊藤 真之 氏、江原 靖人 氏(神戸大学発達科学部)
日時 2002年11月19日

第85回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Bethe-Salpeter Approach with the Separable Interaciton for the Deuteron
講演者 V.V. Burov (Joint Institute for Nuclear Research, Dubna, Russia)
題目 Bethe-Salpeter Approach with the Separable Interaction for NN-system
講演者 S.G.Bondarenko (Joint Institute for Nuclear Research, Dubna, Russia)
日時 2002年10月21日

第84回 「自然環境論セミナー」

   
題目 人工衛星による地球環境のモニタリング
講演者 中島 英彰 氏(国立環境研究所)
日時 2002年9月5日

第83回 「自然環境論セミナー」

   
題目 白い海、凍る海ーオホーツク海の化学
講演者 中塚 武 氏(北海道大学低温科学研究所)
日時 2002年9月4日

第82回 「自然環境論セミナー」

   
題目 食の分子情報の流れから、環境と生体の相互作用を考える
講演者 福岡 伸一 氏(京都大学大学院・農学研究科・食品生物科学専攻)
日時 2002年5月24日

第81回 「自然環境論セミナー」

   
題目 脳高次機能障害と環境要因、アルツハイマー型痴呆を中心として
講演者 松本 明 氏(神戸大学大学院・医学系研究科)
日時 2002年5月23日

第80回 「自然環境論セミナー」

   
題目 高感度2次イオン質量分析SHRIMPによる 局所U/Pb年代分析とその応用例~岩石・生物化石から火星隕石・アポロ月試料まで~
講演者 寺田 健太郎 氏(広島大学大学院理学研究科)
日時 2002年3月22日

第79回 「自然環境論セミナー」

   
題目 THE PHYSICS OF BIOCONNECTIVITY IN THE GULF OF MEXICO
講演者 Professor A.D. Kirwan, Jr. (College of Marine studies, University of Delaware)
日時 2002年3月7日

第78回 「自然環境論セミナー」

   
題目 地質汚染の市場原理による完全浄化
講演者 楡井 久 氏(茨城大学)
日時 2002年2月20日

第77回 「自然環境論セミナー」

   
題目 放散虫から見た古生代と中生代の境界
講演者 八尾 昭 氏(大阪市立大学)
日時 2002年2月18日

第76回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Surface pion condensation in finite nuclei and connection to hadron physics
講演者 土岐 博 氏(大阪大学核物理研究センター)
日時 2002年1月26日

第75回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Hidden strangeness in nucleons, magnetic moments and SU(3)
講演者 Prof. Sergo B. Gerasimov (Joint Institute for Nuclear Research, Dubna Russia)
日時 2001年12月8日

第74回 「自然環境論セミナー」

題目 人工衛星による地球大気観測
講演者 中島 英彰 氏(国立環境研究所 地球環境グループ)
日時 2001年8月27日

第73回 「自然環境論セミナー」

題目 黒潮の変動--大蛇行と流量変動--
講演者 川辺 正樹 氏(東京大学海洋研究所)
日時 2001年7月24日

第72回 「自然環境論セミナー」

題目 沿岸での物質移動--地震と台風--
講演者 乗木 新一郎 氏(北海道大学大学院 地球環境科学研究科)
日時 2001年7月24日

第71回 「自然環境論セミナー」

題目 生体分子のVUV・SX光物性(吸収、円二色性など)と化学反応
講演者 A.横谷 明徳:SPring-8における生体分子照射効果研究の簡単な紹介
B.赤松 憲:軟X線の直接的なエネルギー付与によるDNA分子の キャラクタリゼーション
C.藤井 健太郎:DNA構成塩基の内殻吸収端近傍X線吸収微細構造
D.安居院 あかね:BL23SUにおける周期的位相駆動によるCD測定の現状
E.横谷 明徳:放射線によるDNA塩基の修飾とその酵素的修復
F.中川 和道:中川グループの研究の概観(生命の起源研究と アミノ酸の光物性)
G.田中 真人:14種のアミノ酸と4種のペプチドのNとOの 内殻NEXAFSのデータとDV-Xα計算
H.児玉 洋子:円偏光に誘起されたアミノ酸固体のCD (円二色性、線二色性、線複屈折解析)
日時 2001年7月12日

