第195回自然環境論セミナー 
河川と海流を介した内陸と外洋の生態系の結びつき−中層水鉄仮説
中塚 武 氏
(北海道大学低温科学研究所)

日時:2008年9月11日(木)15:10−16:10

場所:発達科学部 G112号室  (G棟1階)

環境に対する意識の高まりの中で、「魚付林」と言う概念が、 一般的に用いられるようになってきています。渓流や湖沼に住む魚の成育には、 隣接する森の存在が重要であると言うのが、魚付林の本来の考え方ですが、近年、 「森林から流出する鉄などの栄養物質が沿岸域の生物生産を高めるのに役立っている」 と言うように、魚付林の概念が拡張され、そうした考え方に基づく、森・里・海 の連携研究が日本中で進められています。本セミナーでは、その魚付林のスケールを 一気に拡大して、「日本の水産業にとって最も重要な“親潮域”の生物生産が、 アムール川流域の広大な湿地から流出する大量の溶存鉄によって支えられている」、 と言う最新のプロジェクト(アムールオホーツクプロジェクト)の研究成果について、 ご紹介します。アムール川から流出した鉄は、海氷生産によって駆動される オホーツク海の中層循環に取り込まれ、北太平洋の広域に運び出されています。 その水文学的、海洋学的メカニズムを、詳しくご説明すると共に、 地球温暖化などの環境変化に晒されている、この内陸と外洋の生態系の結びつきの 「過去・現在・未来」について、展望したいと思います。

※ 過去の自然環境論セミナーの記録は こちら, その他の案内は こちら をご覧ください.