第142回自然環境論セミナー 

地球第四紀気候変動における海底メタンハイドレートとクラスレート・ガン仮説

中島 英彰 氏 
(国立環境研究所 オゾン層研究プロジェクト 衛星観測研究チーム)

日時:2006年1月5日(木)15時10分−16時40分
場所:発達科学部 G302  (G棟3階)

氷期・間氷期サイクルに代表される第四紀の気候変動の実態とその メカニズムの解明は、20世紀を通じて地球科学の最大の課題の一つ であった。氷期・間氷期サイクルのメカニズムとして最も有力な仮 説は、地球軌道要素の変動による日射量の変化に起因するとするミ ランコビッチ仮説であり、これは海底や氷床掘削コアの分析から得 られる気候変動時系列のスペクトル分析に10万年、4万年、2万年な どの、いわゆる軌道要素が有意に検出されることなどから強く支持 され、ほぼ定説化した感もある。しかしながら、ミランコビッチ仮 説ではいまだ気候変動のいくつかの主要な特性が説明できていな い。さらに、近年グリーンランドや南極の氷床コアの高精度・高分 解能分析が行われるようになると、軌道周期とは全く異なる1000年 スケールの大振幅の変動が、氷期・間氷期サイクルに重畳している ことが明かとなってきた。この視点から、最近に至って、海底のメ タンハイドレートからの間欠的なメタンの放出が引き金となって、 第四紀の複雑な気候変動が引き起こされたとする、「クラスレー ト・ガン仮説」が提唱されている。セミナーでは、その内容につい て解説する予定である。

※このセミナーは、発達科学部授業科目「自然環境科学特論」の授業の 一部を公開のセミナーとして実施するものです。
※ 多数の学生・教官・一般の皆様のご来聴をお待ちしております.
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□ 世話人:伊藤真之
        発達科学部 自然環境論講座
        e-mail: mitoh@kobe-u.ac.jp
        voice: 078-803-7758