第70回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Bayesian Analysis of Hadronic Spectral Functions in Lattice QCD
講演者 初田 哲男 氏(東京大学理学部)
日時 2001年5月9日

第69回 「自然環境論セミナー」

   
題目 沼島の変成岩類から読みとる沈み込み帯内部 の地学現象
講演者 前川寛和 氏(大阪府立大学教授)
日時 2001年2月21日

第68回 「自然環境論セミナー」

   
題目 土壌中の物質移動
講演者 中野 政詩 氏(神戸大学農学部食料生産環境工学科教授)
日時 2001年2月6日

第67回 「自然環境論セミナー」

   
題目 ポリアセチレンの物性と数理
講演者 中原 幹夫 氏(近畿大学理工学部数学物理学科教授)
日時 2000年12月15日

第66回 「自然環境論セミナー」

   
題目 New Extra Gauge Boson(s) and Unifying Couplings
講演者 Prof. Guennadi A. Kozlov (Joint Institute for Nuclear Research, Dubna, Russia)
日時 2000年11月18日

第65回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Effective Dual Higgs Mechanism with Confining Forces Nature
講演者 Prof. Guennadi A. Kozlov (Joint Institute for Nuclear Research, Dubna, Russia)
日時 2000年11月16日

第64回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Selected problems of vector meson photoproduction at SPring-8 energy region
講演者 Prof. Alexander I. Titov (Joint Institute for Nuclear Research, Dubna, Russia)
日時 2000年10月12日

第63回 「自然環境論セミナー」

   
題目 ストレス応答性タンパク質リン酸化酵素JNKによる細胞死と形態形成の制御
講演者 山田(安達) 卓 氏(名古屋大学理学研究科生命理学専攻助手)
日時 2000年10月2日

第62回 「自然環境論セミナー」

   
題目 分子細胞学的手法による遺伝子多型および染色体変異の解析
講演者 近江戸 伸子 氏(農林水産省北陸農業試験場主任研究官)
日時 2000年9月1日

第61回 「自然環境論セミナー」

   
題目 担子菌キノコの遺伝子工学
講演者 本田 与一 氏(京都大学木質科学研究所助手)
日時 2000年9月1日

第60回 「自然環境論セミナー」

   
題目 ミトコンドリアDNAから見たオサムシの多様性
講演者 蘇 智慧 氏(JT生命誌研究館研究員)
日時 2000年8月23日

第59回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Recent progress of the studies on the GDH sum rule from the theoretical and experimental aspects
講演者 岩田 高広 氏(名古屋大学 理学部 物理教室)
日時 2000年8月18日

第58回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Nucleon spin structures in the resonance region with quark models
講演者 Prof. Dong Yu-bing (Institute of High Energy Physics, China)
日時 2000年8月12日

第57回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Transition Matrix Elements and Heavy Hadron Decays in Complete HQET
講演者 Prof. Yue-Liang Wu (Institute of Theoretical Physics, Beijing, P.R.China)
日時 2000年8月8日

第56回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Introduction to BFKL Pomeron
講演者 Prof. Alekseevich E. Kuraev (Joint Institute for Nuclear Research, Dubna, Russia)
日時 2000年7月30日

