基礎物性物理学に基づいた環境保全技術開発の取り組み
日時:2006年7月5日(水)15時10分−17時10分
−誘電加熱による廃プラスティックの脱塩素化−
丑田 公規 氏^A ・岡本 吉史 氏^B
(A: 理化学研究所・環境ソフトマテリアル研究ユニット
B: 理化学研究所・情報基盤センター)
場所:発達科学部 B104 (B棟1階)
講演1:
誘電加熱を用いた混合廃プラの脱塩素処理:実験的アプローチについて
(丑田 公規)
廃プラスティックは、製鉄所の高炉で石炭の代用物としてリサイクルされて いるが、高炉設備を損傷しないために、あらかじめ脱塩素処理を行わなければ ならない。従来は輻射加熱や摩擦加熱による処理方法が用いられてきたが、含 有する塩素の量によって除去効率が一定せず、処理制御が難しい上に、長時間 の加熱は有害物質をさらに増大させる可能性がある。全体の4分の3を占める 主要プラスティックの中ではポリ塩化ビニル(PVC)のみが塩素を含むが、他の プラスティックに比べて誘電加熱効率(誘電損失係数)が高く、マイクロ波に より選択的に加熱することが出来ると考えた。この方法によると無分別のプラ スティックを短時間で処理することができる可能性がある。本研究では、マイ クロ波を使った誘電加熱による脱塩素実験、およびプラスティックの基礎物性 測定実験について詳細を述べ、この処理方法の高度化に向けた戦略を、基礎物 性物理学の原理的考察から検討し、さらに高効率な処理方法を設計する基礎と したい。
講演2:塩化ビニル樹脂が含有されている廃プラスチックを脱塩素処理する場合,従 来の輻射加熱法では,塩化ビニル樹脂以外のプラスチックも加熱されるため, ダイオキシン等の有害な化学物質の発生が危惧されている。塩化ビニル樹脂の 電磁波による誘電加熱効率を示す数値(誘電損失係数)が,他のプラスチック よりも高いことを利用すれば,塩化ビニル樹脂のみの加熱が可能となり,廃プ ラスチックの分別コストの低減,安全性の向上,低エネルギー化の各観点から, 実用化の利得が極めて高い。このような電磁波を用いた廃プラスチックの高効 率リサイクル誘電加熱炉設計のためには,被加熱体(廃プラスチック)の最適 形状,共振器の寸法,ならびに,ターンテーブルやステラファン等を用いた一 様加熱化装置の詳細な検討が必要となる。本研究では,上記のような高効率リ サイクル誘電加熱炉を実現するため,実機設計に対して十分耐えうる電磁波・ 熱伝導連成解析(シミュレーション)手法を提案する。提案手法は,離散化形 状の自由度が高い三次元有限要素法を根幹とし,温度に対して非線形に変化す る被加熱体の複素誘電率の考慮が可能で,なおかつ,ターンテーブルやステラ ファンのような,共振器内の特定領域の回転運動を厳密に考慮することができ る実用的な連成解析手法である。本セミナーでは,提案した電磁波・熱伝導連 成解析手法の詳細を工学的な視点から論じることで,提案手法の新規性,有用 性について説明する。
※ 多数の学生・教官・一般の皆様のご来聴をお待ちしております.
□連絡先:蛯名邦禎 (発達科学部 自然環境論講座)
e-mail: ebina@kobe-u.ac.jp
voice: 078-803-7754