第115回自然環境論セミナー

被子植物(花)と送粉者の共生
  (身近な生物間の共生から環境を考える)

丑丸 敦史 氏 
(総合地球環境学研究所)

日時:2005年1月22日(土) 13時00分から14時00分
場所:神戸大学発達科学部 大会議室 (A棟2階A220)

概要

 私たちの生活の周りには庭木の花、花瓶に生けられた花、公園で咲く花、パティー 会場で飾られた花、贈り物の花と実に様々な花を見ることができる。この当 たり前の 状況は地球の歴史の中ではそれほど古くから見られるものではない。  被子植物(花を咲かせる植物)は白亜紀前半から地球上に誕生し、その後爆発的に 多様化した。現在では陸上植物のうち約九割の優占度をもつこの分類群 は、生産者と して陸上生態系を支えている。ヒトも被子植物に大きく依存して生活をおこなってい る動物であるといえる。この被子植物の多様化・繁栄のきっ かけを送粉者(花粉媒介 者)や種子散布者との共生関係の確立とする仮説が提唱されている。

 この発表では被子植物の多様化のきっかけとなった送粉者との共生関係について花 の生態学的な視点での研究と群集生態学的な視点での研究とに分け、それ ぞれ紹介 する。
 花の生態学的な研究としては花を構成する器官(雌蕊、雄蕊、花弁、がく片)の大 きさ(サイズ)の変異が送粉者への適応として進化していることを示した 研究、花の 咲く方向(方位、角度)が送粉者の行動を制御することを明らかにした研究について 説明する。
 植物―送粉者群集の研究では、国の天然記念物に指定されている京都市深泥池での 保全に関する生態研究、阿武隈山地の里山で行ったマルハナバチ類の人工 景観利用に ついての研究について発表する。ここから人間活動がいかに植物―送粉者群集に影響 を与えるのか、また人間活動化で両者の存続を可能にするため にはどのような思考が 必要か議論する。

 以上の研究紹介から、身近な花という存在の研究からどのように環境をみていくの かについて考えたい。

世話人: 寺門 靖高 (terakado@kobe-u.ac.jp)

※多数の学生・教員ほかの皆様のご来聴をお待ちしております.
  ※なお,過去の自然環境論セミナーの記録は, こちらをご覧ください.