第55回 「自然環境論セミナー」

   
題目 ゆらぎのエネルギー論
講演者 関本 謙 氏(京都大学基礎物理学研究所教授)
日時 2000年7月18日

第54回 「自然環境論セミナー」

   
題目 大気中二酸化炭素吸収に果たす北太平洋の役割
講演者 角皆 静男 氏(北海道大学大学院 地球環境科学研究科教授)
日時 2000年7月12日

第53回 「自然環境論セミナー」

   
題目 細胞性粘菌に見る多体問題としての生物
講演者 長野 正道 氏(NEC基礎研究所)
日時 2000年3月27日

第52回 「自然環境論セミナー」

   
題目 核子の構造関数とカイラル・クォーク・ソリトン模型
講演者 若松 正志 氏(大阪大学 助教授)
日時 2000年2月23日

第51回 「自然環境論セミナー」

   
題目 水溶液中での放射線化学反応:生体物質の損傷と関連して
講演者 小林 克己 氏(高エネルギー研 放射光 生物部門)
日時 1999年12月27日

第50回 「自然環境論セミナー」

   
題目 聴覚も視覚に影響を及ぼす:感覚間統合とその発達
講演者 下條 信輔 氏(カリフォルニア工科大学 教授)
日時 1999年12月3日

第49回 「自然環境論セミナー」

   
題目 化学反応はなぜ起るのか? ~化学反応における「部分と全体」~
講演者 小松崎 民樹 氏(理学部地球惑星科学科)
日時 1999年11月1日

第48回 「自然環境論セミナー」

   
題目 A description of the electroproduction amplitudes of the low-lying resonances in a quark model
講演者 Prof. Dong Yu-bing (Institute of High Energy Physics, Academia Sinica, China)
日時 1999年11月1日

第47回 「自然環境論セミナー」

   
題目 SU(3) Symmetry and Polarized Fragmentation Functions
講演者 Prof. M.Burkardt (New Mexico State University, USA)
日時 1999年4月8日

第46回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Phi-photoproduction at SPring-8 energies
講演者 Prof. A. I. Titov (Joint Institute for Nuclear Research, Dubna, Russia)
日時 1999年3月15日

第45回 「自然環境論セミナー」

   
題目 超対称性を破る新しいメカニズム
講演者 橘 基 氏(自然科学研究科)
日時 1999年3月4日

第44回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Future physics with polarised protons at HERA
講演者 Prof. A. De Roeck (Deutsches Electronen-Synchrotron DESY, Hamburg, Germany)
日時 1999年2月8日

第43回 「自然環境論セミナー」

   
題目 領家帯花崗岩類のSr同位体年代とSr同位対比初生値
講演者 柚原 雅樹 氏(新潟大学積雪地域災害研究センター)
日時 1999年2月5日

第42回 「自然環境論セミナー」

   
題目 超大陸の形成と分裂 ーゴンドワナ大陸ー
講演者 吉田 勝 氏(大阪市大、理学部教授)
日時 1999年2月3日

第41回 「自然環境論セミナー」

   
題目 高圧変成帯のテクトニクス ー現行沈み込み帯からのアプローチー
講演者 前川 寛和 氏(大阪府大、総合科学部教授)
日時 1999年1月20日

第40回 「自然環境論セミナー」

   
題目 市街地におけるニホンミツバチの生活
講演者 菅原 道夫 氏(大阪府磯島高等学校)
日時 1998年12月15日

第39回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Damaging effect on K-shell photoionization process in I nP
講演者 Jin tao 教授 (Xinjiang Institute of Physics, China)
日時 1998年11月5日

第38回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Recent Development in Strong Interactions
講演者 Dr. N. I. Kochelev (The joint Institute for Nuclear Research, Dubna, Russia)
日時 1998年10月26日

第37回 「自然環境論セミナー」

   
題目 アカデミズムの過去・現在・未来 ~次の千年紀を展望して~
講演者 鈴木 利章 氏(神戸大学文学部教授)
日時 1998年8月28日

第36回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Baculoviruses as a vector of expression of foreign gene in insect
講演者 Prof. Shakhnoza AZIMOVA (Head of Laboratory of Molecular Genetics, Institute of Genetics, Uzbek Academy of Sciences)
日時 1998年5月11日

