第116回自然環境論セミナー

無脊椎動物由来の神経ペプチド
-配列と機能の保存性と多様性-

佐竹 炎 氏 
((財)サントリー生物有機科学研究所)

日時:2005年1月26日(水) 15時20分から16時50分
場所:神戸大学発達科学部 G302 (G棟3階)

概要

 神経ペプチドは内因性のシグナル伝達物質として、外的刺激情報の伝達や生理現象 および行動の制御に大変重要な役割を果たしています。行動様式や体構造が単純な無 脊椎動物は、個々の神経ペプチドの生物学的役割を明らかにし、医学・薬学・環境科 学的、および分子進化研究において有力なツールになることが期待されます。一方、 これまで研究対象とされてきた無脊椎動物から同定されたペプチドは多種多様であ り、高等動物のホルモンペプチドや神経ペプチドとは異なった構造を有することか ら、神経系・内分泌系ネットワークのモデル生物として不適当である可能性も示唆さ れました。そこで、現在当グループでは、脊椎動物の祖先的性質を有すると考えられ る原索動物の代表的な種であるホヤに着目し、神経ペプチドが深く関与する摂食行動 や生殖行動の研究する上で、ホヤを新たな優れたモデル生物として確立できるのでは ないかと予測しました。しかしながら、これまでにホヤの神経ペプチドは2種類が同 定されているに留まっています。これらの背景から、当グループは現在、従来の無脊 椎動物由来のペプチドの構造と機能を解明することに加え、ホヤの神経ペプチドとそ の受容体を全て同定し、個々のペプチドの生理活性とそれらの機能レベルでの関連性 を明らかにすることにより、脊椎動物における基本的な生命活動に不可欠な神経ネッ トワークの基盤を構築することを構想しました。本セミナーでは、当グループが研究 対象としてきた脳下垂体後葉ホルモンペプチドであるオキシトシン/バソプレッシン 超族ペプチドや、代表的な神経ペプチドであるタキキニンおよびタキキニン関連ペプ チドといった無脊椎動物由来の神経ペプチドとそれらの受容体を中心に、ホヤを題材 とした神経ペプチドの体系的な機能解明に向けた取り組みと、そこから得られる知見 の応用性を紹介したいと考えています。

世話人: 田中 成典 (tanaka2@kobe-u.ac.jp)

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