第35回 「自然環境論セミナー」

   
題目 大陸の進化
講演者 加々美 寛雄 氏(新潟大学大学院自然科学研究科教授)
日時 1998年2月20日

第34回 「自然環境論セミナー」

   
題目 The axial anomaly low-energy theorems and the QCD vacuum models
講演者 Prof. M. Musakhanov (Tashkent University)
日時 1998年1月19日

第33回 「自然環境論セミナー」

   
題目 環境因子による生体内シグナル伝達の撹乱とその影響 ー発ガンのメカニズムを中心としてー
講演者 榎本 平 氏(神戸大学医学部放射線基礎医学)
日時 1998年1月7日

第32回 「自然環境論セミナー」

   
題目 蛍光X線法による岩石中の微量分析 ー実際の蛍光X線を用いた検量線の引き方の実際ー
講演者 山本 鋼志 助教授(名古屋大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)
日時 1997年12月16日

第31回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Genetic Algorithms and Evolutionary Programs
講演者 Dr. Sudip Sanyal (Banaras Hindu University)
日時 1997年11月13日

第30回 「自然環境論セミナー」

   
題目 台風と海洋
講演者 木村 龍治 氏(東京大学海洋研究所 教授)
日時 1997年9月10日

第29回 「自然環境論セミナー」

   
題目 宇宙放射線が生物に及ぼす影響
講演者 池永 満生 氏(京都大学放射線生物研究センター 教授)
日時 1997年9月9日

第28回 「自然環境論セミナー」

   
題目 発生遺伝学からみた性の分析とその意義
講演者 石井 裕 氏(大阪大学医学部放射線基礎医学教室 助教授)
日時 1997年7月2日

第27回 「自然環境論セミナー」

題目 What we can learn from High Energy Spin Physics
講演者 G. P. Ramsey (Loyola University Chicago, USA)
題目 Vacuum Structures of Light-cone Quantized Field Theories in 1+1 Dimensions
講演者 M. Tachibana (Kobe University, Japan)
題目 Relavant Dynamics and Degree of Freedom for Nuclei
講演者 S. N. Mukherjee (Banaras Hindu University, India)
日時 1997年3月18日

第26回 「自然環境論セミナー」

   
題目 モンテカルロ(MC)シミュレーションによる臨界現象研究 ー境界条件の変調とシミュレーション技法の改良ー
講演者 1. カイラリティー相転移 : 川村 光 氏 (京都工繊大工芸学部)
2. 空間変調モンテカルロシミュレーション : 蛯名 邦禎 氏 (神戸大学発達科学部)
3. 有限サイズスケーリングに対する境界条件の効果 : 菊池 誠 氏 (大阪大学理学部)
日時 1997年2月24日

第25回 「自然環境論セミナー」

   
題目 領家帯ジュラ紀塩基性岩類と下部地核源 苦鉄質グラニュライトの地球化学的、 Sr・Nd同位体的類似性
講演者 加々美 寛雄 氏(岡山大学個体地球研究センター)
日時 1997年2月21日

第24回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Hidden strangeness in non-strange matter
講演者 Prof. A. I. Titov (JINR, Dubna, Russia)
日時 1997年2月17日

第23回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Introduction to Instantons - from α to Z -
講演者 Prof. N. I. Kochelev (JINR, Dubna, Russia)
日時 1996年9月24日
題目 Spin Physics and Instantons
講演者 Prof. N. I. Kochelev (JINR, Dubna, Russia)
日時 1996年10月11日

第22回 「自然環境論セミナー」

   
題目 脂質修飾酵素を用いる有機溶媒中での触媒作用
講演者 岡畑 恵雄 氏(東京工業大学 教授 生命理工学部生体分子工学科)
日時 1996年7月19日

第21回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Recent development of small x physics
講演者 小平 治郎 氏(広島大学理学部 助教授)
日時 1996年7月8日

第20回 「自然環境論セミナー」

   
題目 EXAFSと超臨界流体
講演者 村田 隆紀 氏(京都教育大 物理)
日時 1996年6月20日

第19回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Spin Structure of the Nucleon
講演者 Prof. V. W. Hughes (Department of Physics, Yale University, USA)
日時 1996年3月26日

第18回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Education and Research in India
講演者 Prof. S. N. Mukherjee (Department of Physics, Banaras Hindu University, India)
日時 1996年3月5日

第17回 「自然環境論セミナー」

   
題目 lonization potential of deped molecules in fluids, from gas to liquid
講演者 Ruben Reininger
題目 Effect of cluster formation on ionization processes in liquid and supercritical fluids
講演者 Kazumichi Nakagawa(神戸大学発達科学部教授)
日時 1995年9月4日

第16回 「自然環境論セミナー」

   
題目 JINR(Dubna) and International Collaboration(30') ロシアにおける研究と教育 ーJINR(Dubna)を中心としてー
題目 Hadron Form Factors in Relativistic Harmonic Oscillator Model(60') 相対論的調和振動子模型におけるハドロンの形状因子
講演者 Prof. V. Burov (Joint Institute for Nuclear Research, Dubna, Russia)
日時 1995年5月22日

第15回 「自然環境論セミナー」

   
題目 宇宙環境における宇宙放射線とその線量計測
講演者 林 孝義 氏(早稲田大学理工学部総合研究センター)
日時 1995年5月15日

第14回 「自然環境論セミナー」

   
題目 X線でみる宇宙
講演者 伊藤 真之 氏(宇宙科学研究所)
日時 1995年5月10日

第13回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Non-trivial Tests of Electroweak Quantum Effects
講演者 日置 善郎 氏(徳島大学総合科学部助教授)
日時 1994年12月9日

第12回 「自然環境論セミナー」

   
題目 シンクロトロン放射による放射線生物学の研究:KEK-PFでの経験とSpring-8での展望
講演者 横谷 明徳 氏(日本原子力研究所 大型放射光)
題目 生命の起源研究とシンクロトロン放射
講演者 中川 和道 氏(自然環境論講座 自然環境基礎)
日時 1994年9月13日

第11回 「自然環境論セミナー」

   
題目 The status of higher-order corrections in the standard electroweak theory
講演者 Prof. Bernd Kniehl (Hamburg University)
日時 1994年9月1日

第10回 「自然環境論セミナー」

   
題目 我々をとりまく汚染問題 ー分光学処方による微量元素の測定と関連してー
講演者 Radka S. Kavlakova 教授(ブルガリア医学生物学研究所生物物理教室)
日時 1994年7月12日

第9回 「自然環境論セミナー」

   
題目 "第3世代"の素粒子物理学
講演者 青木 茂樹 氏(神戸大学発達科学部助教授)
日時 1994年5月11日

第8回 「自然環境論セミナー」

   
題目 総合型学科の理想と現実 ー東京大学基礎科学科のカリキュラム事例研究ー
講演者 中川 和道 氏(神戸大学発達科学部教授)
日時 1993年10月15日

第7回 「自然環境論セミナー」

   
題目 有機化学における溶媒効果と酵素反応
講演者 上地 真一 氏(神戸大学発達科学部教授)
日時 1993年9月2日

第6回 「自然環境論セミナー」

   
題目 Survey on QGP and future experimental development in CERN
講演者 Prof. G. M. Zinovjev(ウクライナ科学アカデミー・キエフ理論物理学研究所,ウクライナ共和国)
日時 1993年8月4日

第5回 「自然環境論セミナー」

   
題目 液体・気体の電子状態に関するセミナー
講演者 中川 和道 氏(神戸大学発達科学部教授)
日時 1993年4月26日

第4回 「自然環境論セミナー」

   
題目 金属ーチアクラウン錯体の分析化学的研究
講演者 齊藤 惠逸 氏(神戸大学発達科学部助教授)
題目 物質の結晶構造はどのようにして決まるか ー個体物理学からみた水素とヘリウムの違いー
講演者 蛯名 邦禎 氏(神戸大学発達科学部助教授)
日時 1993年1月23日

第3回 「自然環境論セミナー」

   
題目 量子色力学と重いクォークの対称性
講演者 Prof. Matthias Burkardt(マサチューセッツ工科大学「MIT」助教授、 フェオドール・リネン研究員「フンボルト財団」)
日時 1992年11月5日

第2回 「自然環境論セミナー」

   
題目 宇宙における粒子加速と宇宙線の起源
講演者 Thomas K. Gaisser 教授(デラウェア大学バートル研究所,U.S.A)
日時 1992年10月27日

第1回 「自然環境論セミナー」

   
題目 NN annihilation in chiral quark theory
講演者 Prof. Y. Musakhanov(ウズベク共和国 タシケント大学教授)
日時 1992年4月22日



第17回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 海をはかる、海ではかる -- 海のリズムと気候変動 --
講演者 紀本 岳志 氏 (紀本電子工業(株)社長、(財)海洋化学研究所大阪分室研究員)
日時 2001年6月27日

第16回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 グリーンケミストリーをめざす物質工学
講演者 北尾 修 氏 (物質工学工業技術研究所 COE特別研究室 東京大学大学院工学研究科)
日時 2000年5月31日

第15回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 環境影響評価(環境アセスメント)について 〈環境負荷低減を目指して〉
講演者 佐藤 文彦 氏 ((株)島津テクノリサーチ 環境調査部)
日時 2000年2月2日

第14回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 クウェートにおける油汚染土のバイオレメディエーション
講演者 辻 博和 氏 ((株)大林組 技術研究所 環境生物研究室)
日時 1999年10月27日

第13回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 大地の病巣 " 地質汚染 "
講演者 鈴木 喜計 氏 (千葉県君津市役所 環境部環境保全課)
日時 1999年5月12日

第12回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 超臨界水によるダイオキシン類の分解技術
講演者 佐古 猛 氏 (通産省工業技術院 物質工学工業技術研究所)
日時 1998年12月9日

第11回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 オゾン層は回復するか?-オゾン層の観測とモデル化―
講演者 中根 英昭 氏 (国立環境研究所 大気環境部)
日時 1998年7月1日

第10回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 スーパーごみ発電-新ダイオキシン低減技術の動向-
講演者 西 口 信 幸 氏 ( (株)クボタ技術開発研究所 都市環境―PT)
日時 1998年5月27日

第9回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 ダイオキシン-その発生源と低減技術-
講演者 藤田 一紀 氏 (バブッコク日立(株)呉研究所)
日時 1998年1月14日

第8回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 環境分野への水処理技術の適用
講演者 関川 泰弘 氏 (栗田工業(株))
日時 1997年10月29日

第7回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 環境計量士について -環境分析の現場から-
講演者 藤井 正雄 氏 ((株)田岡化学分析センター)
日時 1996年7月3日

第6回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 生分解性脂肪族ポリエステル「ビオノーレ」の開発と将来展望
講演者 藤巻 隆 氏 (昭和高分子(株)ビオノーレプロジェクト部)
日時 1996年1月31日

第5回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 電子線照射による排煙の脱硫・脱硝の化学過程 及びその実用化の現状
講演者 南波 秀樹 氏 (日本原子力研究所 高崎研究所)
日時 1995年12月6日

第4回 「自然環境先端セミナー」

題目 地球環境への膜分離技術による対応
講演者 植村 忠廣 氏 (東レ(株)地球環境研究室)
日時 1995年10月9日

第3回 「自然環境先端セミナー」

   
題目 タンパク質の特異性を決めている親和力-CH/π相互作用-
講演者 西尾 元宏 氏 (明治製菓(株)薬品開発本部)
日時 1995年5月31日

第2回 「自然環境先端セミナー」

題目 月面基地の建築構法-宇宙環境の利用をめざして-
講演者 松本 信二 氏 (清水建設(株)技術本部)
日時 1994年11月2日

第1回 「自然環境先端セミナー」

題目 農薬の安全性評価
講演者 土井 侃 氏 (住友化学工業(株)生物環境科学研究所)
日時 1994年7月4日